【本編完結】実の家族よりも、そんなに従姉妹(いとこ)が可愛いですか?

のんのこ

文字の大きさ
21 / 63

謝罪 sideサイラス



Side サイラス

■□▪▫■□▫▪■□▪▫


「…入ってもいいだろうか」


夕食を欠席したセイラの部屋へと足を運び、扉の前でそう声をかけた。


少し間を置いて返事が返ってくる。

「…ええ、どうぞ」


「ありがとう」


気分が悪いと言っていたセイラの顔色は思ったより悪くなく少しほっとする。

これからする話が彼女の負担にならないといいが…


「それで、何か御用ですか?」


訝しげに問う彼女に、私は小さく息を吐いて口を開いた。


「今まで、本当にすまなかった」

「…え?」


深々と頭を下げると困惑したような声が耳に届く。


「急に謝られてもわけがわかりません!兄様は何に対して謝罪をなさっているのです?」


早急な私に対し、彼女の意見は尤もだった。


「お前に、自分が愛されていないなどというひどい誤解を与え…今まで傷つけ続けてきたことだ。これまでの私の態度は、そう思わせても仕方ない最低なものだった。長い間、辛い思いをさせてしまって本当にすまない」


ミレイユばかりを優先し、セイラのことを蔑ろにしてしまったこと。

セイラにとって不名誉なことを述べるミレイユの言葉を否定せず、彼女を宥め落ち着かせるだけに留まってしまったこと。


セイラならわかってくれるはず、そんな私の身勝手な思いは、彼女を傷つける免罪符になんてならないというのに。


私の言葉にセイラは心底驚いた様に目を見開く。

今更謝罪されても信じられないのが普通だろう。



「言い訳にしかならないが、私はしっかりしたセイラに甘えてしまっていた…セイラのことを強い子だと、そう思い込んでいたのだ」


「私が、強い…?」


首を傾げる彼女に、私はこくりと頷いて言葉を続ける。


「母を亡くして泣いてばかりだったお前は、いつしか涙を見せなくなった。泣き言なんて一度も漏らさず、いつも楽しげな笑顔を浮かべていた」


思えばセイラがその様に変わったのは、丁度私への次期当主としての厳しい教育が始まった頃だった。

優しかった母を失い精神的にも落ち込んでいた状況の中、身の丈以上の指南を受けることは想像以上につらく困難なもので、セイラを守るどころか構ってやる余裕すら失われていった。


疲れ果てた私を見て、彼女はきっと無理をしていたのだろう。

今ならそんなこと簡単に理解出来るというのに…



「そんなお前の姿に、私は愚かにも勘違いしてしまった。私が守っていかなくてもセイラなら大丈夫だと」


私に負担をかけないよう必死に努力したセイラに、最低な思い込みをしてしまった。

彼女の逃げ道を絶ったのは私だ。


私の言葉に、セイラはぐっと唇を噛み締めていた。

あれから長い年月が過ぎた今でさえ、彼女は悲しみを表に出すことができないでいる。



ミレイユがやってきたのは、厳しい教育にも一段落がつき、私が心の余裕を取り戻し始めた頃だった。


両親を亡くして失意のどん底にいたあの子は、弱々しく泣き虫で、ひどく庇護欲をそそられた。



「ミレイユは、昔のセイラのようだった」

「今も昔も、私は私です。ミレイユと似ているところなんて…」

「ああ、セイラの本質はずっと変わらない。だが、私はそんなことにも気づけない愚か者だったんだ」


セイラもミレイユも、困難な状況をがむしゃらにもがき続けて、今日まで必死に生きてきた。


私はどちらかを優先するのではなく、どちらのことも同じ様に支えていかなければならなかったのだ。



■□▪▫■□▫▪■□▪▫


視点続きます!


