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第5章 ドキドキ☆交流戦
第32話
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「ハル!」
「あっ! お姉ちゃん!」
ハルは友だちの男の子とふたりで遊びにきたらしい。朝早くからいないと思ったら……。
「こんなところでなにしてんのよ?」
「なにって……一中と二中の交流戦っていったら、五色町の一大イベント! お祭りだよ? 休みの日も部屋にこもって本ばかり読んでる、陰キャのお姉ちゃんは知らないだろうけど」
「ぐっ…………」
む……むっかつく! どんどん生意気になるんだからっ!
周りに人がいなかったら、ヘッドロックかけてるところだ。いや、バックブリ―カーのほうがいいか。
いまのところはグッと怒りをこらえる。その命、家に帰るまであずけておこう。
というか、いいところにハルと会えた気がする。
「あのさハル、よかったら、この焼きそば食べない? お友だちもいっしょに」
「えっ、いいの!? ラッキー!」
引ったくるようにして焼きそばを受け取るハル。友だちもうれしそうだ。「これ食ったら、柔道の試合見に行こうぜ!」「おう! 一中の柔道部、強いもんな」なんて言って、ふたりではしゃいでる。
うん、黒江くんのおごりなんだから、味わって食べなさい。
「じゃあ、お姉ちゃん、サッカー部の応援に行ってくるからね」
その場を離れようとすると、ハルが右手をぬっと突きだした。
「……? なによ?」
「焼きそばには烏龍茶でしょ。ペットボトル買うからお金ちょーだい」
「ぐっ……」
アンタ、わたしのお小遣いの額、知ってるでしょーよ!
渋々、ペットボトル二本分の小銭をハルに渡した。
「サンキュー!」
「お姉さん、ゴチになります!」
ハルの友たちが手を合わせた。苦笑いするわたし。
「あっ、そうだ。ハル! ユメちゃんが来てるよ」
「えっ!」
あからさまに顔をほころばせるハル。予想通りの反応が楽しい。
「どこにいるの?」
きょろきょろと辺りを見回すハル。お返しとばかりにニンマリして言った。
「バスケ部の応援に行ったよ。体育館。ハルも行く?」
「え……いや、俺たちは柔道部に行くし……」
「ふーん。そうなんだ。じゃあね」
顔を赤らめているハルを残して、わたしは校庭に向かう。
きっとどうにか友だちを説得して、バスケ部のほうに行くかもね。……なんて思って、思わず笑みがこぼれた。
それにしても、さっきの黒江くんの様子が気になる。普通じゃなかったもん。ユメちゃんと顔を合わせたことが関係してるのかな?
◆ ◆ ◆
校庭には、たくさんの観客があつまっていた。
大半は立ち見だけど、部員の家族のなかにはシートを敷いて座っている人たちもいて、さながら運動会のよう。
どうやら一中と二中のスタメンがウォーミングアップをはじめたところらしい。
わたしは自然と、白野先輩を探していた。
あっ、いた! 真っ白なユニフォームに身を包んだ白野先輩が、爽やかな笑顔をうかべてチームメイトとパス交換している。
「白野くーん!」
「白野センパーイ!」
学年を問わず、女子から黄色い声が飛んだ。
改めて思うけど、白野先輩の人気はすごい。アイドルを応援するみたいな感覚で「好き」という子もいるだろうけど、「本気で好き。付き合いたい」と思ってる子も多いんだろうな。
ふと、白野先輩がこちらを見た。目が合う――。
わたしが軽く会釈すると、白野先輩はニコッとほほ笑んでくれた。
だけど、やっぱりその表情には悲しみが感じられて……。どうしたら白野先輩の悲しみを癒せるんだろう?
「赤木さん」
肩をたたかれ、ふり返ると、剣道着姿の山川さんが立っていた。
「あっ……山川さん!」
そうだ。山川さんは剣道部員だった。
「髪おろしたのね。最初わからなかったよ。かわいいじゃない!」
「えっ、そんなことないよ~」
照れるけど、ほめられて悪い気はしない。
「剣道部はもう試合終わったの?」
「うん。予定より早く終わっちゃった。うちら、団体戦で勝ったよ!」
「えっ、すごい! おめでとう!」
「あたしは先鋒で引き分けだったけど……」
山川さんは頭をかいたけど、試合に出られるだけですごいことだと思うよ。
「あっ……」
山川さんが驚いたような表情になった。
白野先輩がわたしたちのほうへ近づいてきたからで……。
「来てくれたんだね、赤木さん」
「はい……」
こくっとうなずくわたし。
「髪おろしてるから見違えたよ。印象が変わっていいね。うん、かわいい」
ドキッとした。男の子にかわいいって言われたの、はじめてだよ! 髪型をほめられたのかもしれないけど。
「あの……応援しますから、がんばってください」
「ありがとう。赤木さんが応援してくれたら、がんばれちゃうな。あはは」
爽やかな笑顔で胸キュンなことを言われ、頬が熱くなって――。同時に、その笑顔の裏の悲しみを感じて、胸がざわざわとした。
「それじゃあ……」
片手を上げ、白野先輩は離れていった。
「赤木さん、あなた、もう白野先輩と付き合ってるの……?」
目を丸くして山川さんがきいてきた。
「ええっ! そんなわけないよ!」
珍しく大声が出てしまった。恥ずかしくなって口をおさえ、周りを見回す。
「あっ……佐久間さん……」
「えっ? ああ、ホントだね」
少し離れたところで試合開始を待っている佐久間さんを見つけた。いつもいっしょにいる取り巻きの子たちはいなくて、佐久間さんひとりだ。
「あっ! お姉ちゃん!」
ハルは友だちの男の子とふたりで遊びにきたらしい。朝早くからいないと思ったら……。
「こんなところでなにしてんのよ?」
「なにって……一中と二中の交流戦っていったら、五色町の一大イベント! お祭りだよ? 休みの日も部屋にこもって本ばかり読んでる、陰キャのお姉ちゃんは知らないだろうけど」
「ぐっ…………」
む……むっかつく! どんどん生意気になるんだからっ!
