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後日談
疑念3
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「あの子、すごく満足そうな顔してたわ。ありがとうね、サシャさん……あら、反対に、あなたは不安そう」
「えっ」
ピシャリと言い当てられて、思わず動揺する。正しかった。彼と話している間、ずっと心にあった違和感。そう、それは昨日のこと。
「……話すことで、落ち着くこともあるわ。話してみない?」
「……お言葉に甘えて」
簡単に、昨日感じた違和感を話す。話し終えたや否や婦人が吹き出す。
「え、えっと、クエラリ婦人!?」
「っふふっ、ふふっ!!!ーーああ、ごめんなさいね。可愛らしくて、うふっ、つい……大丈夫、その悩み、すぐに解決するわ。私が保証する」
婦人の瞳に嘘はなくて。頷くことしか私には出来なかった。
「そうねえ、じゃあ、そんなあなたにプレゼント」
使用人に持ってこさせた紙に、婦人は筆を滑らせる。少しすると、折りたたんだまま私に差し出してくる。
「これ、全てが解決したと思った時に読みなさい。きっと、あなたにとっていいものよ」
意味深な笑みに、もう少しどういう意味か聞いてみるものの。何も得られず、結局茶会は終わりを迎えた。
馬車を降りて、1歩玄関に踏み入れた時。がばっと何かに視界を塞がれる。咄嗟に抵抗しようとするも、シオン様の声が聞こえて。大人しくされるがままになる。歩いた感覚的に、ここはリビングか……?そんな風に考えていると、突如視界が開けた。天井から大きく文字が垂れ下がっている。その文字はーー
「一周年おめでとうございます!!!」
ぱちくりと、目を瞬かせる。横で、シオン様が笑った気配がした。
「ふはっ!君は驚き顔も可愛いね……覚えてなかったでしょ」
嬉しくて嬉しくて。それと同時に覚えていなかったことに対する罪悪感もあって。でもやっぱり嬉しくて。こくこくと首を縦に振る。シオン様がそのまま後ろに回る。かちりと、首の後ろで音がした。首筋にはひんやりとした感触。
「うん……良く似合う」
見下げれば、きらきら輝く宝石たち。
「僕からのプレゼントだよ……一年間。結婚して、一年だ。僕と一緒にいてくれてありがとう。そしてこれからも……僕と一緒にいてください」
「……はい!!!」
「うん!いい返事だ。ちなみに、これじゃあ終わらないよ?」
にやりとシオン様が笑う。ぱんぱんと手を叩けば、いつもの執事が料理を運んでくる。開けた先にあったのはーークロックムッシュ。大袈裟な銀の蓋の下に、こじんまりとした、しかもちょっと焦げているクロックムッシュ。まずうちの料理人ではありえない。私のはてなを感じとったのか、照れくさそうにシオン様は言う。
「実は……昨日と今日一日、休みを貰って料理教室に通ったんだ。だから、その、僕作……です」
「シオン様が作られた……んですか?」
「っ、やっぱり下手くそだよね。大丈夫、食べなくて。ちょっとした出来心ってやつで。お祝い用にちゃんとした料理も用意してあるからーー」
椅子に座って、フォークとナイフを手に取って。切り分けて、口に運ぶ……ちょっぴり苦い。でも……
「美味しいです、シオン様」
にっこりと、心から笑った。
「~~っ!!!……ありがとう、サシャ。大好き」
「ふふっ、でもちょっと苦いです」
「うっ……無理に食べることないから」
「いーえ、全部食べます。だってそうじゃなきゃ、上手くなったか分からないですもの」
「!また、食べてくれるのかい……?」
「むしろ私以外に食べさせたら怒りますよ?」
堪えきれない、といったように抱きしめられる。その力は、いつもよりも強かった。私も同じくらい強い力で、抱き締め返した。
そのままお祝いをして、2人、寝室。昨日の不審な行動は今日のためだったのだと理解して、一休み。ふと、もらった手紙を思い出す。綺麗に折りたたまれたそれを開く。
一週間くらい前かしら。あなたにサプライズがしたいって、シオン様に相談を持ちかけられたの。だから今日のお茶会はあなたのためってこと!ふふふ、しかも彼、王宮では必要以上に感情を表に出さないし、女性からの誘いも軽くあしらってるのよ?それなのにあなた相手だと挙動不審になるなんて……ふふっ、いいこと聞いちゃった。
改めて、一周年おめでとう。2人の幸せを願ってるわ。
そう、サインとともに締めくくられていた。胸がいっぱいになって、この溢れ出す感情をどうにかしたくて。シオン様に縋り付く。
「おや、どうしたんだい、僕のプリンセス。今日は随分甘えん坊だね。そんな君も愛しいよ」
「……今日は、本当に本当にありがとうございました。一生忘れません。大好きです、シオン様」
「その言葉が聞けただけで、頑張ったかいがあったよ」
「でも忙しいのに料理教室なんて……無理に仕事を片付けたんじゃありませんか?すみません、私なんかのため、に……」
ちゅっと軽い音を立てて唇が落ちてきた。
「これから、なんか、って言ったら外でもどこでもキスするからね?それに、僕の自己満だよ。でも、君の喜ぶ顔を思い浮かべたら……予想以上に張り切れちゃった」
恥ずかしそうに頬をかくシオン様に言いようもないくらい愛おしさが募って。私は思わずもう一度唇を合わせていた。
「っ!……ふふっ、本当に積極的だ。それくらい喜んでくれたってことでいいのかな」
「はい!私も今度、下手ですけどお料理しますね」
「それはいいね!すごく楽しみだ。君の料理なんて、考えただけで幸せそのものだ」
