貧乳は婚約破棄の要件に含まれますか？！

４．貧乳は婚約破棄の要件に含まれますか？！

これは、夢でしょうか……？


「もうお前の貧乳具合にはつくづく愛想が尽きた！お前との婚約は解消し、俺は彼女と一緒になる！」

威圧的に声を荒らげたアスラン様は私を睨みつけ、そして隣に立つ女性の腰に手を回しました。

「彼女はお前と違って、女性らしく豊満でボリュームがあって魅力的で迫力のある胸をしている。」

私に向ける厳しい視線とは裏腹に、アスラン様が彼女に向ける眼差しはとろりと甘く、視線は豊かな胸元に釘付けになっておりました。

「そんなっっ！私が何をしたというのですか！」

縋るように伸ばした手は、無情にもアスラン様に払われました。

「ああっ！」

体勢を崩し地面にへたり込んだ私に、容赦のない言葉が降り注ぎます。

「そんなことも分からないとは、ますます俺の婚約者に相応しくない。」

顔を上げると、アスラン様が私を見下ろしました。

心から愛する人に蔑みの目を向けられて、私は息をのんで次の言葉を待ちました。

「何もしていないことが悪なのだ。お前、今日の日課を忘れて寝落ちただろう？毎日の牛乳と筋トレはどうした？！毎日欠かさないと決めたのではなかったのか？！」



「―――ハッ！！！」



ガバっと頭を上げると、そこは自室の机の上。

学校の宿題が開かれたまま置かれておりました。


「ゆ、夢だ……！」


夢でした…！！！

安堵のあまり、はああぁぁと大きな溜息がこぼれました。








とりあえず夢の中でアスラン様に指摘された通り、毎日の日課である筋トレをし牛乳を飲み干し一息つきました。

アメリ様から教えていただいた知識とセレスティーナからの情報をもとに、胸が大きくなるための方法を試しています。
始めてしばらく経ちますが目に見える効果は得られず、早くも挫折しそうです。

もういっそ、『げじげじちゃん』を体に入れるしか…

そう思い実際に魔具を入れるところを想像しましたが、『げじげじちゃん』を思い出そうとしたところで私は頭を振りました。


……や、やっぱりアレは無理です。
もはや恐怖でしかありません。


ままならない状況に、私は再び溜息をつきました。