5 / 6
5.貧乳は婚約破棄の要件に含まれますか?!
しおりを挟む私……決めました。
アスラン様に、打ち明けようと思います。
ひ、ひ、ひ、貧乳であると告げるのは死ぬほど恥ずかしいことですが、それ以上に結婚してからアスラン様を失望させてしまう方が辛いと思ったのです。
夫婦仲が冷え込んでしまって、もしアスラン様が他所で女性を作ったりしたら私は悲しくて苦しくて耐えられそうにありません。
この告白によって『リリアの胸ならどんなものでも構わない。』と安心できるのか、『こんなもの胸と言えるか!』と婚約そのものが危うくなってしまうのかわかりませんが、
でも私たちの将来のために必要な過程だと信じています。
侯爵家に先触れを出しアスラン様の許可を得た私は、侯爵家に参りました。
来賓室に通されアスラン様を待つ間もずっと気が気ではありません。
ノックの音に慌てて顔を上げると、いつもの精悍な顔のアスラン様がいらっしゃいました。
「リリア。突然どうしたんだ?」
「きゅっ、急に伺ってしまってすみません!」
立ち上がった私を制して、アスラン様がテーブルを挟んだ前のソファーに腰を下ろしました。
「いや、別に咎めているんじゃない。ただリリアから会いたいなんて珍しいと思ってな。」
「あ…の、実は私、アスラン様に話しておきたいことがあって…」
そう言いながらアスラン様を窺うと、煩わしそうな様子はなく少しホッとしました。
「もしかしたら…こんなことを言うと、アスラン様に失望されてしまうかもしれません。」
「失望?俺が、リリアに?」
驚いたように目を見開いて、次の瞬間ハハッと明るく笑いだしました。
「おかしなことを言う。どれだけ一緒にいると思ってるんだ?リリアのことなら大抵のことはわかるし、仮に俺の知らないリリアのことでも失望なんかするはずないだろ?」
アスラン様の軽い態度に、真剣な話をしようとしていた私は少しムッとしてしまいます。
「そんなこと、言い切れないじゃないですかっ」
「言い切れる。」
そう言うとアスラン様は不敵な笑みを浮かべました。
「リリアのことは俺が一番よく分かってる。」
男らしいその表情にキュッと胸が締め付けられて、誤魔化すように慌てて首を振りました。
顔が熱くて真っ赤になっていそうです。
「でっ、でもっ、私の秘密を知ったら、アスラン様は考えを改めてしまうんじゃないかと思って…」
「俺がどうするっていうんだ?」
「例えば、その…婚約破棄とか……」
起こってほしくないことなのに何故自分から言い出しているんだろう…?
そう思いつつも、やり取りの流れで自分が一番恐れていることを告げると、穏やかなアスラン様の顔が見る見るうちに変わっていきました。
「婚約破棄?」
地を這うような、低い声。
「俺が、リリアに婚約破棄を求めるような、そんな秘密を抱えていると?」
険しい眼差しで咎めるように見つめられて、そんな状況ではないのに私は先日の夢を思い出しました。
夢の中で、私ではない他の女性を愛おしそうに見つめるアスラン様の姿。
そして私に向ける蔑みの目。
威圧的な雰囲気が夢のアスラン様と重なって見えて、胸の痛みが強くなり、気付くと涙が溢れておりました。
「リリア?!」
私の涙にギョッとしたアスラン様は、慌てて立ち上がって私の座る席まで回るとしゃがみこみました。
「す、すまない怖がらせてしまって!ただ、リリアから婚約破棄なんて言葉が出てビックリしただけなんだ。」
「うっ…ううっ、アスランさま…!」
「いい子だから落ち着いてほしい。リリアに泣かれるとどうすればいいかわからなくなる。」
アスラン様の筋張った指が私の頬に触れ、次から次へと流れ落ちる涙を拭います。
涙で滲む視界の中、先ほど見せた高圧的な雰囲気から一転、困った顔をしたアスラン様がいらして私の気持ちは少し落ち着きました。
「アスラン様…」
「ん?」
「あの…私…アスラン様に聞きたいことがありまして…」
「ああ、なんでも聞いてくれて構わない。」
頭を撫でられながら優しい雰囲気のアスラン様に促されて、私は覚悟を決めて大きく息を吸い込みました。
「ひ、貧乳は婚約破棄の要件に含まれますか?!」
4
あなたにおすすめの小説
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
【完結】ヒロインに転生しましたが、モブのイケオジが好きなので、悪役令嬢の婚約破棄を回避させたつもりが、やっぱり婚約破棄されている。
樹結理(きゆり)
恋愛
「アイリーン、貴女との婚約は破棄させてもらう」
大勢が集まるパーティの場で、この国の第一王子セルディ殿下がそう宣言した。
はぁぁあ!? なんでどうしてそうなった!!
私の必死の努力を返してー!!
乙女ゲーム『ラベルシアの乙女』の世界に転生してしまった日本人のアラサー女子。
気付けば物語が始まる学園への入学式の日。
私ってヒロインなの!?攻略対象のイケメンたちに囲まれる日々。でも!私が好きなのは攻略対象たちじゃないのよー!!
私が好きなのは攻略対象でもなんでもない、物語にたった二回しか出てこないイケオジ!
所謂モブと言っても過言ではないほど、関わることが少ないイケオジ。
でもでも!せっかくこの世界に転生出来たのなら何度も見たイケメンたちよりも、レアなイケオジを!!
攻略対象たちや悪役令嬢と友好的な関係を築きつつ、悪役令嬢の婚約破棄を回避しつつ、イケオジを狙う十六歳、侯爵令嬢!
