本気の宇宙戦記を書きたいが巨乳も好きなのだ 〜The saga of ΛΛ〜 巨乳戦記

砂嶋真三

文字の大きさ
211 / 230
起転承[乱]結Λ

70話 胸糞の悪い男達。

しおりを挟む
「務めを全うする」

 レオ・セントロマは集まった報道陣を前に厳粛な面持ちで宣言した。

 コンクラーヴェ後の新教皇は、枢機卿を従え最初の記者会見に臨む習わしだが、現在のレオに付き従っているのは天秤衆総代ガブリエル・ギーのみである。

「全てを一新する機会となろう。聖事の務めを怠った枢機卿を断罪し、詩編大聖堂に集った大司教達から新たな枢機卿を選任する」

 良心を愛するイーゼンブルクのエッケハルト大司教も既に内示を受け枢機卿就任を快諾していた。

 不道徳と蔑み続けた男が数刻前に示した矜持に対する恥を、エッケハルトは胸の奥に潜む開けてはならぬ薄汚れた小箱に押し込んだのだ。

「その後、我等は聖都奪還軍を急ぎ編成し、教皇を僭称する悪漢と取り巻きを根絶やしにする。遅くとも一週間後には発つ」

 銀獅子艦隊を掌握し、ファーレン選帝侯の大艦隊もカナン星系に駐留していた。ウォルデン、イーゼンブルク、モラヴィアなども幾ばくかの艦艇を派出している。

 ロスチスラフ率いる連合艦隊と対峙するフォルツや、援軍に向かったアラゴン、バイロイトは聖都奪還軍への派兵役務を免れていたが──。

 教皇就任を宣したレオは、聖骸布艦隊を上回る兵力を寄せ集めはしたのだ。

「無辜の臣民は安じて過ごせば良い。女神のともしびは絶えぬ」

 彼が皮肉ではなく心底からの思いを述べている点に真の恐怖がある。

「以上が、私からの所信である。さて──」

 滔々と己の弁舌を終えたレオは、腰の引けた様子の報道陣を見回した。

「いかなる問いにも応えるが?」

 迂闊な質問は命取りになるとメディアも理解しており、醜聞に関する明け透けな質問が集中したアレクサンデルの往時とは異なる様相を呈した。
 
 元よりジャーナリストなどと言う奇形の道化は、権力の庇護下で安穏と批判を声高に叫ぶ下らぬ連中である。

 とはいえ、例外も存在した。

「あ、あの」

 気弱そうな一人の男が、おずおずと手を上げる。

 慣例として立てている人差し指の爪先が僅かに震えていた。

「うむ」

 と、レオは鷹揚に頷いた。

「こ、今回は信任を問う選挙だった訳ですが──そ、その──ふ、ふふふ不信任を表明された方はいなかったのでしょうか? 例えばエッケハルト猊下などは──」

 緊張から早口で捲し立てる口調となったが誰しも気になっていた点ではある。レオや天秤衆に対し異を唱える勇者の出現を大衆は心秘かに望んでいたからだ。

 巷間、イーゼンブルクのエッケハルト大司教などがその候補として挙がっていた。

 女神の溢れる慈愛を説く彼の姿に多くの者は聖性を見ていたのである。

「エッケハルト!! おお、我が魂の兄弟」

 レオは両手を広げた。

「彼は枢機卿となり我等と共に光の道を歩む」
「──で、では」

 気落ちした思いが声音に混じらないよう男は細心の注意を払った。

「全ての方が信任されたと?」
「ふむん、いや──不信任を表した者も居る」

 メディア関係者は意外な名前を聞く事となる。

「パリス・ヴァシレイオ」

 不埒と不誠実で知られる聖職者の名に、周囲では困惑する囁き声が交わされた。

「彼のみである。とはいえ、パリスの取材は難事となろう」

 無駄骨を折らせてはならぬ──レオなりの親切心なのだ。

「つい先ほど、唐突に倒れてな」

 そう言って口角を上げたレオのまなこが円弧をえがく。

「慈恵医療院へ運ばれた。先だっては私も世話になったが、素晴らしいスタッフと設備に──」

 ◇

 ケルンテン領邦ズラトロク宙域──。

 エカテリーナ率いる先遣隊一万隻が、フォルツ領邦へ通ずるポータル面に築城し防衛陣を築いていた。

 惑星ズラトロクは片田舎の軌道都市だが軍港を備えており、補給物資の搬入を済ませ本隊を迎え入れる準備は万端の状況にある。

「アリスタリフ中将、明日には本隊がケルンテン入りするそうです」
「胸糞の悪い」
「はい?」
「あ、ああ、済まん。君の事じゃ無いんだ」

 旗艦ブリッジの正面モニタに、記者達の質問に応えるレオ・セントロマが映し出されていた。

