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恋愛禁止
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「……ごめんなさい、和也君が悪い訳じゃないの……」
……フられた……あっけなく。
「……あ、誤解しないで。あの……友達として、こうやって図書館で一緒に会って、ラノベを書いていく分には大丈夫なの。でも、その、お付き合いっていうのは、ダメで……」
……彼女がそんな風に言えば言うほど、俺はますます絶望的な気持ちになる。
「……ち、違うのよ。あの、今まで通り、仲のいいお友達でいましょうっていう事で……」
ザクッと、何かが俺の心を切り裂いた。
再生不可能なほどのトドメを刺されてしまった……。
「……ああ、もう、私、何言っているのかしら……お願い、聞いて。その……『ヒカル』っていう子が知り合いだとしたら、付き合ってるなんてことが私の両親の耳に入ったら、大変な事になるの」
「……そっか。うん。それなら、仕方無いな……うん、今まで通り友達でいてくれたら、それで俺は平気だよ」
そういう声が上ずっているのが、自分でも分かった。
瞳は、ものすごく申し訳なさそうな表情をしていた。
「……私も、ちゃんと和也君に話そうと思っていたの。この前、その……誤解されても構わない、みたいな話したよね? それでそのこと、お姉ちゃんに話したら……血相変えて、とんでもないって注意されちゃったの」
「……注意?」
「うん……私の両親、すごく厳しいって話したよね? それが、私の想像以上だったようで……前にお姉ちゃん、高二の時に男の子と付き合っているのがバレて、ものすごく怒られたらしいの。高校生なのに恋愛にうつつを抜かすなんて、とんでもないって。その時、成績が下がっちゃってたっていうのもあって……休みの日、外出禁止にされちゃってた。私は当時、小学生だったからよく分からなかったけど、お姉ちゃん、凄く泣いてたの覚えてる……特にお父さんとは毎日喧嘩してた。まあ、それでお母さんが仲裁に入って、無事大学に合格するまでは友達のままでいて、それで結果を出して、まだお互いに好きだったら、その時は交際してもいいってことになったらしいんだけど……そうしている間に、その彼氏に新しい彼女ができて、結局別れちゃったんだって」
……なるほど。あのお姉さん、美人だったから、高校で彼氏がいてもおかしくはないが……まあ、そんなの、ついさっき振られた俺には関係無い話だ……。
「それで……前に話した、和也君の家に私が行って、二人だけでラノベ作ろうと私が持ちかけたって言ったら……絶対にそんな事口にしちゃダメって言われた。多分、和也君にも迷惑がかかるって……下手をしたら、警察沙汰になるって。ごめんなさい、私、とんでもないこと言っちゃったみたい」
……いや、ちょっと大胆だとは思ったけど、そんな事件になるようなことじゃないと思うけど……。
「……それで、お姉ちゃんに忠告されたのは、友達だったらいいけど、彼氏とかっていうのは、高校卒業するまでは作っちゃダメだって……。二人だけで喫茶店とかも、行かない方がいいって。図書館なら、まあ、ぎりぎり大丈夫かな、とは言ってくれたけど……」
……なるほど、そういうことか。
彼氏になれない、っていう理由はわかったけど、まあ、告白して「ごめんなさい」って言われたのには変わらない。
仕方無い。でも、思いを告げずに後悔するよりは良かった。
こうやって、友達として会ってはくれるということだし。
「うん、分かったよ。そういう事情なら仕方無いな……迷惑かけないように、高校卒業まであと二年、待つよ」
俺としては、強がりでそう言ったのだが……。
「……待ってくれるの!?」
と、瞳が、目を大きく見開き、身を乗り出すようにして声を出した。
その仕草に、今度は俺が驚いて、同じように目を見開いた。
……周囲を見渡すと、なんか、注目を集めている。
瞳もそれに気づき、恥ずかしそうに椅子に座った。
「……ごめんなさい、ちょっと嬉しくて……」
頬を赤らめ、わずかに目に涙を浮かべている。
これはひょっとして……俺はまだ、振られていなかったのか?
