本業、フリーター。

Tady

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  序

 
 フリーターとは、「フリー・アルバイター」の略称であり、※15歳から34歳の若者(学生は含まれない)のうち、正社員・正職員以外の就労雇用形態(契約社員・パートタイマーなど)で生計を立てている人を指す。本当にその定義で合っているのかと疑う読者諸君は、調べてみてほしい。ウィキペディアには概ねこのように記載されているのだから。ウィキペディアを出典に利用するなというご指摘は、反撃の余地が無いのでご容赦願いたい。
 それにしてもフリーターというのは、厳密には年齢制限があることに違和感を覚えないだろうか。例えば普段アルバイトで生計を立てている人物が35歳以上だとしたら、その人物は定義上フリーターとは呼ばないということになる。単なる無職の人物、ということになるのだろうが、いかにも無遠慮な物言いである。「フリーター」という特別な呼称を用いることで、多少なりとも「無職」である人々のイメージダウンを防いでいる感はあるだろう。
 そもそもフリーターである人々の中には、他に目指している職業があるケースも多い。売れないお笑い芸人は、芸人としての収入だけでは生活出来ないのでアルバイトをする。司法試験や公認会計士などの難関国家資格の取得を目指しつつ、生活費を稼ぐ者だっているだろう。とにかく例を挙げればキリがない。その中には、35歳以上の人間だって一定数存在するはずだ。にもかかわらず、年齢のために世間からは無職と呼ばれ、フリーターという呼称の庇護下から外されるのは、理不尽な話に思えやしないだろうか。筆者は、救われない35歳以上の人間もきちんとフリーターの対象に加えるよう、この場をお借りして提案する次第である。


「……休日は何をして過ごされているのですか?」
「ああ、囲碁や将棋なんかを少々。昔から頭を使うのが好きな性分でして」
「まぁ、なんだかイメージつきますわ、多摩さんメガネかけてますし笑」
「はは、よく言われます。あとはカラオケなんか行きますよ。学生時代は友人と授業の空き時間に通って、腕を磨いたものです」
「カラオケ楽しいですもんね。何を歌われるんですか?」
「これといって決まった歌手とかジャンルはないんですがね…。強いて言えば、ノザンやぐう聖の曲とかでしょうか」
「古めの曲お好きなんですね、ノザンなんてもう半世紀経とうとしてますよ笑」
「親の影響でして…。ほら、車でかかってると、自然と覚えてしまうでしょ?」
「あは、確かに。ところで、学生時代の話が出ましたけど、どちらの大学出身なんですか?」
「H大の文学部出てます」
「H大って国立の…!やっぱり賢い方なんですね、羨ましいなぁ」

 場面は、都内某所の合コン会場にてリアルタイムで交わされた会話である。多摩という男の出身であるH大とは、地方では名の知れた国立大学で、世間でもそこそこの大学として認知されている。

「じゃあ、今お勤めなのも、やっぱり大きい企業さんなんですか?」

 女性は期待の眼差しで多摩を見つめる。多摩は瘦せてはいるが身長が高く、女性の視線は自然と上向く。対して多摩の目線は、おぼつかない。

「ん-、あぁ…。今は訳あってフリーターやってるんですよ」
「…フリーター、ですか…?」
「…ええ、まぁ。飽きっぽい性格なもんで、転職を繰り返してまして、ハハ……」
「…そうですか…」
「え、ええ……」

 多摩にとってはお決まりのパターンである。出身大学ではウケが良くても、現職で逆転負けを喫する流れだ。こうして、一人の連絡先すら入手することなく、多摩は会場を去るのであった。




※ちなみに、家事・通学・就業をせず、職業訓練も受けてない若者のことを「ニート」と呼ぶが、これも日本では15歳から34歳までを指すのだ。我が国は35歳以上の国民に対して非常に手厳しい。
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