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皿洗いはするから片付けてきな、と楠木さんに言われたので、開封作業を進める。
収納できるものから片付けていると、先週購入した冷蔵庫や洗濯機などの家電や、ダイニングテーブルや本棚などの家具が次々に届く。
設置作業が終わったところで、加賀地さんの家に置かせてもらっていた荷物が届いた。が。
「あ、あれ?これだけ、ですか?」
「?はい。ご依頼頂いてるのは、このソファーとカフェテーブルと、本類と書かれているこのダンボールのみです」
「えっ・・・・え、本当に?」
「どうした?」
「あの、荷物が少なくて」
そうなのだ。他にも服や鞄を入れた箱や、推しのグッズを仕舞っている箱があるはずなのに、届いていない。
え、間違って捨てたかなぁ!?食器とか家電も古かったからじゃかじゃか捨てちゃったんだけど、一緒に捨てちゃった!?
どうしよう、とおろおろしていると、ぴんぽーん、とチャイムの軽快な音が鳴る。
やはり届け忘れか?と楠木さんも一緒にインターホンのモニターを確認すると。
『こんにちはー!』
『ちはー』
「え、佳代さん!?」
「加賀地さん?」
『荷物お届けに参りましたー』
『来ちゃった☆』
オートロックの鍵を解除し、暫く待つと加賀地さんと佳代さん、台車を押しながら新田さんが来た。
台車上のダンボールの数からして、届いていなかった分だろう。良かった、捨ててなかった。何か上に乗ってるショッパーが気になるけど。
新田さんにダンボールをベッドルームに運んでもらうようお願いすると、佳代さんからむぎゅむぎゅと抱きつかれた。
「すまん、佳代がどうしても行きたいって聞かなくてな・・・」
「だって、最近ゆずちゃん会ってくれないんだもん!」
「ご、ごめんなさい」
「で、康平さん、このお兄さんはどこの誰よ」
「あぁ、彼は今の海野の上司の楠木だよ。楠木、こっちは俺の嫁さん」
「楠木です。はじめまして、加賀地さんにはお世話になってます」
「妻の佳代です・・・・ふぅん」
「佳代さん佳代さん、苦しいです」
「あら、ごめんなさい」
回されていた腕をタップし、外してもらう。
荷物を移動してくれた新田さんを見送り、ソファーに掛けてもらってお茶を淹れる。
「佳代さん紅茶ですよね?加賀地さんと楠木さんはコーヒーと紅茶どっちがいいですか?」
「俺も紅茶で」
「俺もー」
キッチンに入りお湯を沸かしていると楠木さんが手伝いにきてくれたので、戸棚に仕舞ったお菓子と木製の器、ティーポットと背の高めのグラスを出してもらう。
今日は暑かったから、アイスティーにしよう。お湯が沸いたらティーポットをお湯を入れて温め、お湯を捨てた後に茶葉を入れて蒸す間、オレンジをスライスする。
紅茶を一度茶漉で漉しながらテーブルポットに移す。グラスにクラッシュしていた氷を大きめのを一つずつ入れ、作り置きのはちみつレモンの汁のみを注ぐ。暑いときはクエン酸とらなきゃ。夏バテ予防じゃい。
くるくる、楠木さんとふたりで氷が半溶けくらいになるまでマドラーで混ぜる。混ぜたら氷をグラスいっぱいに入れて、スライスしたオレンジを乗せる。
乗せたオレンジに向かって勢いよく紅茶を注いで、一部を残してリングカットしたオレンジを2つずつ重ねてグラスに引っ掛けて飾り付け、ベンガルタイガーの出来上がり。
お盆にのせて運ぼうとすると、楠木さんに取られた。重いものは持たせられないって、そんなに重くないんだけど。キザだなぁ。
「お待たせしましたー」
「あら、おしゃれ!かわいいわね」
「紅茶の名前はベンガルタイガーっていって、どっちかというと格好いいんですけどね」
「すまんな、片付け中だったんだろ?」
「いえいえ、休憩無しで動いていたから丁度良かったです。ね、楠木さん」
「そうだな、俺はともかく、海野ずっと動きっぱなしだったしな」
テレビ前のローテーブルにお盆を置いてもらい、配膳する。
ストローをさしてくるりと混ぜて。ひと口飲んで爽やかな柑橘の香りにひと息つく。良かった、美味しい。
「だいぶ片付いたんじゃねぇの?早いな」
「朝から動きっぱなしでしたし、配送の段取りも完璧でしたから!楠木さんのおかげです」
「それほどでも。荷物も少なかったしな」
「そうだ、手伝いといや、仲川に頼むとか言ってなかったか?」
「それがですねー、仲川用事があったみたいで」
「それに、何で楠木がいんの?さらっと流してたけど。そんなに仲良かったか?」
「楠木さん、先週の物件探しから家具家電に加えて雑貨の買出しまで手伝ってくれたんですよー!今日も朝の引っ越しから車も出してくださいまして。ほんと助かっちゃいました」
「暇だったからな。それに君、うっかりな所もあるし、秦のことまだ未解決って自覚ないし」
「う」
「? 何かあったのか?」
「実はー・・・・」
先週金曜日、渋谷駅で秦を見かけたことを話す。
そうだった。まだ、何でいたのか、偶然だったのか解決していない。
どうやら佳代さんも加賀地さんから話は聞いていたようで、厳しい顔をしている。
「それは、何か嫌な感じがするな」
「そうねぇ、その秦とやら、何かしてきそうね。職場が離れてても、あまり安心出来ないわね」
「えぇ、そうなんです。だけど、本人が楽観的過ぎて」
「? 何ですか」
「お前がアホだなって話よ」
此方を生温い目で見る三人が同時にため息を吐く。
何だ何だ、酷くないか。アホじゃないやい。
収納できるものから片付けていると、先週購入した冷蔵庫や洗濯機などの家電や、ダイニングテーブルや本棚などの家具が次々に届く。
設置作業が終わったところで、加賀地さんの家に置かせてもらっていた荷物が届いた。が。
「あ、あれ?これだけ、ですか?」
「?はい。ご依頼頂いてるのは、このソファーとカフェテーブルと、本類と書かれているこのダンボールのみです」
「えっ・・・・え、本当に?」
「どうした?」
「あの、荷物が少なくて」
そうなのだ。他にも服や鞄を入れた箱や、推しのグッズを仕舞っている箱があるはずなのに、届いていない。
え、間違って捨てたかなぁ!?食器とか家電も古かったからじゃかじゃか捨てちゃったんだけど、一緒に捨てちゃった!?