必死に悪役令嬢の婚約破棄イベントを回避してきたつもりが、なんでどうしてそうなった!!
やっぱり婚約破棄されてるじゃないのー!!
必死に努力したのは無駄足だったのか!?ヒロインは一体誰と結ばれるのか……。
※この物語は作者の世界観から成り立っております。正式な貴族社会をお望みの方はご遠慮ください。
※この作品は小説家になろう、カクヨムで完結済み。
逆ハーレムエンド? 現実を見て下さいませ
朝霞 花純@電子書籍発売中
恋愛
エリザベート・ラガルド公爵令嬢は溜息を吐く。
理由はとある男爵令嬢による逆ハーレム。
逆ハーレムのメンバーは彼女の婚約者のアレックス王太子殿下とその側近一同だ。
エリザベートは男爵令嬢に注意する為に逆ハーレムの元へ向かう。
嫁ぎ先は悪役令嬢推しの転生者一家でした〜攻略対象者のはずの夫がヒロインそっちのけで溺愛してくるのですが、私が悪役令嬢って本当ですか?〜
As-me.com
恋愛
事業の失敗により借金で没落寸前のルーゼルク侯爵家。その侯爵家の一人娘であるエトランゼは侯爵家を救うお金の為に格下のセノーデン伯爵家に嫁入りすることになってしまった。
金で買われた花嫁。政略結婚は貴族の常とはいえ、侯爵令嬢が伯爵家に買われた事実はすぐに社交界にも知れ渡ってしまう。
「きっと、辛い生活が待っているわ」
これまでルーゼルク侯爵家は周りの下位貴族にかなりの尊大な態度をとってきた。もちろん、自分たちより下であるセノーデン伯爵にもだ。そんな伯爵家がわざわざ借金の肩代わりを申し出てまでエトランゼの嫁入りを望むなんて、裏があるに決まっている。エトランゼは、覚悟を決めて伯爵家にやってきたのだが────。
義母「まぁぁあ!やっぱり本物は違うわぁ!」
義妹「素敵、素敵、素敵!!最推しが生きて動いてるなんてぇっ!美しすぎて眼福ものですわぁ!」
義父「アクスタを集めるためにコンビニをはしごしたのが昨日のことのようだ……!(感涙)」
なぜか私を大歓喜で迎え入れてくれる伯爵家の面々。混乱する私に優しく微笑んだのは夫となる人物だった。
「うちの家族は、みんな君の大ファンなんです。悪役令嬢エトランゼのね────」
実はこの世界が乙女ゲームの世界で、私が悪役令嬢ですって?!
────えーと、まず、悪役令嬢ってなんなんですか……?
ヒロインだと言われましたが、人違いです!
みおな
恋愛
目が覚めたら、そこは乙女ゲームの世界でした。
って、ベタすぎなので勘弁してください。
しかも悪役令嬢にざまあされる運命のヒロインとかって、冗談じゃありません。
私はヒロインでも悪役令嬢でもありません。ですから、関わらないで下さい。
悪役令嬢は反省しない!
束原ミヤコ
恋愛
公爵令嬢リディス・アマリア・フォンテーヌは18歳の時に婚約者である王太子に婚約破棄を告げられる。その後馬車が事故に遭い、気づいたら神様を名乗る少年に16歳まで時を戻されていた。
性格を変えてまで王太子に気に入られようとは思わない。同じことを繰り返すのも馬鹿らしい。それならいっそ魔界で頂点に君臨し全ての国を支配下に置くというのが、良いかもしれない。リディスは決意する。魔界の皇子を私の美貌で虜にしてやろうと。
転生したら乙女ゲームのヒロインの幼馴染で溺愛されてるんだけど…(短編版)
凪ルナ
恋愛
転生したら乙女ゲームの世界でした。
って、何、そのあるある。
しかも生まれ変わったら美少女って本当に、何、そのあるあるな設定。
美形に転生とか面倒事な予感しかしないよね。
そして、何故か私、三咲はな(みさきはな)は乙女ゲームヒロイン、真中千夏(まなかちなつ)の幼馴染になってました。
(いやいや、何で、そうなるんだよ。私は地味に生きていきたいんだよ!だから、千夏、頼むから攻略対象者引き連れて私のところに来ないで!)
と、主人公が、内心荒ぶりながらも、乙女ゲームヒロイン千夏から溺愛され、そして、攻略対象者となんだかんだで関わっちゃう話、になる予定。
ーーーーー
とりあえず短編で、高校生になってからの話だけ書いてみましたが、小学生くらいからの長編を、短編の評価、まあ、つまりはウケ次第で書いてみようかなっと考え中…
長編を書くなら、主人公のはなちゃんと千夏の出会いくらいから、はなちゃんと千夏の幼馴染(攻略対象者)との出会い、そして、はなちゃんのお兄ちゃん(イケメンだけどシスコンなので残念)とはなちゃんのイチャイチャ(これ需要あるのかな…)とか、中学生になって、はなちゃんがモテ始めて、千夏、攻略対象者な幼馴染、お兄ちゃんが焦って…とかを書きたいな、と思ってます。
もし、読んでみたい!と、思ってくれた方がいるなら、よかったら、感想とか書いてもらって、そこに書いてくれたら…壁|ω・`)チラッ
攻略対象の王子様は放置されました
蛇娥リコ
恋愛
……前回と違う。
お茶会で公爵令嬢の不在に、前回と前世を思い出した王子様。
今回の公爵令嬢は、どうも婚約を避けたい様子だ。
小説家になろうにも投稿してます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる