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後日談

本音

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「最近君と全然一緒にいられてない!!!」

夜、私の髪をときながら、シオン様が叫んだ。言われてふと考える。確かに最近はお互い忙しく、すれ違いのような生活が続いていた。だけどそれも彼の地位を考えたら当然のこと。むしろ、起きておかえりなさいと言えない自分が悔しかった。

「それは、そうですが……」
「君は寂しくないの?」

うるうると目が滲んでいる……演技だとわかってても、毎度私は騙されてしまう。というより、そんな演技をしてまで私の気を引こうとするシオン様が可愛くてたまらない、というか。

「そうですね、でもシオン様はお忙しい身ですし」
「仕事を言い訳にはしたくない。今君が寂しいか寂しくないか、それだけ聞きたいな」

ね?と微笑まれる。もう、ずるい。答えなどあってないようなものではないか。

「……はい、寂しいです」
「よし!言質とったからね?」

先程までの涙はどこへ行ったのやら、一転して満面の笑みに変わる。

「明日から一週間、君と2人でバカンスだ!」
「え!?あ、明日ですか!?」
「?うん、君の予定はいれないよう頼んでおいたし、問題ないよ」

確かに来週一週間は誰にも誘われなかったし、メイドもお稽古等何も言ってこなかったけど……明日!?

「シオン様のお仕事は!?」

心配するなと言わんばかりに親指を立てられる。もう片方の手には有給申請。しかもきっちり一週間。

「!よく取れましたね」
「だって君不足じゃ捗る仕事も捗らないよ~ホテルの手配も全部済ませてあるし、服の用意もメイドに頼んだ。君は僕と一緒にいたい、そう思ってくれるだけで大丈夫だよ」

なんという手際の良さ。私を迎えに来てくださった時もそうだが、シオン様は行動一つ一つが突飛すぎる。しかもそれを悟らせないのが上手い。騎士としてはさぞ優秀なのだろう。そんな彼を私のわがままで一週間も独り占めしてよいものなのか、そんなことを思う。でも、嬉しいのは事実なわけで。
ぎゅっと後ろを向いて抱きつく。

「とっっても嬉しいです!ありがとうございます!」
「その笑顔だけで、もう満足しちゃいそう。でもいけないいけない。本番は明日からだからね……必ず楽しませてみせるよ、僕のプリンセス」

ちゅっと額にキスを落とされた。
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