無属性魔法しか使えない少年冒険者!!

藤城満定

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魔族の存在が明るみに。

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 ヒューブ、マリア、バルザの三人は週末の休日は必ず学園ダンジョンに挑んでいる。
 学園ダンジョンに挑む事七日。三人は学園ダンジョンの踏破に成功した。学園ダンジョンとは言えダンジョンはダンジョンだ。それを踏破できたのだから学園長直々に講堂で大々的に褒章と金一封として金貨十枚ずつが授与された。更にはマリアとバルザは冒険者ランクがDランクからCランクへと昇級した。
 クラスメイトは勿論、他クラスの生徒達もヒューブ達三人に触発されて今まで以上にダンジョンに挑む者が激増した。それに伴い、アドバイスを貰おうとする生徒がワラワラと寄ってきた。
 マリアとバルザは的確なアドバイスをするので人気が爆上げ状態だ。それに対してヒューブのアドバイスは『斃す為の心構え』『斃す殺す斃され殺されるかの状況では躊躇うな』などの精神論ばかりを説くので、少し敬遠されているが、分かる生徒は分かっている。ヒューブが説く精神論こそが生き残るために絶対に必要なものであるという事を。なので、クラスメイトや他クラス生徒ばかりではなく、上級生までヒューブの精神論を聞きにやってきている。何より現役のSランク冒険者からの生のアドバイスなんて万金積んでも中々貰えないので尚更だ。
 その結果、学園ダンジョンを踏破するかボス部屋まで辿り着く生徒が増えた。
 そんなある日、ヒューブは学園長に呼ばれた。
 学園長室に入ると、冒険者ギルド本部のリーリン・ザラス統括マスターが優雅に紅茶を飲んでいた。

「これは、統括。学園長とご一緒とは…何かありしたか?」
「うん。ちょっとね」
「まあ、座りなさい」
「はい。では失礼して」

 ヒューブがソファーに座ると、学園長秘書のレイリー・ファルニさんが紅茶を運んできてくれた。
 ヒューブが紅茶を一口飲むのを待って、学園長とリーリン統括マスターが二枚の書類をテーブルの上に置いた。二人を見ると、「読みなさい」と目で言ってきたので、「何だろう?」と思いながら目を通すと、

「成る程。そういう事でしたか」

 一人で納得したようだ。

「分かってくれたかね?」
「はい。分かりました、というよりと言ったほうが正しいかと」
「だろうね。まさか私もこの報告を受けた時には正直言って信じられなかったからね。でも、『悠久の漣』の調査結果だからね」

 『悠久の漣』とは王都を拠点にするAランク冒険者パーティーであり、ヒューブも何度か顔を合わせた事も、訓練場で手合わせをした事もあるので、彼らの実力は良く知っている。その『悠久の漣』が調査したのなら確かなものだろう。
 その書類には、

「何らかの作為的要因により、モンスターの凶暴化が見られ、討伐指定ランクを一段階上げる必要がある」

 と書かれていたのだ。
 ヒューブは冒険者として最高位のSランクなので、学園生活を過ごしながらも冒険者としても活動していたので、モンスターの凶暴化については認識していたのだが、まさか『作為的要因による』ものとは思っていなかったので、この報告に少なからず驚いていたし、納得せざるを得なかった。

「『作為的要因』、か」
「意味は分かるよね?」
「はい。分かりたくはありませんでしたけどね。この事は陛下には?」
「うん。昨日の内に報告済みだよ」
「そうですか。それで?」

 報告しただけで、「はい、終わり」ではなかったはずだ。

「『徹底的に調査して原因を究明し、必要とあらば速やかに討伐せよ』とのご命令だったよ」
「…そう、ですか」
「うん?どうしたのかね?」

 歯切れが悪く、苦々しげな表情のヒューブに学園長が、どうしたのかと訊ねるのへ、「いえ、別に」と答えたのだが、リーリン統括マスターが、

「ヒューブくん。多分、君の考えと私の考えは同じだと思うよ」
「ッ!!じゃあ、まさか!?」
「そう。これは魔族の仕業だと考えているよ」
「ツッッッ!!??」

 瞬間。
 学園長室がヒューブの怒気と殺気で茶器や花瓶、その他の備品や家具類が割れたり壊れたりしてしまった。
 崩壊寸前まで破壊された学園長室だったが、それくらいヒューブの怒りの感情が強かったという事だ。

 『魔族』

 神々に叛逆し、世界征服を目論んで世界中の国々に宣戦布告をして、何の罪咎の無い者を戦禍に陥れた者達の総称である。
 人間族や亜人族、エルフそやドワーフ族、精霊族から有りと凡ゆる種族を隷属しようとした極悪非道且つ残虐な種族で、モンスターを操って意図的にスタンビートを発生させて各種族を屠ろうとしている。
 最近は大人しくしていたようだが、ここにきてまた活動を再開したようだ。

「この事、陛下には?」
「当然」
「で、俺は?」
「勿論、討伐隊に参加してもらうよ」
「討伐隊に…そうですか」

 ふふふ…。

 ヒューブの口から笑い声が聞こえてきた。
 その笑い声はどこか楽しそうでいて、様々な感情が混じり合っている。学園長とリーリン統括マスターもゾッとするような、そんな笑い声だった。
 ヒューブの頭にあるのは、

 『仇打ち』

 の文字だけ。
 破壊され、蹂躙され、ヒューブ以外を皆殺しにしたモンスターとその背後にいた魔族へ復讐できるとあって、ヒューブの瞳の奥に業火の焔が轟々と燃え盛っていた。
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