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51.勘当
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「ノリと勢いで式は済ませたけど、これからが本番なんじゃねーの?」
式が終わり教会の外に出てから、一仕事終わったというように天を仰いで大きく息をついた二人に、カイルの無慈悲な一言が突き刺さった。リリアーナの父に報告して「勘当されに行く」という重大な任務が待っている。
安心したのもつかの間、ビクトールもリリアーナも改めて表情を引き締めた。父が二人の結婚を聞いたらどんな反応をするのか、恐ろしくて想像したくない。
「うじうじ悩んでも仕方ない、一緒に報告に行こう。こっちはどうなってもいいけど、リリアーナに何かしたら父親だろうが許さない」
「命の恩人のあなたに何かしたら私こそ許さないわ!」
勝手に燃え上がる二人を見て、カイルはそろそろ自分の役割が終わったことを悟った。これからは当事者同士で頑張ってもらうしかない。
「これ以上俺ができることもなさそうだからここで別れるけど、何かあったら連絡してくれ。家を追い出されたら一夜の宿を貸すことくらいできるからさ」
そう言って彼らに背を向け、卒業パーティーの準備をするべく家に戻ろうとした。
「あの、カイル!」
ビクトールは慌ててカイルを呼び止めて深くお辞儀をした。
「本当に世話になった……多分これからも迷惑かけると思うけど。今までの恩は少しずつ返していくから引き続きよろしく頼む」
「ああ、それならもういいよ。お前のこと魔法技術省にねじ込んでおいたから。多分ダスティンさんの下で働くことになると思う。じゃまた」
カイルが最後に思いがけない爆弾を落とし、ビクトールは訳が分からずあたふたしてしまった。今はそれどころではないのに詳しい話が聞きたくなってしまう。
「一体どういうことなの?」
「ちょっと自分でもよく分からない。後で詳しく聞かなきゃ。それはひとまず置いといて、とりあえずリリアーナの家に行こう」
ビクトールは無理やり気持ちを切り替えて目の前の問題に取り組もうと努めた。まずはリリアーナの父親に結婚を認めてもらわないといけない。先に既成事実を作ってしまおうと言ったのは自分だが、今頃になって大それたことをしてしまったという思いに駆られていた。
二人は馬車を捕まえて家の近くまで行った。家に近づくにつれて二人の緊張はピークに達した。父がどんな反応をしても自分はどうでもいいが、ビクトールだけには失礼な態度を取って欲しくない。王室もオズワルド家も、ビクトールに対して余りに恩知らずな対応だとリリアーナは憤慨していた。ルークの命を救ったのは実質的にはビクトールなのに、相手が最下層の平民だからって余りにも舐めている。
オズワルド家の邸宅は、貴族の邸宅が集まる小奇麗なエリアにあった。ビクトールが居住するスラム街とは天と地ほどの差があり、道路もよく整備され道の両端には街路樹が植えられている。のんびり散歩してもスリに遭う心配もなくゴミ一つ落ちてなかった。
家の門をくぐる時、リリアーナは自分の家なのにとても緊張した。執事に取り次いでもらって父の部屋に行くときも、肉親に会いに行く気の置けなさはなかった。じっとりと汗ばむ手をビクトールが励ますようにぎゅっと握ってくれて、今は独りじゃないんだとやっと実感できる。
父は、何年もそこから動いてないかのように、どっしりと執務机の椅子に座っていた。部屋に入って来た二人にも何ら驚く様子はなく、ゆっくりとこちらに身体を向けただけだった。リリアーナが深呼吸をしてから、「私たち先ほど結婚式を挙げてきました。何もいらないので公爵家を抜けさせてください」と緊張した面持ちで報告しても眉をぴくりと上げただけで、目に見える驚きの感情は出さなかった。
次にビクトールが前に進み出て深々とお辞儀をした。
「先日は失礼しました。今回のことも順番が逆になってしまい申し訳ありません。事前にお許しをいただこうとしたら止められると思ったので。正直なところ、反対されても従う気はありませんでした。無礼なのは承知してます。俺はどんな目に遭っても構いませんが、リリアーナには何もしないでください」
