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78.クロードの今(4)
しおりを挟む愛に疎い様子をジェシカが見せる度、俺の中で優越感と罪悪感が入り混じる。
罪悪感一つでいいのに、ここに優越感が含まれているのが酷いところだ。自分の独占欲の強さをまざまざと感じて、苦笑いしてしまう。
申し訳ないと思う気持ちは確かにある。だから自分の感情を隠す必要がなくなった今、これまでしてこなかった分も含めて、言葉を尽くして気持ちを伝えようと思っていた。
「ジェシカ」
固まってしまった彼女を抱き寄せて、大切な人に言葉を贈る。
「愛してる」
言いながら艶やかな髪に触れる。頭の後ろ側を優しく撫でた。
「気持ち良くなってくれたんですよね。快感に素直な貴方はとても可愛らしかったですよ」
されるがままになっているジェシカの髪に口付けながら、ゆっくりとベッドに押し倒す。
白いシーツの上に広がる栗色の髪。人形めいた美貌と、精巧で煌びやかな黒い下着が相まって、まるで標本の蝶のようだった。
思わず見惚れていると、ジェシカが何事か呟いたようだった。
「ずるいわ……そうやって言われたら、もう何も言い返せなくなるもの」
そう言って、こちらに向けて腕を伸ばしてきたため、体を寄せてそのまま首に回させる。
顔と顔が近付いて、鼻先が触れ合うほどの距離でジェシカは言った。
「……私だって、クロードが好き」
たどたどしい口調で思いを伝えてくれる。
公爵令嬢として周囲に見せている完璧な姿ではない。
二人きりになると、よそ行きの顔を捨てて、本来の彼女を見せてくれるのが好きだった。
「あのね……」
こちらの思いが伝わったのか、ジェシカは柔らかな表情を見せたあと、そっと声を掛けてきた。
わずかに躊躇う様子を見せ、そして意を決したように赤い顔のまま言葉を発した。
「この勝負下着、クロードのことを考えて作ったの。クロードが思わず手を出してしまうくらい、魅力的なものにしようって。……これはあのときの物ではないけれど、手を出してくれる?」
……額に手を当てて大きく溜息をつきたくなるのを、必死に耐える。
愛する人からそんなことを言われて、手を出さないやつがいるだろうか。
「……ええ。もちろん」
キスでの前科がある俺は、思うがまま愛してしまいたい欲望を抑えて、お行儀よく頷いた。
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