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6.貧乳は婚約破棄の要件に含まれますか?!
しおりを挟む「………は?」
ぽかんと口を開けたアスラン様に構わず、言いたいことは全部言ってしまうことにしました。
「私、あの、その、胸が大きくないというかむしろ小さいんですけれども!巨乳好きのアスラン様には耐えられないレベルかどうかをハッキリさせてしまいたくて今日はお時間をいただきました!!」
一気に言い切ることができて達成感で気分が高揚しています。
少し赤くなった頬のままアスラン様を見ると、アスラン様は頭痛を耐えるような顔をしていらっしゃいました。
「あーー…っと、色々と突っ込みたいことはあるが……」
眉を寄せて難しい顔をした彼は、私に言いました。
「そもそも、何故俺が巨乳好きになっているんだ?」
「実は…私、ゴーシュ様とアスラン様が教室で話をされているときに、たまたま側を通りましたの。」
あの時のことは今でも忘れられません。
悪夢として時々夢に出てくるほどです。
放課後の教室で、お二人は窓から外を見ておりました。
『ジェシカ様は今日もアメリ嬢と一緒にいるんだな。』
『あー…一緒にいるというか、あれは追いかけられてるな…。そう言えば、ゴーシュ、お前ジェシカ様に婚約の申し出をしたんだろう?どうだったんだ?』
アスラン様の問いかけに、ゴーシュ様は乱暴に頭を掻くと溜息を付きました。
『駄目だった。正式に断られたよ。』
『そうか…。』
アスラン様はゴーシュ様の肩を叩くと、明るい声で言いました。
『なら次を探せばいい。ホラ!お前に好意的だった伯爵家のあのご令嬢、あの子もジェシカ様に負けず劣らずの良い体だっただろ?』
『お前な…。……でも、そうだな。そうやって前を向いていかないとな。』
『落ち込んだお前はらしくないだろ。』
『…ありがとう。…あー、確かにあの子は可愛かったなー!でも巨乳でボインが好きなのはお前だろ?ほら、お前の天使ちゃんだって……』
『お前…わざと言ってるだろ?』
………ううっ、思い返すだけで辛くなります。
私が説明すると、アスラン様は気まずい顔をされました。
「や、やっぱり…」
その表情は、やはり巨乳好きだということですね…?!
私が青ざめるとアスラン様は慌てて首を振りました。
「ちっ、違う!!ゴーシュはわざとああいう言い方をしたんだ!俺が、胸とか体とか関係なしに、好きになったから…」
「えっ?」
普段見ることのできない、動揺して顔を赤くしたアスラン様。
「リリア…俺は、あの…できれば、引かないでほしいんだが…」
そう言って一度ハアッと息をついたアスラン様は、真剣な顔で言いました。
「実は、子供の時…リリアと初めて会った時に、俺はリリアに一目惚れしたんだ。」
「え……」
「リリアはとても可愛くて、天使みたいに見えて…」
「てっ、天使ですか?!」
大袈裟だと思いつつも嬉しいと思う気持ちを止められません。
「だから、ゴーシュが言ったのは、子供の頃からずっとリリアのことが好きな俺をからかっただけで…別に巨乳好きとかそういうのではないんだ。」
私の目を見つめたアスラン様は顔が真っ赤で、男の人なのにとても可愛く感じました。
「……わかってもらえたか?」
―――ああ、多分私の顔も真っ赤になっているのでしょう。
「わっ、わかりました…!」
私の問いに誠実に返してくれたアスラン様に少しでも気持ちが伝わるように、私もアスラン様の目をじっと見つめました。
「私も、アスラン様のことが好きです。」
「そ、それと…勘違いして、ごめんなさい!」
大きく頭を下げると、頭の上にアスラン様の手が乗せられました。
優しく頭を撫でられて、顔を上げると穏やかな顔のアスラン様がいらっしゃいました。
「気にしなくていい。俺は、リリアからの告白が聞けてとても嬉しい。」
「アスラン様…」
「でも、リリアがまさか胸の大きさを気にしているとは思ってもいなかったよ。それなら婚約者である俺がなんとかしてあげないと、な?」
「アスラン様…?」
「胸を大きくする方法なんていつの時代もこれしかないだろ。」
「わ、私、確かに大きさは気にしていましたけど、それはアスラン様が耐えられるレベルかどうかであって…」
「大丈夫。リリアは安心して俺に任せておけばいい。」
促されて来賓室から出て、向かった先は…この部屋は何でしょうか?
「俺の部屋で、しっかり施してあげるから。」
―――アスラン様の部屋には興味がありますが、なんだか身の危険を感じるのは気のせいでしょうか…?
私、知りませんでした!
世の中の女性は胸を大きくするためにあんなことをしているんですね…!
アスラン様に教えていただいてから、胸の大きい方を見るとあのときの事を思い出して顔が赤くなってしまいます。
そんなことを思っていたら学校の校舎までの道でジェシカ様にお会いしました。
「あら、リリア様。ごきげんよう。」
「ごきげんよう。朝からジェシカ様にお会いできて嬉しいです。」
「わたくしもよ。一緒に教室まで参りましょう。」
「はい。」
隣を歩くジェシカ様を横目で見ながら、はしたないと思いつつどうしても胸に視線がいってしまいます。
こんなに大きくなるまで、ジェシカ様はどれくらいあんなことをしたのかしら…?
ジェシカ様には確か婚約者はいらっしゃらなかったはずだけど一体誰にしてもらったんでしょう。
まさか、いつも一緒にいるジェシカ様の執事かしら?!
きゃあきゃあと脳内で騒ぎながら、私はアスラン様に愛されている幸せを噛みしめたのでした。
END
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