ビクトールは一気に早口でまくし立てると、再度頭を下げた。父はしばらくの間、珍しいものを見るようにビクトールを眺めた。
「お前たちが何をしようが取って食ったりしないから安心しなさい。君の功績に対して我々が何もしないと思っているならこれが答えだ。リリアーナを差し出そう」
「リリアーナは物じゃない。彼女にだって意思がある」
「……その通りだな。いずれにせよ、あの時サンドラを止められなかった私には、何も言う権利がない。二人の自由にしていい。こちらは何もしない」
余りにもあっけない父の回答に、二人ともにわかには信じられずその場で立ち尽くした。
「いつかはこんな日がくるかとは思っていたが、余りにも早かったな。リリアーナはまだ学校すら卒業してないじゃないか。これからはどうするつもりだ?」
「学校はやめます。魔法について私が学べそうなことはこれ以上はないので。それより親に恵まれない子の福祉事業をやりたいんです。魔法の力を借りなくてもこれならできます」
サバサバしたリリアーナの口調に、父は目を細めた。そこから何らかの感情を読み取ろうとしたが、父が何を思ったか分からずじまいだった。
「さっさと結婚して学校もやめて、本当に何一つ親の思い通りにはならない子だな。サンドラが聞いたらどんな反応をするだろう」
母の名前が出て来てリリアーナは胸がキュッと締め付けれられた。何から何まで自分は親の期待を裏切ってばかりだ。そのことはもう考えまいと思ったが、どうしても同じ考えに舞い戻ってしまう。
「それでもこの世界は生きている者のために存在する。色々言いたいことはあるが、お前たちのためにできることは解放してやることくらいだ。いいから行きなさい」
そう言うと父は席を立ち、何やら小さい帳面を取り出してサラサラと書いてからリリアーナに渡した。
「今からお前を公爵家から除籍する、平たく言えば『勘当』というやつだ。当然権利も義務も失われる。つまり相続権諸々もなくなることは分かってるな。その代わりにこの小切手を受け取りなさい。本来相続する額には届かないかもしれんが、今後一切の義務を負わなくて済むことを考えれば不当というほどではないだろう」
父から渡された小切手には信じられない額が書かれていた。思わず父を二度見すると、父はもう行っていいと言うように手を振った。ビクトールに手を引かれリリアーナは部屋を出ようとしたが、最後に「今まで育てて下さってありがとうございました」と言い残し扉を閉めた。そして、自分の部屋に寄って簡単に荷物をまとめてからビクトールと共に家を出た。
「お母様の話をした時にね、『自分のことは何か言ってなかったか』と聞かれたの。でも正直に答えるしかなかった。そしたら『それが私への罰か』と呟いていて。それから急に老け込んだ感じがする……」
リリアーナは街路樹が並ぶ遊歩道をビクトールと共にとぼとぼと歩きながら、父の話をした。
「私がもう少しちゃんとしてたらお母様も死なずに済んだのかしら。そしたらお父様も少しは愛してくれたかな。魔力が少ないのは生まれつきだから自分のせいではないと思おうと頑張って来たけどそろそろ疲れてきちゃった……」
ビクトールが何か言おうとして口を開きかけたが、それにも構わずリリアーナは一人話し続けた。
「もう親がどうのという年でもないんだけど、結局お父様もお母様も、愛しきれないし憎みきれない。いっそのことどっちかに振り切れていれば楽なのに」
「リリアーナ、もういい。十分よくやったよ」
ビクトールはリリアーナを自分の方へ引き寄せると、力を込めてぎゅっと抱きしめた。
「リリアーナの中にいたアレクサンドラは類まれなる才能を持った魔法使いとしての人格でしかない。本当の彼女は母として君のことを深く愛していたと思う。こないだはああ言ったが、野心だけであんな大それたことをしたとは思えない。だから、もし傷ついたのなら……」
「ううん、もうそれはいいの。だってあなたがいるもの。もう一度あの場に戻ったとしても同じ選択をすると思う。私はあなたと生きていくと決めたから、何度でもあなたを選ぶ」
リリアーナは顔を上げて青の瞳でビクトールを捕らえた。何度見てもこの青にはどきっとしてしまう。魅了の魔法が込められているのではと何度疑っただろう。