どうしよう、とおろおろしていると、ぴんぽーん、とチャイムの軽快な音が鳴る。
やはり届け忘れか?と楠木さんも一緒にインターホンのモニターを確認すると。
『こんにちはー!』
『ちはー』
「え、佳代さん!?」
「加賀地さん?」
『荷物お届けに参りましたー』
『来ちゃった☆』
オートロックの鍵を解除し、暫く待つと加賀地さんと佳代さん、台車を押しながら新田さんが来た。
台車上のダンボールの数からして、届いていなかった分だろう。良かった、捨ててなかった。何か上に乗ってるショッパーが気になるけど。
新田さんにダンボールをベッドルームに運んでもらうようお願いすると、佳代さんからむぎゅむぎゅと抱きつかれた。
「すまん、佳代がどうしても行きたいって聞かなくてな・・・」
「だって、最近ゆずちゃん会ってくれないんだもん!」
「ご、ごめんなさい」
「で、康平さん、このお兄さんはどこの誰よ」
「あぁ、彼は今の海野の上司の楠木だよ。楠木、こっちは俺の嫁さん」
「楠木です。はじめまして、加賀地さんにはお世話になってます」
「妻の佳代です・・・・ふぅん」
「佳代さん佳代さん、苦しいです」
「あら、ごめんなさい」
回されていた腕をタップし、外してもらう。
荷物を移動してくれた新田さんを見送り、ソファーに掛けてもらってお茶を淹れる。
「佳代さん紅茶ですよね?加賀地さんと楠木さんはコーヒーと紅茶どっちがいいですか?」
「俺も紅茶で」
「俺もー」
キッチンに入りお湯を沸かしていると楠木さんが手伝いにきてくれたので、戸棚に仕舞ったお菓子と木製の器、ティーポットと背の高めのグラスを出してもらう。
今日は暑かったから、アイスティーにしよう。お湯が沸いたらティーポットをお湯を入れて温め、お湯を捨てた後に茶葉を入れて蒸す間、オレンジをスライスする。
紅茶を一度茶漉で漉しながらテーブルポットに移す。グラスにクラッシュしていた氷を大きめのを一つずつ入れ、作り置きのはちみつレモンの汁のみを注ぐ。暑いときはクエン酸とらなきゃ。夏バテ予防じゃい。
くるくる、楠木さんとふたりで氷が半溶けくらいになるまでマドラーで混ぜる。混ぜたら氷をグラスいっぱいに入れて、スライスしたオレンジを乗せる。
乗せたオレンジに向かって勢いよく紅茶を注いで、一部を残してリングカットしたオレンジを2つずつ重ねてグラスに引っ掛けて飾り付け、ベンガルタイガーの出来上がり。
お盆にのせて運ぼうとすると、楠木さんに取られた。重いものは持たせられないって、そんなに重くないんだけど。キザだなぁ。
「お待たせしましたー」
「あら、おしゃれ!かわいいわね」
「紅茶の名前はベンガルタイガーっていって、どっちかというと格好いいんですけどね」
「すまんな、片付け中だったんだろ?」
「いえいえ、休憩無しで動いていたから丁度良かったです。ね、楠木さん」
「そうだな、俺はともかく、海野ずっと動きっぱなしだったしな」
テレビ前のローテーブルにお盆を置いてもらい、配膳する。
ストローをさしてくるりと混ぜて。ひと口飲んで爽やかな柑橘の香りにひと息つく。良かった、美味しい。
「だいぶ片付いたんじゃねぇの?早いな」
「朝から動きっぱなしでしたし、配送の段取りも完璧でしたから!楠木さんのおかげです」
「それほどでも。荷物も少なかったしな」
「そうだ、手伝いといや、仲川に頼むとか言ってなかったか?」
「それがですねー、仲川用事があったみたいで」
「それに、何で楠木がいんの?さらっと流してたけど。そんなに仲良かったか?」
「楠木さん、先週の物件探しから家具家電に加えて雑貨の買出しまで手伝ってくれたんですよー!今日も朝の引っ越しから車も出してくださいまして。ほんと助かっちゃいました」
「暇だったからな。それに君、うっかりな所もあるし、秦のことまだ未解決って自覚ないし」
「う」
「? 何かあったのか?」
「実はー・・・・」
先週金曜日、渋谷駅で秦を見かけたことを話す。
そうだった。まだ、何でいたのか、偶然だったのか解決していない。
どうやら佳代さんも加賀地さんから話は聞いていたようで、厳しい顔をしている。
「それは、何か嫌な感じがするな」
「そうねぇ、その秦とやら、何かしてきそうね。職場が離れてても、あまり安心出来ないわね」
「えぇ、そうなんです。だけど、本人が楽観的過ぎて」
「? 何ですか」
「お前がアホだなって話よ」
此方を生温い目で見る三人が同時にため息を吐く。
何だ何だ、酷くないか。アホじゃないやい。
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