踊るキミを見ていたい

朝賀 悠月

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雄代くんのアカウント?

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「はい、舞音さんお茶」
「ん、ありがとー。はいお饅頭」
「あざす」

 二人で温泉まんじゅうを食べて、お茶を飲んで、ホッと一息。心がすごく癒される。
 おじいちゃんの新作を分け合って、粒あんかこしあんか、なんて言い合う。こうしていると、まるで弟ができた気分。そうだ。雄代くんと翔哉くんみたいな。


 ――僕、雄代くんが好きなの。邪魔しないでよ!


 あぁ、そうだ違う。また、思い出してしまった。
 翔哉くんは、兄弟みたいだと言われる度に、切ない思いをしてきたんだろうな。
 恋に気付いてしまった今だから、その気持ちがわかる。
 そんなことを言ったら「マオトに僕の気持ちなんてわかるわけない!」とか、また怒られそうだけど。
 もう一度、翔哉くんとちゃんと、話がしたいな。

「公民館とか体育館も考えたんすけど、結構遠いじゃないっすか」
「ん? あぁ、そうだねぇ」

 陸翔くんと動画をどこで撮るかの話をしているのに、勝手に一人で脱線してしまった。
 ふいに意識を呼び戻されて、返事をする。お饅頭をかじってペットボトルのお茶を飲んだら、陸翔くんもお茶を一口。ふと足元に目をやると、二人してお湯に浸かっている部分が赤く染まってきている。

「どっちも車じゃないと行けないし、体育館に至っては山の中だし」
「俺も夜に高校生連れ回すのはちょっとなぁ」
「だからやっぱ、こういうとこがいいと思うんすよね。観光地なら逆にお客さんだらけだし、嫌な顔はされないんじゃないかと」

 やっぱり、結局はそうなっちゃうよね。だけど一人じゃない。陸翔くんが一緒にいて手伝ってくれるなら、まだ平気かもしれない。

「あ、そうだ。俺こないだ同じように外で撮ってる日本人のダンス動画見たんすよね。誰だったかな……」

 スマホを取り出してアプリを開く陸翔くん。熱くなったらしく、お湯から足を引き出して座面にかかとを乗せる。スイスイ、トントン。指を無言で動かしているのを見守っていると、彼は突然「え?」と言って固まった。

「ちょっ舞音さん、これ見て! コメント欄!」

 興奮した様子でスマホの画面を見せてきた。そこに表示されているのは、俺のアカウントの動画。コメント欄を見てみると『ユーマが大好き!』『またユーダイくんとのダンスが見たい』『マオト元気出して!』『うちらがいるよ!』と優しいコメントがたくさん書き込まれている。
 そして陸翔くんの指がゆっくり上へスクロールしていくと、ある一点からみんなの口振りが緊迫したものに変わった。

『マオト! ユーダイくんがアカウント作ってる!』
『ユーダイくんがソロ投稿始めたよ!』
『アプリ見て、マオト! ユーダイくん、ソロだといつもの数億倍カッコイイ!』
『頼む、マオトに届いてくれ!』

 そんなコメントと共に、リンクが貼ってある。陸翔くんがそれをタップすると『ユーダイ』と書かれたアカウントが表示された。

「雄代くんだ……」

 キャップを目深にかぶって、白いマスクをしている。完全に顔は隠れているけれど、この体の動きは、紛れもなく雄代くんだ。

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