「今まで魔力が少ないとか何もできないとか散々言われたと思うけど、リリアーナの選択が今の結果だ。そうでなかったら多分俺も戻って来れなかった。アレクサンドラのレシピに改良を加えただけでは多分……無理だっただろうから」
相手の思念に干渉できる禁断の魔法薬のことを指していることはリリアーナにも分かった。本来ビクトールの存在が消えるはずだったのに、こうして二人並んで歩くことができるのは奇跡と言っても差し支えない。
「でもあれは私の魔法ではないわ。あなたの魔力とお母様の守護魔法のお陰」
「そんなことはどうでもいい。何を選択してどう行動するかが大事なんだと思う。持ってるものではなく、それをどう生かすかで人の幸福って決まるんじゃないかな……よく分からないけど」
ビクトールは自信がなさそうに最後の一言を付け加えると、幼子をあやすようにリリアーナの背中を優しく撫でた。温かい感触にリリアーナも安心して目を閉じたが、やがてそれだけでは物足りない衝動がむくむく芽生え始めた。
「あの、ビクトール……さっきの、もう一度してくれない?」
「さっきのって?」
「ほら、教会でやった……」
それを聞いた瞬間ビクトールは耳まで真っ赤になり思わず後ずさった。
「ばかっ、こんな人が見てるところでできるわけないだろ!」
「そうだよね、ごめん。今の忘れて」
「いや、忘れられない! ここじゃないところでもう一回!」
「本当にいいから! もう恥ずかしいじゃない!」
ビクトールを押し飛ばしてリリアーナは急に早足でつかつかと歩き出した。その後をビクトールは慌てて追いかけた。その姿は、通行人の目から見ても普通の仲睦まじい恋人にしか見えなかった。
式が終わり教会の外に出てから、一仕事終わったというように天を仰いで大きく息をついた二人に、カイルの無慈悲な一言が突き刺さった。リリアーナの父に報告して「勘当されに行く」という重大な任務が待っている。
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オズワルド家の邸宅は、貴族の邸宅が集まる小奇麗なエリアにあった。ビクトールが居住するスラム街とは天と地ほどの差があり、道路もよく整備され道の両端には街路樹が植えられている。のんびり散歩してもスリに遭う心配もなくゴミ一つ落ちてなかった。
家の門をくぐる時、リリアーナは自分の家なのにとても緊張した。執事に取り次いでもらって父の部屋に行くときも、肉親に会いに行く気の置けなさはなかった。じっとりと汗ばむ手をビクトールが励ますようにぎゅっと握ってくれて、今は独りじゃないんだとやっと実感できる。
父は、何年もそこから動いてないかのように、どっしりと執務机の椅子に座っていた。部屋に入って来た二人にも何ら驚く様子はなく、ゆっくりとこちらに身体を向けただけだった。リリアーナが深呼吸をしてから、「私たち先ほど結婚式を挙げてきました。何もいらないので公爵家を抜けさせてください」と緊張した面持ちで報告しても眉をぴくりと上げただけで、目に見える驚きの感情は出さなかった。
次にビクトールが前に進み出て深々とお辞儀をした。
「先日は失礼しました。今回のことも順番が逆になってしまい申し訳ありません。事前にお許しをいただこうとしたら止められると思ったので。正直なところ、反対されても従う気はありませんでした。無礼なのは承知してます。俺はどんな目に遭っても構いませんが、リリアーナには何もしないでください」
ビクトールは一気に早口でまくし立てると、再度頭を下げた。父はしばらくの間、珍しいものを見るようにビクトールを眺めた。
「お前たちが何をしようが取って食ったりしないから安心しなさい。君の功績に対して我々が何もしないと思っているならこれが答えだ。リリアーナを差し出そう」
「リリアーナは物じゃない。彼女にだって意思がある」
「……その通りだな。いずれにせよ、あの時サンドラを止められなかった私には、何も言う権利がない。二人の自由にしていい。こちらは何もしない」
余りにもあっけない父の回答に、二人ともにわかには信じられずその場で立ち尽くした。
「いつかはこんな日がくるかとは思っていたが、余りにも早かったな。リリアーナはまだ学校すら卒業してないじゃないか。これからはどうするつもりだ?」
「学校はやめます。魔法について私が学べそうなことはこれ以上はないので。それより親に恵まれない子の福祉事業をやりたいんです。魔法の力を借りなくてもこれならできます」
