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81.愛を捧げる(1)
しおりを挟む体を清めて魔法でシーツを取り替えて……と、行為を終えベッドに入る頃には、彼女の体力は多少回復したらしい。隣で横になっているジェシカは、ぼんやりとしていた意識を少しずつ取り戻していた。
薄手の布団で体を隠しているジェシカは、今、何も身に着けていない。
「い、嫌よ。裸でいるなんて!」と、素肌を晒したままでいることを嫌がっていた彼女に、着られる服がないのだから仕方ないと説明したのは俺だ。
でも、もちろんそんなわけがない。ただ、抱き締めたときに触れた肌が心地良くて、裸でいさせたかっただけ。
もしこの部屋に夜着がなかったとしても、変身魔法だってあるし、それ以外にもいくらでも方法はある。
二日目だからと加減をしたつもりでいたが、それに気付かないくらい疲れているのだろうか。
辛そうであれば治癒魔法をかけるつもりでジェシカの様子を窺うと、ぼうっとしていた彼女が俺の視線に気付いて、柔らかく目を細めた。
(――いや、違うか)
ジェシカがあんな嘘に気付かないはずがない。それでも指摘してこないのは、それを許してくれたからだろう。
服がない、なんて稚拙な言い訳をして、裸のままで抱き合いたいと訴える自分を、ジェシカが受け入れてくれたのだとようやく気付く。
考えてみれば、あの勝負下着だっていくらでも着替えられたはずだ。それをせず、羞恥に苛まれながらもその場に居続けたのは、ジェシカの優しさにすぎなかった。
(ああ。やっぱり好きだな)
素直にそう思う。子供の頃に交わした結婚の約束や、幸せにするという誓いはもちろんあるけれど、彼女のことが好きだから十年以上もの長い間、一緒にいたのだろう。
感慨に浸っていると、不意に、ジェシカが体を横向きにして俺の方を向いた。
ベッドに入るとき、体を引き寄せて抱き締めたため、ジェシカの頭は俺の胸のあたりにある。
体に布団をかけているとはいえ、随分と無防備だ。こちらから見ると、ベッドと布団の隙間から胸の谷間が見えていることには気付いていないのだろう。
……まあ、こちらも敢えて指摘はしないけれど。
「どうしました?」
素知らぬ顔で尋ねると、ジェシカは深刻そうな、それでいて真剣な顔で「あのね、今気付いたのだけれど……」と前置きして話し始めた。
ジェシカがそんな顔をするときは、大抵大した話ではない。
「婚約を公表出来なかった理由は聞いたけど、わたくしたち、その……お互い好き合っていたわけでしょう? それならクロードだって、少しは好意を示してくれても良かったんじゃないの⁉」
「ああ……そのことですか」
大した話……ではあるものの、説明が難しい。
どうしたものかと考えていると、ジェシカが感情を爆発させた。
「もし好きだって言ってくれていたら、こんなに悩むこともなかったのに!」
「悩んでいたのですか?」
――知っていた癖に、何を白々しい。
そう自嘲してしまうほどには、ジェシカからの好意は明らかだった。
元々慕われている自信はあったけれど、それが恋慕であると確信をもったのは五年程前からだ。
ジェシカからの視線や声や仕草に、特別なものを感じるようになった。
彼女が俺に対して恋をしていると分かる、甘やかな雰囲気を感じるようになった。
それが、ここ二年の間で、甘さの中に諦観が滲み始めた。叶わぬ恋だと苦しそうに目を伏せるジェシカを見て、何度自分も同じ気持ちだと告げそうになったか分からない。
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