ロボ彼がしたい10のこと

猫屋ちゃき

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第八話

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 ***

 連休明けの日曜日、「トントン」の店休日に星奈たちは海へ来ていた。
 わざわざ店休日に行くことになったのはバイトの主要メンバーが抜けることになるからだけれど、店主の前川が行きたがったからでもある。
 というわけで結局、花見のときとほとんど変わらないメンバーで釣りにやって来ている。  

「今日はサビキでアジを釣ります」

 車を近くの駐車場に止めて波止場にやって来ると、釣り竿を手に金子が説明を始めた。

「撒き餌をこの一番下のカゴに入れて海に投入すると、魚が寄ってくる。で、その撒き餌と針についた擬餌を食べると、魚が引っかかる。そしたら竿がしなるからリールを巻き上げて……って感じで釣り上げます。ちなみに、この擬餌のついた仕掛けをサビキ仕掛けっていうんです」

 金子は淡々と説明していたけれど、やってみたほうが早いと思ったのか、一同に背を向けるとヒョイっと竿を振って仕掛けを海へ放り込んだ。
 それは無駄のないフォームで、金子がいかに釣りに慣れているかわかる。
 星奈たちは歓声を上げてから、竿を握り真剣に海を睨む金子の背中を見守る。すると、そう経たないうちに竿の先端がグッと引き込まれるようにしなった。金子は慌てることなく竿を持ち上げ、リールを巻いていく。

「すごい!」

 海から上げられた釣り糸を見て、星奈は思わず感嘆の声をもらした。
 八つある針のうち、六つに魚がかかっていた。

「あー……本当は全部の針に魚がかかるのを見せたかったんだけど。まあ、そういうことにこだわると逃げられるから、ほどほどに引いたらリールを巻いて引き上げてください」

 言いながら、金子は針から魚を華麗に外し、海水を入れておいたバケツに放った。

「これ、浮きはついてないんだな。俺、釣りってあんまりやったことなくて、仕掛けの違いとかわからないんだけど」
「浮きをつけたほうがより初心者向けになるとは思ったんですけど、そうすると浮きの動きばっかり見て引いたときの感触を覚えないかなって」
「なるほどね。あ、これはおもりを糸の先につけてるんじゃなくて、カゴの底に錘がついてるんだ」
「そうです。こっちのほうがたぶん、慣れてない人でも投げやすいですから」

 あんまりやったことがないというわりに、前川は金子が用意してきた竿にずいぶん食いついている。尋ねられるとやはり嬉しいのか、金子も熱心に答えている。
 金子が華麗に釣り上げるのを見せられている星奈たちは、早くやってみたくてうずうずしていた。だから、二人の話が長引いたらどうしようと思って、みんなで顔を見合わせた。

「金子ー! 早くしようよ。みんな退屈しちゃうよ」
「そうだった」

 見かねた夏目が声をあげてくれたことで、ようやく金子は今日の本来の目的を思い出したらしい。

「竿は人数分ないんで、うまく交代しながら釣ってください。時々引き上げて、カゴに撒き餌を補充するのを忘れずに」
「はーい」
「七人に対して竿が四本だから、まずは女子三人にやってもらって、残り一本は……エイジさん、やってみる?」

 竿を配りながら、金子がエイジに尋ねた。金子も何かとエイジを気にかけてくれていて、どうやら気が合うらしい。

「俺はいいよ。最初は見てる。アツシは?」
「いいの? やるやるー!」

 星奈、幸香、夏目、それから篤志に竿が配られ、四人は並んで釣ることになった。当たり前のようにエイジと前川と金子が女子三人の補助のように背後に立つのを見て、篤志はしまったという顔をした。

「こうなったら、俺は誰より多くアジを釣ってやるぞー」

 気合いたっぷりのかけ声と共に、篤志は竿を振って仕掛けの部分を海へ放った。それにならって、星奈たちも竿を振る。

「どうしよう……あんまり遠くに飛ばなかった」

 思いきり投げたつもりだったのに、星奈の糸はわりと手前のところに落ちてしまった。

「大丈夫。魚が気づいて来てくれるよ」
「うん。……あ! これ、引いてる?」

 エイジに励まされてすぐ、星奈の釣り竿の先端はしなった。

「引いてるよ。落ち着いてリールを巻いたらいいから」

 初めての感覚に驚く星奈に、エイジは優しく声をかけてくれた。戸惑いながらもリールを巻いていくと、引き上げた仕掛け部分にはアジが四匹かかっていた。

「すごい! 釣れたよ! 初めてで四匹も釣れた!」
「セナ、やったね。じゃあ、魚を針から外さないと」
「うん。……あれ?」

 喜び勇んで魚の口から針を外そうとするも、それはなかなかうまくいかなかった。星奈にとって初めてなのは釣りだけではなく、生魚を触ることもだった。ましてやビチビチとまだ動く魚なんて近くで見たことも初めてで、怖気づいてしまっていた。

「貸して。噛んだりしないから、怖がらなくていいよ」

 見かねたエイジが横から手を伸ばして、一匹一匹丁寧に針から外してくれた。金子ほど華麗な手つきではないものの、星奈のようなおっかなびっくりといった覚束なさはない。

「エイジ、上手だね」
「カネコくんほどじゃないけど」
「次、釣る?」
「うん、やってみる」

 四匹釣ってちょっとした達成感を味わった星奈は、エイジに釣り竿を渡す。エイジはそれを目をキラキラさせて受け取って、早速きれいなフォームで仕掛けを投げた。

「星奈さん、見て見て! 俺、いきなり八匹釣ったよ」

 少し離れたところで釣っていた篤志が、そう言って釣り上げた魚を掲げて見せてきた。

「すごいね! いきなり? 私はまだ四匹」
「俺がもっと釣るからいい。負けない」
「チーム戦なの?」
「うん」

 星奈が篤志の釣果ちょうかに感心すると、横でエイジがボソッと言った。その対抗心むき出しの発言に星奈は笑ったけれど、男性陣にとっては聞き捨てならなかったようだ。
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