サバサバしたリリアーナの口調に、父は目を細めた。そこから何らかの感情を読み取ろうとしたが、父が何を思ったか分からずじまいだった。
「さっさと結婚して学校もやめて、本当に何一つ親の思い通りにはならない子だな。サンドラが聞いたらどんな反応をするだろう」
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「それでもこの世界は生きている者のために存在する。色々言いたいことはあるが、お前たちのためにできることは解放してやることくらいだ。いいから行きなさい」
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「今からお前を公爵家から除籍する、平たく言えば『勘当』というやつだ。当然権利も義務も失われる。つまり相続権諸々もなくなることは分かってるな。その代わりにこの小切手を受け取りなさい。本来相続する額には届かないかもしれんが、今後一切の義務を負わなくて済むことを考えれば不当というほどではないだろう」
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リリアーナは街路樹が並ぶ遊歩道をビクトールと共にとぼとぼと歩きながら、父の話をした。
「私がもう少しちゃんとしてたらお母様も死なずに済んだのかしら。そしたらお父様も少しは愛してくれたかな。魔力が少ないのは生まれつきだから自分のせいではないと思おうと頑張って来たけどそろそろ疲れてきちゃった……」
ビクトールが何か言おうとして口を開きかけたが、それにも構わずリリアーナは一人話し続けた。
「もう親がどうのという年でもないんだけど、結局お父様もお母様も、愛しきれないし憎みきれない。いっそのことどっちかに振り切れていれば楽なのに」
「リリアーナ、もういい。十分よくやったよ」
ビクトールはリリアーナを自分の方へ引き寄せると、力を込めてぎゅっと抱きしめた。
「リリアーナの中にいたアレクサンドラは類まれなる才能を持った魔法使いとしての人格でしかない。本当の彼女は母として君のことを深く愛していたと思う。こないだはああ言ったが、野心だけであんな大それたことをしたとは思えない。だから、もし傷ついたのなら……」
「ううん、もうそれはいいの。だってあなたがいるもの。もう一度あの場に戻ったとしても同じ選択をすると思う。私はあなたと生きていくと決めたから、何度でもあなたを選ぶ」
リリアーナは顔を上げて青の瞳でビクトールを捕らえた。何度見てもこの青にはどきっとしてしまう。魅了の魔法が込められているのではと何度疑っただろう。
「今まで魔力が少ないとか何もできないとか散々言われたと思うけど、リリアーナの選択が今の結果だ。そうでなかったら多分俺も戻って来れなかった。アレクサンドラのレシピに改良を加えただけでは多分……無理だっただろうから」
相手の思念に干渉できる禁断の魔法薬のことを指していることはリリアーナにも分かった。本来ビクトールの存在が消えるはずだったのに、こうして二人並んで歩くことができるのは奇跡と言っても差し支えない。
「でもあれは私の魔法ではないわ。あなたの魔力とお母様の守護魔法のお陰」
「そんなことはどうでもいい。何を選択してどう行動するかが大事なんだと思う。持ってるものではなく、それをどう生かすかで人の幸福って決まるんじゃないかな……よく分からないけど」
ビクトールは自信がなさそうに最後の一言を付け加えると、幼子をあやすようにリリアーナの背中を優しく撫でた。温かい感触にリリアーナも安心して目を閉じたが、やがてそれだけでは物足りない衝動がむくむく芽生え始めた。
「あの、ビクトール……さっきの、もう一度してくれない?」
「さっきのって?」
「ほら、教会でやった……」
それを聞いた瞬間ビクトールは耳まで真っ赤になり思わず後ずさった。
「ばかっ、こんな人が見てるところでできるわけないだろ!」
「そうだよね、ごめん。今の忘れて」
「いや、忘れられない! ここじゃないところでもう一回!」
「本当にいいから! もう恥ずかしいじゃない!」
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