「……待つよ。瞳が本当に彼女になってくれるのなら、二年ぐらい、全然待てるよ」
「……でも、和也君、その間、彼女できなくなっちゃうよ。それでもいいの?」
「瞳以外、彼女にしたいと思わないから大丈夫だよ」
俺自身、ちょっとパニック状態だったが……以外と素直に言葉が出た。
本音だからなのかもしれない。
「……うん、そう言ってくれるなら……信じるね。あと、お姉ちゃんに言われたんだけど……恋愛は禁止だけど、片思いはしてもいいって言われたから……」
さらに顔を赤らめ、彼女はチラチラと俺を見ながら、そう言ってくれた。
これって……ひょっとして、告白が成功したのか?
いや、結論としては、友達でいましょう、って言われたんだけど……でも、二年待てば、彼女になってくれるかもしれないので……。
今だ頭が混乱しているが、とりあえず、ものすごく幸せな気分になっている。
「……でも、恋愛禁止で、片思いはOKって、どこかのアイドルグループみたいだな……」
実際、瞳はアイドルなみに可愛いのだが。
「うん、それ、お姉ちゃんにも言われた」
「……だったら、俺は瞳のファンってことで、いいかな?」
「……あははっ、それ、いいかも。うん、一番大切なファン、ね」
瞳は涙を浮かべながら、そう笑ってくれた。
そして俺は、その夜、打ち合わせした内容と、瞳の下書き原稿を元に、次話を投稿した。
アクセス数もさらに増えて、感想もつき始めている。
瞳は、あいかわらず丁寧にそれに対して返信していた。
そして俺は、『ヒカル』に対して、
「HTMさんは、とても大切な友人です」
と、当たり障りのないように返事をした。
すると、すぐにヒカルから新しいメッセージが送られてきた。
「毎日図書館で何時間も一緒にいるのに、本当にただの友達なんですか? ボクは、HTMさんの事が大好きだから、すごく心配です……HTMさんは、ボクが最初に好きになったんです! もし二人が付き合って、KZYさんがHTMさんに手を出すような事があれば……ボクは自分でも、二人に対して何をするか分からないです!」
その内容に、背筋が凍る様な恐ろしさを感じた――。
……フられた……あっけなく。
「……あ、誤解しないで。あの……友達として、こうやって図書館で一緒に会って、ラノベを書いていく分には大丈夫なの。でも、その、お付き合いっていうのは、ダメで……」
……彼女がそんな風に言えば言うほど、俺はますます絶望的な気持ちになる。
「……ち、違うのよ。あの、今まで通り、仲のいいお友達でいましょうっていう事で……」
ザクッと、何かが俺の心を切り裂いた。
再生不可能なほどのトドメを刺されてしまった……。
「……ああ、もう、私、何言っているのかしら……お願い、聞いて。その……『ヒカル』っていう子が知り合いだとしたら、付き合ってるなんてことが私の両親の耳に入ったら、大変な事になるの」
「……そっか。うん。それなら、仕方無いな……うん、今まで通り友達でいてくれたら、それで俺は平気だよ」
そういう声が上ずっているのが、自分でも分かった。
瞳は、ものすごく申し訳なさそうな表情をしていた。
「……私も、ちゃんと和也君に話そうと思っていたの。この前、その……誤解されても構わない、みたいな話したよね? それでそのこと、お姉ちゃんに話したら……血相変えて、とんでもないって注意されちゃったの」
「……注意?」
「うん……私の両親、すごく厳しいって話したよね? それが、私の想像以上だったようで……前にお姉ちゃん、高二の時に男の子と付き合っているのがバレて、ものすごく怒られたらしいの。高校生なのに恋愛にうつつを抜かすなんて、とんでもないって。その時、成績が下がっちゃってたっていうのもあって……休みの日、外出禁止にされちゃってた。私は当時、小学生だったからよく分からなかったけど、お姉ちゃん、凄く泣いてたの覚えてる……特にお父さんとは毎日喧嘩してた。まあ、それでお母さんが仲裁に入って、無事大学に合格するまでは友達のままでいて、それで結果を出して、まだお互いに好きだったら、その時は交際してもいいってことになったらしいんだけど……そうしている間に、その彼氏に新しい彼女ができて、結局別れちゃったんだって」