周りに人がいなかったら、ヘッドロックかけてるところだ。いや、バックブリ―カーのほうがいいか。
いまのところはグッと怒りをこらえる。その命、家に帰るまであずけておこう。
というか、いいところにハルと会えた気がする。
「あのさハル、よかったら、この焼きそば食べない? お友だちもいっしょに」
「えっ、いいの!? ラッキー!」
引ったくるようにして焼きそばを受け取るハル。友だちもうれしそうだ。「これ食ったら、柔道の試合見に行こうぜ!」「おう! 一中の柔道部、強いもんな」なんて言って、ふたりではしゃいでる。
うん、黒江くんのおごりなんだから、味わって食べなさい。
「じゃあ、お姉ちゃん、サッカー部の応援に行ってくるからね」
その場を離れようとすると、ハルが右手をぬっと突きだした。
「……? なによ?」
「焼きそばには烏龍茶でしょ。ペットボトル買うからお金ちょーだい」
「ぐっ……」
アンタ、わたしのお小遣いの額、知ってるでしょーよ!
渋々、ペットボトル二本分の小銭をハルに渡した。
「サンキュー!」
「お姉さん、ゴチになります!」
ハルの友たちが手を合わせた。苦笑いするわたし。
「あっ、そうだ。ハル! ユメちゃんが来てるよ」
「えっ!」
あからさまに顔をほころばせるハル。予想通りの反応が楽しい。
「どこにいるの?」
きょろきょろと辺りを見回すハル。お返しとばかりにニンマリして言った。
「バスケ部の応援に行ったよ。体育館。ハルも行く?」
「え……いや、俺たちは柔道部に行くし……」
「ふーん。そうなんだ。じゃあね」
顔を赤らめているハルを残して、わたしは校庭に向かう。
きっとどうにか友だちを説得して、バスケ部のほうに行くかもね。……なんて思って、思わず笑みがこぼれた。
それにしても、さっきの黒江くんの様子が気になる。普通じゃなかったもん。ユメちゃんと顔を合わせたことが関係してるのかな?
◆ ◆ ◆
校庭には、たくさんの観客があつまっていた。
大半は立ち見だけど、部員の家族のなかにはシートを敷いて座っている人たちもいて、さながら運動会のよう。
どうやら一中と二中のスタメンがウォーミングアップをはじめたところらしい。
わたしは自然と、白野先輩を探していた。
あっ、いた! 真っ白なユニフォームに身を包んだ白野先輩が、爽やかな笑顔をうかべてチームメイトとパス交換している。
「白野くーん!」
「白野センパーイ!」
学年を問わず、女子から黄色い声が飛んだ。
改めて思うけど、白野先輩の人気はすごい。アイドルを応援するみたいな感覚で「好き」という子もいるだろうけど、「本気で好き。付き合いたい」と思ってる子も多いんだろうな。
ふと、白野先輩がこちらを見た。目が合う――。
わたしが軽く会釈すると、白野先輩はニコッとほほ笑んでくれた。
だけど、やっぱりその表情には悲しみが感じられて……。どうしたら白野先輩の悲しみを癒せるんだろう?
「赤木さん」
肩をたたかれ、ふり返ると、剣道着姿の山川さんが立っていた。
「あっ……山川さん!」
そうだ。山川さんは剣道部員だった。
「髪おろしたのね。最初わからなかったよ。かわいいじゃない!」
「えっ、そんなことないよ~」
照れるけど、ほめられて悪い気はしない。
「剣道部はもう試合終わったの?」
「うん。予定より早く終わっちゃった。うちら、団体戦で勝ったよ!」
「えっ、すごい! おめでとう!」
「あたしは先鋒で引き分けだったけど……」
山川さんは頭をかいたけど、試合に出られるだけですごいことだと思うよ。
「あっ……」
山川さんが驚いたような表情になった。
白野先輩がわたしたちのほうへ近づいてきたからで……。
「来てくれたんだね、赤木さん」
「はい……」
こくっとうなずくわたし。
「髪おろしてるから見違えたよ。印象が変わっていいね。うん、かわいい」
ドキッとした。男の子にかわいいって言われたの、はじめてだよ! 髪型をほめられたのかもしれないけど。
「あの……応援しますから、がんばってください」
「ありがとう。赤木さんが応援してくれたら、がんばれちゃうな。あはは」
爽やかな笑顔で胸キュンなことを言われ、頬が熱くなって――。同時に、その笑顔の裏の悲しみを感じて、胸がざわざわとした。
「それじゃあ……」
片手を上げ、白野先輩は離れていった。
「赤木さん、あなた、もう白野先輩と付き合ってるの……?」
目を丸くして山川さんがきいてきた。
「ええっ! そんなわけないよ!」
珍しく大声が出てしまった。恥ずかしくなって口をおさえ、周りを見回す。
「あっ……佐久間さん……」
「えっ? ああ、ホントだね」
少し離れたところで試合開始を待っている佐久間さんを見つけた。いつもいっしょにいる取り巻きの子たちはいなくて、佐久間さんひとりだ。
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