図書感想 六月

『ドイル傑作選①ミステリー編』

　もしも世界にホームズが居なかったら

　ホームズ物を読んでいれば、コナン・ドイルが腕利きの作家であることは知っているわけで、この本もあの・・クオリティは保証されているから、安心してミステリーや、ミステリー要素のある伝奇的小説の世界に浸れます。
　そして、もちろん面白いのだけれども、突出した不世出の著名な作家として愛されるためには、シャーロック・ホームズという名探偵が不可欠で、かのキャラクターこそ歴史的大発明だったと、思ったりもするわけです。
　文字通り、駅と駅の間で忽然と姿を消した臨時列車の謎が語られる『消えた臨急』、同じく列車で、今度は客室から二人の人物が消え、乗り込んだはずのない男の死体が残されていた『時計だらけの男』、最愛の妻を失った貴族の秘密を垣間見る『漆器の箱』など、全部で八編収録されています。
　特に気に入ったのが『悪夢の部屋』です。おなじみのドイル節とは一味違って、なんだかハイカラさん。新鮮な驚きに、ますますサー・アーサーが好きになりました。