マイ・リーフ

ねことくラゲヨ

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予定外の夜

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マイ・リーフ。

そう書かれたノートは、机の引き出しの奥にしまってある。
中身は大したことない。
今日食べたものとか、眠かったとか、
どうでもいいことばかりだ。

少なくとも、このときの僕(恒一)は、そう思っていた。







「なあ、今日さ」

コンビニの中で、拓真が言った。
アイスケースを開けたまま、振り返って話す。

「家出したくね?」

あまりにも軽い言い方で、
一瞬、冗談だと思った。

「……は?」

「一晩だけでいいから。
ちゃんと帰るやつ」

ちゃんと、の意味がよくわからない。

「なんか家であったのか?」
僕は聞く

「ん?いや特にー?」
適当に返す拓馬

「ふーん、」

拓真は昔からこうだ。
バカみたいなことを言うくせに、
どこまで本気なのか、いつも判断がつかない。

「意味わかんないだろ」
「わかんないね」

自分で言って、拓真は笑った。

隣で聞いていた陽斗が、
「面白そうじゃん」
とスマホを触りながら言った。

こいつらは本当に、
ブレーキというものを知らない。

「じゃあ、俺んちでいい?」
陽斗が言った。

「いや、そういうのは親にちゃんと話してから、、」

「ん」
陽斗がスマホを突き出す。

母さん「全然OK」

「まじ?じゃあ陽斗の家決定ー!」

、、、


僕はもう断れない空気になっているのを感じていた。

「時間決めよーぜ」
拓真が言う。

「夜八時で。
それまでに準備して、俺とコウ、駅前集合なー」



決まるのは、いつも一瞬だ。



家に帰って、カバンに最低限のものを詰める。
着替え、充電器、財布。
それだけで、少しだけ胸がざわついた。

悪いことをしている、というより、
予定から外れている感じ。

時計を見るたび、
頭のどこかで「やめたほうがいい」と思う。

しかし、その考えはすぐ流れていく。

結局、時間通りに家を出た。



そして、陽斗の家に着いた。

陽斗の親は歓迎してくれた。
「おー!コウ君!久しぶり!」

「お久しぶりです。」
少し照れくさそうに答えた。

「そっちの子は、、、初めまして?」

「はい!陽斗とコウの友達やらせてもらってまーす拓真でーす!」

肩を組みながら言った。

「そうなのね!ハルをよろしくねー!」

「コウ君も!」

ーーーーー


挨拶が終わり、僕たちは陽斗の部屋に移動した。

「これ、借りていい?」
拓真はクローゼットを漁り、陽斗に言った。

「ん、パジャマ持ってきてないの?」

「すまんすまん、」

「全然いいぞー」

「あと、風呂とかも、」

「風呂入ってこなかったのかよ」
俺は言った。

「まぁー全然いいぞー」
適当に返した。

「マジ!?いただきます!」

そしてすぐ風呂へ行った。

拓真と陽斗は、
もともと同じ学校じゃない。

二人が知り合ったのは、
たまたま僕を挟んで遊ぶようになったからだ。

最初は気まずそうだったのに、
今では、僕がいなくても普通に話している。

少しだけ、置いていかれた気分になる。

「コウさー」
陽斗が言った。
「好きな子とかできた?」

「、、、」

「え、え?な、なんだよ急に、」
僕の頭にある人が浮かぶ。

、、、目が泳ぐ。

「ふーん、いるんだ?」

「、、まぁ、まぁ?気になるてきな、」

「ふーん、気になる程度、ねー、」

「な、なんだよ」

「ん?いや、高校入ってから、あんまコウとこういう話してなかったからなって、」

陽斗は、ベッドに寝転がりながら天井を見ている。

「まあでも」
「コウはコウの道歩いてんだもんな、」
小さくため息を吐くように言った。

それがどういう意味なのか。その時はまだわからなかった。




風呂から拓真が上がり、騒がしくなると思っていた。

しかし、部屋は少し、いつもの雰囲気とは違っていた。

「今日、ちょっと楽しかったな」
僕がぼそっと一言言った。


「ちょっとかよ」
陽斗は笑いながら突っ込んだ。

「まぁでも、久しぶりかもなー」
陽斗は体を伸ばし満面笑みでそう言った。

「なんだそりゃ、、、あ、」
拓真が思い出したかのよう言った。

拓真はかばんからなにかノートを一冊取り出しなにかを書き出した。

俺と陽斗はそんなノートを覗き込む。

今日は、急だった。
でも、少しだけ息がしやすかった。

そのノートは新しく、まだ新品のような見た目だった。

そして、中心が黄色く、周りが紫色の名前のわからない花の押し花があった。

「それ、なに?」陽斗は聞く。

「ん?あー、これ?」

僕たちに見せる。

「簡単に言えば日記みたいな物かな」

ノートの真ん中には拓真、という名前ではなく、


「マイ・リーフ」




とかかれていた。


その頃はまだ、このノートの意味を知らなかった。


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