彼女をぬらす月の滴

内山恭一

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あかさの叫び声はこだまし続けている。
不思議な空間である。
円形の部屋、それもまるで球体のようで、あかさはその中に居た。
四方に六角形をした大きな暗い穴が空いていて、よくよく見れば頭上や足元にもそれがあるので、正しくは六方になるのか。
ともかく、その大きな穴の上にいるのである。
それなのに、先の分からない穴にあかさは落ちないでいることが不思議でならない。
むしろ、それは落ちることができないと言える状態なのだ。
窓の外は濃い青色で満ち、漂うこの場所は宇宙ステーションというべきか。
もちろんそんな場所に行ったことも見たことも、興味すらあまり持ったことは無いのだが、何故かそう思ったのだから仕方がない。
ただ見回しただけなのに体が動いては向きが定まらず、じたばたと泳いでみたりもがいてみたりしたが、無駄と悟り身を任せた。
流れに従う事しばし、滑稽な光景だったに違いないが、あかさはどうしたらいいかに全神経を集中していた。
足先が何かに触れる。
考えている間に壁に到達したようで、足がついて安心した気分のあかさだったが、足を着けつづけるのもままならなかった。
知らない場所でありながら、近づいて来た窓から見える外の風景は誰しもが見たことのあるものだった。
黒の世界に滲んで浮かぶ青い地球がそこに見えていた。
自分の目で見た風景ではなく、カメラ越しの誰かが見ているそれだった。
さっき見えた濃紺は地球の色だったということか。
瞬時に物事を把握しているなんて、自分の頭ってすごいんじゃないかと人知れず喜んでいたあかさは、もっと見てみたいと窓枠の突起を掴んで顔を近づけた。
地球はゆっくりと回転していて、青だけでなく雲の白や森の緑を鮮やかにして美しい。
自分の住んでいるところはどこだろう。
探す途中でより遠くに小さく見える月を見かけて、今度はその美しさに惹かれていた。
いつもと違う月の表情に魅せられて、ここにいる理由が薄らぼんやりして自分で無いようだ。
「しおんが言ってた、あの月とは違う」
クワンクワンと小声が部屋に反響しておもしろい。
「確かにね」
また反響するその声はどこから、誰が発したものだろうか?
あかさは四方八方に目をやって、窓から差す光に照らされて浮かぶしおんの姿に気が付いた。
「いつからいたの?」
「結構前から」
しおんはあかさの頭上の穴からにょっきりやってきて、隣の窓にうまいこと取り付くと、
「あれは白くないね」
と、外を興味深そうに観察しているようだった。
まさか他にも誰かいるんじゃないかと部屋を見るが、壁と窓と穴以外に何もない空間が広がるのみ。
「ちかやは一緒じゃなかったの?」
「トリップしたときは最初に会ったんだけど。はぐれちゃったみたい。何やってんだか、本当に」
と呆れ口調である。
壁を軽く蹴って反対側の壁へ移動するしおんを真似して、あかさも案外簡単にそれができて、段々と楽しくなってきた。
幾度と試しているうちに、
「楽しそうだけど、ちょっといい?本当は忙しかったんじゃないの?」
と、しおんに核心を突かれ、ここに至るまでの経過が忘却の彼方へ追いやられていたことに気づかされ、はしゃいでいたことが少し恥ずかしい。
「そうなの。でもこのトリップには、別の意味がある気がして」
「どういうこと?」
「わかんないけど、感覚的にそう思うの。自分でも不思議」
しおんは曖昧なあかさの返事に何も返さないで、ただ頷く。
ちょっとした会話だけであかさの考えが分かったとは思えなかったが、
「この先に何かあるんだね?きっと」
「きっと、そう」
あかさとしおんは笑みを交わし、同じ暗い穴に視線を移した。
しおんが壁にすっくと立った。
あかさとは直角になるその立ち姿に三半規管がどうにかなったのではないと不安になる。
地球上ではありえない奇妙な光景。
例え宇宙でもあの軽い身のこなしはあり得ないわけで、それはしおんが隠し持っているはずのタクトのおかげと分かる。
魔法である。
事あるごとに、というと頻出のように聞こえるが、要所要所の困った時にはさっと使えて羨ましい。
それはともかく、はぐれたというちかやを探してみよう。
そして、あかさの予想では、加織もきっとこの世界のどこかにいるはずだった。
あかさは響いたとして五月蠅くならない程度の小声で、
「しおん、行ってみよう」
と、穴の一つを目指して飛び跳ねた。
しおんは壁を歩いて少し後ろをついてくるが、音のない空間で天地が分からない未知の状況に対応しようと頑張るあかさに対して、至って普通に歩いて追ってくるしおんとの構図は、追われて逃げるホラー映画を彷彿とさせて、
「壁を歩くんじゃなくて、もっと可愛らしい方法は思いつかなかったの?」
と、しおんに苦情を言わしめた。
「他に何かある?」
不思議そうな顔を見せ、しおんは真面目に答えた。
