咲かないオメガ

マロン

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仲井陽太

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 そうして僕たちは駅員さんにお礼を言って駅を出た。

 そのままタクシーに乗って沙月くんの家へ向かう。

 連絡もなく帰宅が遅くなった沙月くんを家族はとても心配して待っていた。
 スマホにも沢山着信が入っていたようだ。
 ひとしきり沙月くんを叱った後に隣に立つ僕に気がついたようで訝しげな顔をして聞かれた。
 
「あなたはどちら様ですか?」
 
「初めまして。私は仲井陽太と言います。櫻学園提携の総合病院で医師をしています。」

 そうして名刺を渡して、今日沙月くんと出会った経緯を話した。

 心配をかけるといけないので電車に飛び込みそうになったことは伏せて気分が悪くなってホームでフラフラしているところを見つけたことにした。

 そして家族皆さんが揃っているからちょうどいいと思って
「沙月さんとのお付き合いをお許しください。」と頭を下げた。
 
 僕は櫻学園で沙月くんを見かけて気になっていたこと。

 入院中にお話をしてますます気になって好きになっていたこと。

 連絡先を渡したけど、看護師が意地悪をして連絡が取れなくなったこと。

 学園を退所してから連絡がつけられず、この辺りの地域を休みのたびに探しにきていたこと。

 やっと今日見つけたのでもう離したくないこと。
 などをそれはもう必死で伝えた。

「沙月はどう思っているの?」

 と聞いてくれたのは沙月くんのお姉さんだ。

 沙月くんは
「うん。僕も先生と同じ気持ち。」

 と言ってくれた。でも先生はもうやめてほしいな…と思って

「沙月くん、そろそろ先生じゃなくて陽太って呼んでくれないかな?」とお願いしてみた。

 すると「………陽太さん…?」首を傾げて呼んでくれた。

「………ぐぅっ…………かわ…………」幸せすぎて心臓が痛い。

 沙月くんのお父さんとお兄さんは複雑な顔をしながらも
「沙月が良いのなら…」と仕方なさそうに認めてくれた。

 お姉さんはもうすっかり決まったように僕たちを見て
「沙月幸せになりなさい。」と笑ってくれた。

「うん…うん…僕幸せになる。陽太さんと一緒に。」と泣いていた。

 それから僕は総合病院を辞めて沙月くんの家の近くで開業している知り合い先輩のクリニックで働き始めた。

 沙月くんはひまわり保育園で仕事を続けて僕たちは付き合い始めた。

 すぐに一緒に暮らしたかったけど沙月くんのおとうがまだもう少し沙月くんと暮らしたいとゴネたので2人で暮らすのはもう少し先になってしまった。

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