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16.魔具『ペッタンくん』(2)
しおりを挟む「えっ?」
見ると、地面に尻餅をついたゴーシュ様にしがみ付くような形で抱き付いていた。
『同じ体勢』と言われて、以前アメリの風魔法が暴走したときに、ゴーシュ様を押し倒して馬乗りにしたことを思い出す。でもそのときよりも今の方が密着度合いが半端ない。
「もっ、申し訳ございません……!」
早く離れようと慌てて体を動かしてみたけれど、それ以上に強い力が作用してぴくりとも動かない。
しかも……
「む、胸が……」
私が思わず溢してしまった言葉に、ゴーシュ様は顔を赤くした。
ゴーシュ様の厚い胸板に当たって、むにゅっと胸が潰される。存在感のある豊かな膨らみを自分から押し付けているようにも見えた。
「いやあああっ!」
「バ、バカ! この状態で、……んっ……そんな、動くなっ……!」
必死に離れようとしたけれど、動けば動くほどお互いの体が擦れ合うだけで、一向に状況が改善しない。
むしろ悪化している⁉
「……アメリ! これは一体、どういうことなの?」
エドワード殿下の隣にいるアメリに向かって声を張り上げる。
「はいっ! この『ペッタンくん』は、シートを貼った二人を強制的にくっつける機能をもっています!」
「その目的は?」
「仲が悪い人たちでも、いつも一緒にいればきっと仲良くなれます! ゆくゆくは世界平和に繋がって……」
「早く解除しなさい!」
「はい!」と元気な声を出したアメリは、「でもこれ、解除したときにちょーっと光が出過ぎちゃうんですよね……」と不穏な言葉を漏らした。
「それ、どういう……」
アメリが再びスイッチを押すと、『ペッタンくん』の目がカッと開かれた。
魔具から眩い光が放たれ、周囲一帯を覆う。
「きゃっ!」
「うわっ!」
強い光が目に飛び込んできて、慌てて目を強くつぶる。体が動くと同時にゴーシュ様にぶつかって、地面に手を付いたのが分かった。
ゆっくり目を開けてみるものの、視界が真っ白に染まって何も見えない。
「――クランベル嬢」
頭上から私を呼ぶ声がする。
上に向けてそろそろと手を伸ばすと、何かにぶつかった。ぶつかったものの正体を求めて、手さぐりで触れていく。
……ん? 何かしら、この硬いものは?
「ちょっ、クランベル嬢⁉」
触ったらますます硬くなったような気がするわ。それに、なんだか筒状の形状で……
「~~ッ! やめろ! ジェシカッ!」
目が慣れていき、ぼやっとその輪郭を掴めるようになった。
これは、制服?
男性が下に着る、まさかスラックス……?
じゃあ……もしかして、私が掴んでいたものは……
恐る恐る顔を上げると、わなわなと唇を震わせながら顔を真っ赤に染めたゴーシュ様の姿があった。
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