真剣な表情だけに、あかさは返す言葉が見つからない。
小説の時は様々な工夫が見られるのに、どうして人の夢だと発想が途端に弱くなるのかと、しおんが不思議な考えの持ち主に見える。
くるんと身を回して手と足をうまく使って進むあかさと、歩くしおん。
暗がりに消えていく二人。
再び部屋が近づいてくると明るくなって、たぶんこれは連絡通路なのだろう。
テレビで見る宇宙船内の風景とは全く違い、広さが桁違いであり、想像を絶するこの場所は一種のアトラクションを楽しませてくれる施設であるかのよう。
そんな施設であるならば、次の部屋はさぞ楽しそうな設備でもあるかといえば、先ほどより一段明るいだけの全く同じ部屋のようだった。
薄暗く、殺風景というのがぴったり。
しかし面白さは充分で、あかさの期待を良い方に裏切っていた。
青く沈んだ部屋の中をカピバラとフジがじっとして動かずに、しかしその姿のままで空中を流れていて、それを捕まえようとちかやが四苦八苦している光景にあかさとしおんは吹き出して笑った。
「難しいんだから」
と、ちかやが大きくエビぞりになりながら言う姿がまたおかしかった。
体を使うのが得意そうなちかやなのに、おそらくあかさよりも無様で不器用そうなところが意外だった。
まだじたばたしているちかやの足首をひょいと掴み助けるしおん。
もっと女子らしい助け方があるんじゃない?
例えば魔法をかけてあげるとか、いろいろありそうなのに…。
「サンキュー」
だが、あれで二人はそれなりに楽しんでいるとあかさは感じていた。
私が結構ワクワクしているんだから、とそれが理由だった。
「隣の部屋に行こうと思うんだけど、こいつら連れて行こうと思ってさ」
背の小さなしおんが軽々とちかやを持ち上げ、振り回す。
二匹をちかやに捕まえさせようという腹なのだろう、現実世界ではどんな理由をつけようと不可能な二人の行動をあかさは目にして、あかさは笑いたい衝動を抑えていた。
「それ」
ちかやの声になんだろうかと顔を上げると、すぐ目の前にフジが居て、防ぐ間もなくぽよんと頭同志がぶつかるが柔らかいので痛くはない。
すかさずフジを抱きかかえるあかさ。
苦手な空間でもパスは正確で、ちかやがフジを捕まえてあかさに投げて渡したのだった。
少し遠いカピバラは磁石のようにちかやに近づき、加速して両者はしたたかぶつかった。「痛ってー。しおん、また使ったろ」
片手のタクトを仕舞いながらしおんが返す。
「いいじゃない。捕まえたんだから」
と、にべもない。
やはり仲が良いのだ。
全く知らない人から見れば決してそうは思わないだろうが、あかさにはわかる。
微笑みながら二人を見つめ、それから窓に目を向けた。
私の傍には誰が居てくれるんだろう。
加織はどこ?
ぱっと光が差し込んで目が眩むが、それはどうやらこの宇宙ステーションの外壁に太陽の輝きが反射したためで、おかげで全体像を見ることができた。
今よりずっと未来の宇宙ステーションというのならあり得るだろう、この建造物は幾重にも連なっていて巨大で複雑な構造をしている。
学校の校舎はもとより、数千人は収容できるほどのスペースを感じさせる巨大さに、もしここに加織が居たとして見つけ出すのは困難に思えた。
「ねぇ、フジ。加織がどこかわからない?」
話しかけていたのがフジの後頭部だと気づいて、慌ててくるりと向きを変える。
「多分、このずっと先」
鼻で差す先は、さっきの話中に出てきたちかやが行こうとした通路の方で、
「なら、行ってみよう」
と、談笑しているちかやとしおんに声を掛け、あかさは二人を待つこともせずに暗がりに飛び込んだ。
加織は今どうしているのだろうか。
不安、悲哀、あるいは…。
一直線に飛んで、次の部屋に、さらに続く通路へと飛び石を渡るようにピョンピョン跳ねて進む。
加織はまた夢に溺れているかもしれないと思うと、どうしたら良いのかわからないとあかさの方が不安になっていく。
あかさの後ろ姿が彼女たちに何かを感じさせたのだろう、
「何があるの?この先」
しおんが不安そうな顔を浮かべて聞くが、あかさはそれを払しょくできる希望を持てずにいて、
「わかんない。なんだろう」
と、ニコリとすることもできない。
「何だかわからないけど、ずっと何か聞こえてるんだよ。あっちから」
と、横に並んで飛んでいるちかやが指をさして言う。
同じ方向だ。
何かがあるのは間違いなさそう。
抜ける部屋ごとに徐々に明るさが増しているが、あかさの表情は曇るばかり。
「何か聞いたことあるような気もするんだけど」
ちかやが何かを知っていそうな、それでいて思い出せなくて悶えているような声なのに気づいて、
「ちかやの夢なの?」
首を横にふるちかや。
しおんではないとは思っていたが、念のため彼女に顔を向けるが同様に首を振った。
私でもないなら、他の誰か。
その知らない人を私もちかやも知っているなんてことあるだろうか?
