生まれ変わったら知ってるモブだった

マロン

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アルパカの誤算

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天界には魂の湖がある。

人が亡くなるとその魂は天へ昇り湖に沈む、そこからまた浮かび上がると次の生命となる。

沈んだ魂がいつ次に浮かぶのか…それは誰にもわからない、沈んだまま何千年も浮かばないものもいれば沈んで数年で浮かび上がってくるものもいる…そこは完全にその時々の運のようなものなのだ。

湖は魂の輪廻を繰り返すだけではない、新しい魂を生み出すことも、沈んだ魂を消滅させてしまうこともある。
世の理など関係なくそこに関してもその時々の運のようなものだった。

湖の底には沢山の魂が沈んでいて、湖から浮かび上がった魂はユラユラと飛んで下界へ降りていき生命となる。

魂は丸いガラス玉のようで、個体に差はあれどどれも濁りがある。
魂が濁っているから悪だとか濁っていなから善だとかそういうことではなく濁りがないのは純粋なだけである。
純粋な魂でも悪人はいるし、濁った魂でも善人はいる、ただそれだけのこと。
ただし生を受けてからの生き方次第で純粋な魂が濁ることもあるし、濁った魂の濁りが減っていく場合もある。

天界でその様子を眺めているのがキャメール神と崇められる双子のワカイヤとスリだ。
ワカイヤとスリは神と崇められているけれど、特別何かを下界に施しているわけではない。
時々アルパカとなって下界に降りることがあるくらい。
 
婚姻の印を浮かばせたり消したりするのは太古の昔からの慣習なので行っている。
ピッカの実に関しては時々面倒くさくて出さない時もある。だから実がなるのは8割くらいになる。
ただそこから子どもが出来るかどうかは湖から浮かび上がる魂たち次第なので実を食べてもできない場合もある。
 
神として天界から下界を眺めているワカイヤとスリは趣味の悪い遊びをすることがある。

ワカイヤの趣味は湖から浮かび上がってくる魂を適当に一つ手に取って、徹底的に磨き上げる。
濁った魂をピカピカに磨き上げて加護を付けて下界へ離す。
磨き上げた魂は下界で暮らすうちに磨き上げられる前の濁りまで徐々に濁っていく。
加護の種類は様々だけど、加護を上手く使えば濁る速度は遅く、悪用すれば濁っていく速度は速い。
そして完全に元の魂の濁りに戻ると加護は消える。
その様子をただ眺めるのがワカイヤの趣味。

そしてスリの趣味はなんとなく自分の波長と合いそうな魂を見つけると干渉をかける。
すると下界で聖魔法を発現して神子と呼ばれるようになる。
神子は魔力のある者と性行為をすると尋常ではないくらいに快楽を得られるようになるので、神子として聖魔法で皆んなを助けることと己の快楽との狭間に翻弄されることになる。
その様子をただ眺めるのがスリの趣味。

どちらもお互い悪趣味だなと思いながら天界で暮らしている。

ある時ワカイヤは湖から浮かんでくる魂の一つに目を奪われた。

それは磨き上げる前から恐ろしいくらいに純粋な魂だった。
キラキラピカピカと輝くそれはフワフワと水の中を漂い浮かび上がってくる。
浮かび上がる直前にワカイヤはそれをそっと掬い上げた。
見れば見るほど透き通って美しい魂にワカイヤは一目で恋に落ちたようだった。
そしてその魂に夢中になるあまり、その魂にピッタリとくっついてくるもう一つの魂には気が付かなかったようだった。



恋に落ちる瞬間を間近で見たのは初めてだ……とスリは思った。

下界を眺めていると人々が恋に落ちる瞬間は時々見かける。
片思いでも両思いでも、大体は出会ってから少しずつ相手を好きになっていったり、お互いを意識したりしてゆっくり恋に落ちていくが、たまに出会った瞬間にドーンっとまさに恋に落ちるフォーリンラブというのも見かけたりもする。

でもまさかいつも隣にいる自分の半身でもあるワカイヤが一個の魂に心を奪われるとは思いもしなかった。
それはまさにフォーリンラブというものにふさわしくスリは恋に落ちるという経験をしたワカイヤにもワカイヤを夢中にした魂にも嫉妬をした。

そして嫉妬に駆られて掬い上げた魂にピッタリくっついて来た魂のことをワカイヤに教えることもせずそれに隠蔽の魔法をかけた。
ピッタリくっついて来た魂は少しだけ濁っていたけど純粋に近かったのが幸いして隠蔽をかけてもワカイヤは気がつかない。

(恋は盲目って本当なんだな)とスリはちょっとだけ呆れてしまった。

ワカイヤはその純粋な魂を毎日毎日磨き上げてキスをした。
奇しくも隠蔽された魂も一緒に磨かれることとなり知らずのうちに加護が付いた。

魂をずっと抱えているわけにもいかず下界へ放たねばならない日がやって来た。

通常魂の行き先を神が決めることはない。

やれないことはないけれど魂の行き先に干渉するのはあまり良いことではないし、干渉するとその魂が下界で最期を迎えるまで見守り続けなくてはならず、その間新たな魂を磨くことも出来ない。

まぁ色々めんどくさいからワカイヤは魂に干渉はしないのだ。

だけどワカイヤはこの魂をとても大切にしているので当然のように干渉することにした。

行き先を探して見つけたのがとある男爵家の三男坊。
裕福ではないけれど優しくて良い人間が揃っている。
恐らく加護持ちで生まれたら家中でひっそり隠してくれるだろう。

そしてそこへ魂を送りその魂の人生に強制力をつけた。

その強制力とは、完璧なるモブとしての人生。

彼自身は普通に暮らしているようで、実際はあらゆる場面でモブと化す。
だから誰かと関わっているようで関わっていないし、様々な出来事に遭遇しても絶対に渦中には入らない。
そうして何となく1人で人生を終えて魂となって湖に戻って来たらまたワカイヤのものになる。
だれにも気付かれない、僕の大切な魂……ワカイヤはウキウキとその魂を送った。

その時隣にもう一つ魂があることに気が付いた。
 
「なんでこんなところに魂が!……隠蔽がかかってたのか!スリ!お前の仕業か!」
 
「やっと気が付いたのか……ワカイヤ。本当にあの魂に夢中なんだな。」呆れたようにスリが言う。
 
「なんてことしてくれたんだ!これじゃぁ僕の大切なあの子が取られてしまう!」
 
あの子と同じところへ行きかけている魂の進路を変えることは出来ないので、慌ててワカイヤはその魂を同じ世界で同じ空間に生きても交われないようにさらに強制力を付けて送り出した。
 
そうしてワカイヤの大事なあの子はモブのモーブル・テスカとなり、隠蔽されていた魂はカサブランカ王国の第3王子カリタス・カサブランカとなったのだった。

送り込まれた世界を眺めていたスリはそこに自分の波長と合った赤ん坊をみつけた。
 
生まれたての赤子は平民ミラだった。
 
スリはその子に干渉することにした。
 
こうして「聖なる神子は白薔薇と共に」の世界が出来上がって行ったのだった。
 
 
 
 
 
 
 
 
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