【R-18】泥中の女

みつる

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露見した秘密と新たな秘密

No.1

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「海老原さん、今夜空いてる?」

代わり映えしない週末の就業中、
カウンターでいつもの様に仕事をしていた女に、
上背のある男がカウンター越しに話しかけてきた。

高そうな腕時計をチラつかせるその男に、
女は「え?」と首を傾げた。

「よかったら俺とご飯でも行かない?勿論、俺の奢りで」

カウンターにもたれるように両肘を付く男は続けた。

「この間、オシャレな雰囲気の店見つけたんだよね。
   海老原さんくらいの若い女の子が好きそうな感じの。」

「どうかな?」と自信ありげな顔で見てくる男に、
女は軽く微笑みを返し口を開く。

「ごめんなさい、今日は先約があって」

「えっ…」

断られることは想定外だったのか、
男は顔を引きつらせ固まった。

「誘って頂いたのにごめんなさい。
   また機会があればよろしくお願いします。」

女が軽くお辞儀をして言うと男はハッと我に返り、
もたれていた体を起こして引きつった顔のまま言う。

「そ、そっか…残念だな、じゃあまた」

足早に立ち去る男の背中を見て溜め息をついた女に、
隣に座っていた高木が身を寄せて言った。

「今の人、総務課の超エリート君でしょ?
   狙ってる女の子いっぱいいるって聞いたけど、
   断っちゃってよかったの?」

勿体ない、と言いたげな高木に女は苦笑いを浮かべる。

「あんまり得意じゃないんです、
    ああゆうタイプの男性って…」

そう答える女に、
高木は「あ~」と何かを察した様に言った。

「じゃあ先約っていうのは?」

「……ウソです」

女は目線を少し泳がせた後、肩を竦めて答える。
そんな女に高木はケラケラ笑った。

「やるね~海老原さん、エリート君に教えてあげたい」

「やめてくださいよっ、荒波立てたくないんですから…」

「ウソウソ、冗談」

笑う高木に、「もう…」と肩を竦めて女も笑う。

「あ、じゃあ私はどう?」

笑っていた高木が思いついた様に女に言った。

「どう……って?」

「今夜、私とご飯行かない?勿論、私の奢りで」

そう言う自信に満ちた笑みを浮かべる高木に、
キョトンとしていた女は軽く吹き出して笑った。

「是非、ご一緒させて下さい」

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