 折り悪く、口角を上げたレオが不気味な笑みを浮かべている。

「──同感です」
「で、本隊がケルンテン入りするのだな?」
「はい。いよいよです」

 幾分か興奮した様子を見せる副官と異なり、今次作戦の目的を知るアリスタリフに特段の感慨はない。

 ──我等は敵兵力を分散させる為の駒なのだ……。

 敵艦隊をカナン星系と聖都へ集中させない為、フォルツ討伐を喧伝しながら連合艦隊はケルンテンへ集うのである。

 その裏で、圧倒的機動力を有するベルニクの新設艦隊が一路聖都を目指していた。

 宗教的正統性で優位を保つには教皇の身柄を確保しなければならない──。

 その重要性を認識しているロスチスラフは、因縁あるファーレン攻めに期待を抱く家臣や領民を抑え込んで今次作戦に賛同したのである。

 ──分かっちゃいるけどってやつだよな。

 アリスタリフとてファーレン攻めへのこだわりを捨て切れずにいた。

 彼の親世代がファーレンによる巨額の賠償金に苦しんだ時代を知っており、当時の苦労話を何度も聞かされて育った為である。

 ──まあ、俺が考えても致し方の無い話だが……。

 無難な結論に落ち着いたところで、聞き馴れたブーツの足音が旗艦ブリッジに響いた。

「アリスタリフ中将」

 と、名を呼ばれたアリスタリフは、所作美々しい敬礼を素早くして見せる。

「提督」

 エカテリーナ・ロマノフが嫣然と微笑んでいた。

「良い子ね」

 ズラトロクの地表世界からエカテリーナが戻ったのである。

「任せきりで申し訳なかったわ」

 本隊の迎え入れ準備一切をアリスタリフが差配したのだ。

「お詫びに、今回も仕入れて来たのよ」

 コヴェナント産のワインが、アリスタリフの苦労に報いるだろう。

 ◇

「ふう、忙しい」

 ケルンテン領邦の重臣ホルスト・ジマは多忙を好む男である。

 ズラトロク行き高速艇の貴賓室へ入り、尻の埋まりそうなシートに腰掛けたところで息は吐いた。

「フォルツから戻ったばかりで、お次はズラトロクへ参らねばならん。本当に儂は忙しいのう?」

 連合艦隊の駐留を受け入れざるを得ない状況を弁明する為、ホルストはフォルツ領邦代官ヴォルフガングの許を平身低頭訪れていたのだ。

「ホルスト様でなければ耐えられぬ激務で御座います」
「うむうむ」

 教育の行き届いた秘書が期待通りの応えを返した。

「まあ、この多忙もじきに報われよう」
「──と、申されますと?」
「代官殿から素晴らしい知恵を授かってな」
 
 秘書など追従の上手い飾り程度と考えるホルストの口は実に軽かった。

「我等もすっかり騙されていたが、高慢ちきな女狐の秘事を握ったのだ。これを使い奸雄を懲らしめてくれよう。ククク」
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

​『イージス艦長、インパール最前線へ。――牟田口廉也に転生した俺は、地獄の餓死作戦を「鉄壁の兵站要塞」に変える』

月神世一
SF
​【あらすじ】 ​「補給がなければ、戦場に立つ資格すらない」 ​ 坂上真一(さかがみ しんいち)、50歳。  かつてイージス艦長として鉄壁の防空網を指揮し、現在は海上自衛隊で次世代艦の兵站システムを設計する男。  背中には若き日の過ちである「仁王」の刺青を隠し持ち、北辰一刀流の達人でもある彼は、ある日、勤務中に仮眠をとる。 ​ 目が覚めると、そこは湿気と熱気に満ちた1944年のビルマだった。  鏡に映っていたのは、小太りで口髭の男――歴史の教科書で見た、あの「牟田口廉也」。 ​ しかも時期は、日本陸軍史上最悪の汚点とされる「インパール作戦」決行の直前。  部下たちは「必勝の精神論」を叫び、無謀な突撃を今か今かと待っている。 ​ (……ふざけるな。俺に、部下を餓死させろと言うのか?) ​ 現代の知識と、冷徹な計算、そして海自仕込みのロジスティクス能力。  すべてを駆使して、坂上(中身)は歴史への介入を開始する。  精神論を振りかざすふりをして上層部を欺き、現地改修で兵器を強化し、密かに撤退路を整備する。 ​ これは、「史上最も無能な指揮官」の皮を被った「現代の有能な指揮官」が、確定した敗北の運命をねじ伏せ、数万の命を救うために戦う、逆転の戦記ドラマ。