感想 529

あなたにおすすめの小説

姉から奪うことしかできない妹は、ザマァされました

饕餮
ファンタジー
わたくしは、オフィリア。ジョンパルト伯爵家の長女です。 わたくしには双子の妹がいるのですが、使用人を含めた全員が妹を溺愛するあまり、我儘に育ちました。 しかもわたくしと色違いのものを両親から与えられているにもかかわらず、なぜかわたくしのものを欲しがるのです。 末っ子故に甘やかされ、泣いて喚いて駄々をこね、暴れるという貴族女性としてはあるまじき行為をずっとしてきたからなのか、手に入らないものはないと考えているようです。 そんなあざといどころかあさましい性根を持つ妹ですから、いつの間にか両親も兄も、使用人たちですらも絆されてしまい、たとえ嘘であったとしても妹の言葉を鵜呑みにするようになってしまいました。 それから数年が経ち、学園に入学できる年齢になりました。が、そこで兄と妹は―― n番煎じのよくある妹が姉からものを奪うことしかしない系の話です。 全15話。 ※カクヨムでも公開しています

(完)貴女は私の全てを奪う妹のふりをする他人ですよね?

青空一夏
恋愛
公爵令嬢の私は婚約者の王太子殿下と優しい家族に、気の合う親友に囲まれ充実した生活を送っていた。それは完璧なバランスがとれた幸せな世界。 けれど、それは一人の女のせいで歪んだ世界になっていくのだった。なぜ私がこんな思いをしなければならないの? 中世ヨーロッパ風異世界。魔道具使用により現代文明のような便利さが普通仕様になっている異世界です。

【完結】義妹とやらが現れましたが認めません。〜断罪劇の次世代たち〜

福田 杜季
ファンタジー
侯爵令嬢のセシリアのもとに、ある日突然、義妹だという少女が現れた。 彼女はメリル。父親の友人であった彼女の父が不幸に見舞われ、親族に虐げられていたところを父が引き取ったらしい。 だがこの女、セシリアの父に欲しいものを買わせまくったり、人の婚約者に媚を打ったり、夜会で非常識な言動をくり返して顰蹙を買ったりと、どうしようもない。 「お義姉さま!」           . . 「姉などと呼ばないでください、メリルさん」 しかし、今はまだ辛抱のとき。 セシリアは来たるべき時へ向け、画策する。 ──これは、20年前の断罪劇の続き。 喜劇がくり返されたとき、いま一度鉄槌は振り下ろされるのだ。 ※ご指摘を受けて題名を変更しました。作者の見通しが甘くてご迷惑をおかけいたします。 旧題『義妹ができましたが大嫌いです。〜断罪劇の次世代たち〜』 ※初投稿です。話に粗やご都合主義的な部分があるかもしれません。生あたたかい目で見守ってください。 ※本編完結済みで、毎日1話ずつ投稿していきます。

虐げられてる私のざまあ記録、ご覧になりますか?

リオール
恋愛
両親に虐げられ 姉に虐げられ 妹に虐げられ そして婚約者にも虐げられ 公爵家が次女、ミレナは何をされてもいつも微笑んでいた。 虐げられてるのに、ひたすら耐えて笑みを絶やさない。 それをいいことに、彼女に近しい者は彼女を虐げ続けていた。 けれど彼らは知らない、誰も知らない。 彼女の笑顔の裏に隠された、彼女が抱える闇を── そして今日も、彼女はひっそりと。 ざまあするのです。 そんな彼女の虐げざまあ記録……お読みになりますか? ===== シリアスダークかと思わせて、そうではありません。虐げシーンはダークですが、ざまあシーンは……まあハチャメチャです。軽いのから重いのまで、スッキリ(?)ざまあ。 細かいことはあまり気にせずお読み下さい。 多分ハッピーエンド。 多分主人公だけはハッピーエンド。 あとは……

【完結】新婚生活初日から、旦那の幼馴染も同居するってどういうことですか?