……なるほど。あのお姉さん、美人だったから、高校で彼氏がいてもおかしくはないが……まあ、そんなの、ついさっき振られた俺には関係無い話だ……。
「それで……前に話した、和也君の家に私が行って、二人だけでラノベ作ろうと私が持ちかけたって言ったら……絶対にそんな事口にしちゃダメって言われた。多分、和也君にも迷惑がかかるって……下手をしたら、警察沙汰になるって。ごめんなさい、私、とんでもないこと言っちゃったみたい」
……いや、ちょっと大胆だとは思ったけど、そんな事件になるようなことじゃないと思うけど……。
「……それで、お姉ちゃんに忠告されたのは、友達だったらいいけど、彼氏とかっていうのは、高校卒業するまでは作っちゃダメだって……。二人だけで喫茶店とかも、行かない方がいいって。図書館なら、まあ、ぎりぎり大丈夫かな、とは言ってくれたけど……」
……なるほど、そういうことか。
彼氏になれない、っていう理由はわかったけど、まあ、告白して「ごめんなさい」って言われたのには変わらない。
仕方無い。でも、思いを告げずに後悔するよりは良かった。
こうやって、友達として会ってはくれるということだし。
「うん、分かったよ。そういう事情なら仕方無いな……迷惑かけないように、高校卒業まであと二年、待つよ」
俺としては、強がりでそう言ったのだが……。
「……待ってくれるの!?」
と、瞳が、目を大きく見開き、身を乗り出すようにして声を出した。
その仕草に、今度は俺が驚いて、同じように目を見開いた。
……周囲を見渡すと、なんか、注目を集めている。
瞳もそれに気づき、恥ずかしそうに椅子に座った。
「……ごめんなさい、ちょっと嬉しくて……」
頬を赤らめ、わずかに目に涙を浮かべている。
これはひょっとして……俺はまだ、振られていなかったのか?
「……待つよ。瞳が本当に彼女になってくれるのなら、二年ぐらい、全然待てるよ」
「……でも、和也君、その間、彼女できなくなっちゃうよ。それでもいいの?」
「瞳以外、彼女にしたいと思わないから大丈夫だよ」
俺自身、ちょっとパニック状態だったが……以外と素直に言葉が出た。
本音だからなのかもしれない。
「……うん、そう言ってくれるなら……信じるね。あと、お姉ちゃんに言われたんだけど……恋愛は禁止だけど、片思いはしてもいいって言われたから……」
さらに顔を赤らめ、彼女はチラチラと俺を見ながら、そう言ってくれた。
これって……ひょっとして、告白が成功したのか?
いや、結論としては、友達でいましょう、って言われたんだけど……でも、二年待てば、彼女になってくれるかもしれないので……。
今だ頭が混乱しているが、とりあえず、ものすごく幸せな気分になっている。
「……でも、恋愛禁止で、片思いはOKって、どこかのアイドルグループみたいだな……」
実際、瞳はアイドルなみに可愛いのだが。
「うん、それ、お姉ちゃんにも言われた」
「……だったら、俺は瞳のファンってことで、いいかな?」
「……あははっ、それ、いいかも。うん、一番大切なファン、ね」
瞳は涙を浮かべながら、そう笑ってくれた。
そして俺は、その夜、打ち合わせした内容と、瞳の下書き原稿を元に、次話を投稿した。
アクセス数もさらに増えて、感想もつき始めている。
瞳は、あいかわらず丁寧にそれに対して返信していた。
そして俺は、『ヒカル』に対して、
「HTMさんは、とても大切な友人です」
と、当たり障りのないように返事をした。
すると、すぐにヒカルから新しいメッセージが送られてきた。
「毎日図書館で何時間も一緒にいるのに、本当にただの友達なんですか? ボクは、HTMさんの事が大好きだから、すごく心配です……HTMさんは、ボクが最初に好きになったんです! もし二人が付き合って、KZYさんがHTMさんに手を出すような事があれば……ボクは自分でも、二人に対して何をするか分からないです!」
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