オッサン齢50過ぎにしてダンジョンデビューする【なろう100万PV、カクヨム20万PV突破】

山親爺大将
ファンタジー
剣崎鉄也、4年前にダンジョンが現れた現代日本で暮らす53歳のおっさんだ。 失われた20年世代で職を転々とし今は介護職に就いている。 そんな彼が交通事故にあった。 ファンタジーの世界ならここで転生出来るのだろうが、現実はそんなに甘く無い。 「どうしたものかな」 入院先の個室のベッドの上で、俺は途方に暮れていた。 今回の事故で腕に怪我をしてしまい、元の仕事には戻れなかった。 たまたま保険で個室代も出るというので個室にしてもらったけど、たいして蓄えもなく、退院したらすぐにでも働かないとならない。 そんな俺は交通事故で死を覚悟した時にひとつ強烈に後悔をした事があった。 『こんな事ならダンジョンに潜っておけばよかった』 である。 50過ぎのオッサンが何を言ってると思うかもしれないが、その年代はちょうど中学生くらいにファンタジーが流行り、高校生くらいにRPGやライトノベルが流行った世代である。 ファンタジー系ヲタクの先駆者のような年代だ。 俺もそちら側の人間だった。 年齢で完全に諦めていたが、今回のことで自分がどれくらい未練があったか理解した。 「冒険者、いや、探索者っていうんだっけ、やってみるか」 これは体力も衰え、知力も怪しくなってきて、ついでに運にも見放されたオッサンが無い知恵絞ってなんとか探索者としてやっていく物語である。 注意事項 50過ぎのオッサンが子供ほどに歳の離れた女の子に惚れたり、悶々としたりするシーンが出てきます。 あらかじめご了承の上読み進めてください。 注意事項2 作者はメンタル豆腐なので、耐えられないと思った感想の場合はブロック、削除等をして見ないという行動を起こします。お気を悪くする方もおるかと思います。予め謝罪しておきます。 注意事項3 お話と表紙はなんの関係もありません。

忘却の艦隊

KeyBow
SF
新設された超弩級砲艦を旗艦とし新造艦と老朽艦の入れ替え任務に就いていたが、駐留基地に入るには数が多く、月の1つにて物資と人員の入れ替えを行っていた。 大型輸送艦は工作艦を兼ねた。 総勢250艦の航宙艦は退役艦が110艦、入れ替え用が同数。 残り30艦は増強に伴い新規配備される艦だった。 輸送任務の最先任士官は大佐。 新造砲艦の設計にも関わり、旗艦の引き渡しのついでに他の艦の指揮も執り行っていた。 本来艦隊の指揮は少将以上だが、輸送任務の為、設計に関わった大佐が任命された。    他に星系防衛の指揮官として少将と、退役間近の大将とその副官や副長が視察の為便乗していた。 公安に近い監査だった。 しかし、この2名とその側近はこの艦隊及び駐留艦隊の指揮系統から外れている。 そんな人員の載せ替えが半分ほど行われた時に中緊急警報が鳴り、ライナン星系第3惑星より緊急の救援要請が入る。 機転を利かせ砲艦で敵の大半を仕留めるも、苦し紛れに敵は主系列星を人口ブラックホールにしてしまった。 完全にブラックホールに成長し、その重力から逃れられないようになるまで数分しか猶予が無かった。 意図しない戦闘の影響から士気はだだ下がり。そのブラックホールから逃れる為、禁止されている重力ジャンプを敢行する。 恒星から近い距離では禁止されているし、システム的にも不可だった。 なんとか制限内に解除し、重力ジャンプを敢行した。 しかし、禁止されているその理由通りの状況に陥った。 艦隊ごとセットした座標からズレ、恒星から数光年離れた所にジャンプし【ワープのような架空の移動方法】、再び重力ジャンプ可能な所まで移動するのに33年程掛かる。 そんな中忘れ去られた艦隊が33年の月日の後、本星へと帰還を目指す。 果たして彼らは帰還できるのか? 帰還出来たとして彼らに待ち受ける運命は?

大東亜戦争を有利に

ゆみすけ
歴史・時代
 日本は大東亜戦争に負けた、完敗であった。 そこから架空戦記なるものが増殖する。 しかしおもしろくない、つまらない。 であるから自分なりに無双日本軍を架空戦記に参戦させました。 主観満載のラノベ戦記ですから、ご感弁を

四代目 豊臣秀勝

克全
歴史・時代
アルファポリス第5回歴史時代小説大賞参加作です。 読者賞を狙っていますので、アルファポリスで投票とお気に入り登録してくださると助かります。 史実で三木城合戦前後で夭折した木下与一郎が生き延びた。 秀吉の最年長の甥であり、秀長の嫡男・与一郎が生き延びた豊臣家が辿る歴史はどう言うモノになるのか。 小牧長久手で秀吉は勝てるのか? 朝日姫は徳川家康の嫁ぐのか? 朝鮮征伐は行われるのか? 秀頼は生まれるのか。 秀次が後継者に指名され切腹させられるのか?

エリクサーは不老不死の薬ではありません。~完成したエリクサーのせいで追放されましたが、隣国で色々助けてたら聖人に……ただの草使いですよ~

シロ鼬
ファンタジー
エリクサー……それは生命あるものすべてを癒し、治す薬――そう、それだけだ。 主人公、リッツはスキル『草』と持ち前の知識でついにエリクサーを完成させるが、なぜか王様に偽物と判断されてしまう。 追放され行く当てもなくなったリッツは、とりあえず大好きな草を集めていると怪我をした神獣の子に出会う。 さらには倒れた少女と出会い、疫病が発生したという隣国へ向かった。 疫病? これ飲めば治りますよ? これは自前の薬とエリクサーを使い、聖人と呼ばれてしまった男の物語。

処理中です...