よどら文鳥
恋愛
 デザイナーのシェリル=アルブライデと、婚約相手のガルカ=デーギスの結婚式が無事に終わった。  予め購入していた新居に向かうと、そこにはガルカの幼馴染レムが待っていた。 「シェリル、レムと仲良くしてやってくれ。今日からこの家に一緒に住むんだから」 「え!? どういうことです!? 使用人としてレムさんを雇うということですか?」  シェリルは何も事情を聞かされていなかった。 「いや、特にそう堅苦しく縛らなくても良いだろう。自主的な行動ができるし俺の幼馴染だし」  どちらにしても、新居に使用人を雇う予定でいた。シェリルは旦那の知り合いなら仕方ないかと諦めるしかなかった。 「……わかりました。よろしくお願いしますね、レムさん」 「はーい」  同居生活が始まって割とすぐに、ガルカとレムの関係はただの幼馴染というわけではないことに気がつく。  シェリルは離婚も視野に入れたいが、できない理由があった。  だが、周りの協力があって状況が大きく変わっていくのだった。

(完)婚約破棄ですか? なぜ関係のない貴女がそれを言うのですか? それからそこの貴方は私の婚約者ではありません。

青空一夏
恋愛
グレイスは大商人リッチモンド家の娘である。アシュリー・バラノ侯爵はグレイスよりずっと年上で熊のように大きな体に顎髭が風格を添える騎士団長様。ベースはこの二人の恋物語です。 アシュリー・バラノ侯爵領は3年前から作物の不作続きで農民はすっかり疲弊していた。領民思いのアシュリー・バラノ侯爵の為にお金を融通したのがグレイスの父親である。ところがお金の返済日にアシュリー・バラノ侯爵は満額返せなかった。そこで娘の好みのタイプを知っていた父親はアシュリー・バラノ侯爵にある提案をするのだった。それはグレイスを妻に迎えることだった。 年上のアシュリー・バラノ侯爵のようなタイプが大好きなグレイスはこの婚約話をとても喜んだ。ところがその三日後のこと、一人の若い女性が怒鳴り込んできたのだ。 「あなたね? 私の愛おしい殿方を横からさらっていったのは・・・・・・婚約破棄です!」 そうしてさらには見知らぬ若者までやって来てグレイスに婚約破棄を告げるのだった。 ざまぁするつもりもないのにざまぁになってしまうコメディー。中世ヨーロッパ風異世界。ゆるふわ設定ご都合主義。途中からざまぁというより更生物語になってしまいました。 異なった登場人物視点から物語が展開していくスタイルです。

私の手からこぼれ落ちるもの

アズやっこ
恋愛
5歳の時、お父様が亡くなった。 優しくて私やお母様を愛してくれたお父様。私達は仲の良い家族だった。 でもそれは偽りだった。 お父様の書斎にあった手記を見た時、お父様の優しさも愛も、それはただの罪滅ぼしだった。 お父様が亡くなり侯爵家は叔父様に奪われた。侯爵家を追い出されたお母様は心を病んだ。 心を病んだお母様を助けたのは私ではなかった。 私の手からこぼれていくもの、そして最後は私もこぼれていく。 こぼれた私を救ってくれる人はいるのかしら… ❈ 作者独自の世界観です。 ❈ 作者独自の設定です。 ❈ ざまぁはありません。

覚悟は良いですか、お父様? ―虐げられた娘はお家乗っ取りを企んだ婿の父とその愛人の娘である異母妹をまとめて追い出す―

Erin
恋愛
【完結済・全3話】伯爵令嬢のカメリアは母が死んだ直後に、父が屋敷に連れ込んだ愛人とその子に虐げられていた。その挙句、カメリアが十六歳の成人後に継ぐ予定の伯爵家から追い出し、伯爵家の血を一滴も引かない異母妹に継がせると言い出す。後を継がないカメリアには嗜虐趣味のある男に嫁がられることになった。絶対に父たちの言いなりになりたくないカメリアは家を出て復讐することにした。7/6に最終話投稿予定。