加織とちかやは面識ないはずだし…。
頭を巡る思考に加え、自分たちの声の反響が鬱陶しくて、更にスピードアップするあかさ。
脳内もつられて鋭敏に、神経細胞はこの宇宙ステーションのごとき迷路の中から明確につながる記憶を掘り下げていく。
鳥肌が立つ感覚。
間違いない。
この先にいるのは、加織だ。
「あっちから聞こえる」
耳を澄ましていたちかやが顔を向けている方へ、大きくジャンプ。
音はもうあかさにもはっきり聞こえ、向かうべき先はこの向こうだと知れた。
一つ抜け、二つと数える度、音は大きくなり、反面こだまのように響いえうるさいことは無くなった。
通路の暗がりの奥が光っている。
強い光が漏れ出ているのだ。
目的地は近い。
虹色の光の奥、通路を抜けるとその先はいままでの部屋を十個も二十個も足したほどの広大な部屋だった。
音が激しく響き渡る。
椅子が数千と並び壮観である中、それらが向く方向には一つ白い月のような球体が浮いていた。
「コンサートホールみたいだね」
ちかやの言う通りとあかさは頷く。
確かにそのイメージがしっくりくる空間であり、今流れている音楽もまたぴったりだった。
ただ、観客はあかさたち以外の誰も見つけられない。
うら淋しい、独特の空気だけがそこにあった。
照明の光と弦の弾かれる音が時に同調し、激しさを増す。
その音の持ち主にあかさはもう気が付いていた。
目を凝らしたところで見えない程に離れていても分かるあの楽曲は、聞いたことがあった。
自信はあったが、確かめなければならない。
あかさたちはあらぬ方へ飛んでいかないように気を付けながら跳ねて球体に近づく。
隣でちかやが、
「あの人、随分前にひさきからもらって行ったチケットの、あのバンドの人だ」
かつてひさきたちと共に行ったライブハウスで見たメンバーのうち、中心に居た人物。
センスの良さを感じさせる、おそらく彼が作った曲だ。
ベースの彼と、それを体全体で受け止めて目はうっとりとして見上げる美月のいる、あのシーンを思い出さずにはいられない。
だが、近づいてみたところで他のメンバーが見当たらない。
たどり着いたその球体の上に立ち、彼は確かにそこにいるのにあかさたちには気づかない。
まばゆい光の中、人影がちらりちらりと気になったあかさはそれが何かに判別できるや否や、
「加織!」
空気を震わせ伝わるその声が音楽に負けずに届いたその瞬間、彼は音と光を持ち去るように消えた。
月のような球体はステージで、今は居るはずべきの主人を失い暗く落ちる。
まるでそもそもそこには何もなかったように、静寂が支配する中、髪をなびかせ振り返る人影が顔を見せる。
加織だ。
「まさか、彼氏って」
声を発さず頷いただけの加織は、
「そう」
と、ステージ下のあかさを見つけるとずれた間で言った。
「ごめん。黙ってて」
彼女は大きくゆっくりと頭を下げて、詫びた。
観客に終幕を知らせる合図のようだった。
「話してくれれば良かったのに」
率直に言って、あかさには彼との関係を隠す意味が分からなかった。
そんなことなら早く言ってくれても良かった。
「どうして言えなかったの?」
「あかさには言えなかった。あかさだから」
「どうして?」
キョトンとするのは仕方ないことで、それはもう一つあることに気が付いたためでもあった。
不意に彼女の隣にある椅子の背にポツンとたたずむ鳥の姿を見たからだ。
あの思念だ。
しかし、大きさは夢で小さかった鳥のあかさと同じくらいになっていたからだ。
彼女は今、何をこの世界に見ているのだろうか?
沈黙が長くて、あかさは心が縛られたように感じて、涙がこみ上げてきそうになるのを懸命に抑えた。
鳥が言う。
「君の好きにすればいい」
月がまばゆい光を爆発させ、あかさたちの世界は全く別の世界へと変貌を遂げた。
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