そうやって言葉を交わして、寄り添って。私の不安なんか、気づいたら、消え去っていた。
「えっ」
ピシャリと言い当てられて、思わず動揺する。正しかった。彼と話している間、ずっと心にあった違和感。そう、それは昨日のこと。
「……話すことで、落ち着くこともあるわ。話してみない?」
「……お言葉に甘えて」
簡単に、昨日感じた違和感を話す。話し終えたや否や婦人が吹き出す。
「え、えっと、クエラリ婦人!?」
「っふふっ、ふふっ!!!ーーああ、ごめんなさいね。可愛らしくて、うふっ、つい……大丈夫、その悩み、すぐに解決するわ。私が保証する」
婦人の瞳に嘘はなくて。頷くことしか私には出来なかった。
「そうねえ、じゃあ、そんなあなたにプレゼント」
使用人に持ってこさせた紙に、婦人は筆を滑らせる。少しすると、折りたたんだまま私に差し出してくる。
「これ、全てが解決したと思った時に読みなさい。きっと、あなたにとっていいものよ」
意味深な笑みに、もう少しどういう意味か聞いてみるものの。何も得られず、結局茶会は終わりを迎えた。
馬車を降りて、1歩玄関に踏み入れた時。がばっと何かに視界を塞がれる。咄嗟に抵抗しようとするも、シオン様の声が聞こえて。大人しくされるがままになる。歩いた感覚的に、ここはリビングか……?そんな風に考えていると、突如視界が開けた。天井から大きく文字が垂れ下がっている。その文字はーー
「一周年おめでとうございます!!!」
ぱちくりと、目を瞬かせる。横で、シオン様が笑った気配がした。
「ふはっ!君は驚き顔も可愛いね……覚えてなかったでしょ」
嬉しくて嬉しくて。それと同時に覚えていなかったことに対する罪悪感もあって。でもやっぱり嬉しくて。こくこくと首を縦に振る。シオン様がそのまま後ろに回る。かちりと、首の後ろで音がした。首筋にはひんやりとした感触。
「うん……良く似合う」
見下げれば、きらきら輝く宝石たち。
「僕からのプレゼントだよ……一年間。結婚して、一年だ。僕と一緒にいてくれてありがとう。そしてこれからも……僕と一緒にいてください」
「……はい!!!」
「うん!いい返事だ。ちなみに、これじゃあ終わらないよ?」
にやりとシオン様が笑う。ぱんぱんと手を叩けば、いつもの執事が料理を運んでくる。開けた先にあったのはーークロックムッシュ。大袈裟な銀の蓋の下に、こじんまりとした、しかもちょっと焦げているクロックムッシュ。まずうちの料理人ではありえない。私のはてなを感じとったのか、照れくさそうにシオン様は言う。
「実は……昨日と今日一日、休みを貰って料理教室に通ったんだ。だから、その、僕作……です」
「シオン様が作られた……んですか?」
「っ、やっぱり下手くそだよね。大丈夫、食べなくて。ちょっとした出来心ってやつで。お祝い用にちゃんとした料理も用意してあるからーー」
椅子に座って、フォークとナイフを手に取って。切り分けて、口に運ぶ……ちょっぴり苦い。でも……
「美味しいです、シオン様」
にっこりと、心から笑った。
「~~っ!!!……ありがとう、サシャ。大好き」
「ふふっ、でもちょっと苦いです」
「うっ……無理に食べることないから」
「いーえ、全部食べます。だってそうじゃなきゃ、上手くなったか分からないですもの」
「!また、食べてくれるのかい……?」
「むしろ私以外に食べさせたら怒りますよ?」
堪えきれない、といったように抱きしめられる。その力は、いつもよりも強かった。私も同じくらい強い力で、抱き締め返した。
そのままお祝いをして、2人、寝室。昨日の不審な行動は今日のためだったのだと理解して、一休み。ふと、もらった手紙を思い出す。綺麗に折りたたまれたそれを開く。
一週間くらい前かしら。あなたにサプライズがしたいって、シオン様に相談を持ちかけられたの。だから今日のお茶会はあなたのためってこと!ふふふ、しかも彼、王宮では必要以上に感情を表に出さないし、女性からの誘いも軽くあしらってるのよ?それなのにあなた相手だと挙動不審になるなんて……ふふっ、いいこと聞いちゃった。
改めて、一周年おめでとう。2人の幸せを願ってるわ。
そう、サインとともに締めくくられていた。胸がいっぱいになって、この溢れ出す感情をどうにかしたくて。シオン様に縋り付く。
「おや、どうしたんだい、僕のプリンセス。今日は随分甘えん坊だね。そんな君も愛しいよ」
「……今日は、本当に本当にありがとうございました。一生忘れません。大好きです、シオン様」
「その言葉が聞けただけで、頑張ったかいがあったよ」
「でも忙しいのに料理教室なんて……無理に仕事を片付けたんじゃありませんか?すみません、私なんかのため、に……」
ちゅっと軽い音を立てて唇が落ちてきた。
「これから、なんか、って言ったら外でもどこでもキスするからね?それに、僕の自己満だよ。でも、君の喜ぶ顔を思い浮かべたら……予想以上に張り切れちゃった」
恥ずかしそうに頬をかくシオン様に言いようもないくらい愛おしさが募って。私は思わずもう一度唇を合わせていた。
「っ!……ふふっ、本当に積極的だ。それくらい喜んでくれたってことでいいのかな」
「はい!私も今度、下手ですけどお料理しますね」
「それはいいね!すごく楽しみだ。君の料理なんて、考えただけで幸せそのものだ」
そうやって言葉を交わして、寄り添って。私の不安なんか、気づいたら、消え去っていた。
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