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(元)人妻姫菜さん26歳。初デートです。
姫菜さん手作りの弁当と海
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リュウは詳しい自己紹介を手紙に書き、自分の写真を同封してポストに投函した。姫菜さんからの二通目の手紙はすぐに届いた。
お互いの趣味や近況などを楽しく書き合い、3往復目くらいの手紙で、リュウは自分の電話番号を書き、姫菜さんの声を聞いてみたいと書き添えた。
姫菜さんから、すぐに電話がかかってきた。
「もしもし?リュウさんですか?」姫菜さんはなかなか可愛いらしい声の持ち主であった。
「姫菜です。初めまして。」ほわ~っとした喋り方でゆっくりと話す姫菜さんであった。
「お話しするのは初めてですね。手紙では、あんなにたくさんお話ししたお友達なのに。」
「くすっ。ちょっと不思議な感じです。なんだか照れくさいですね」姫菜さんのテレッテレッとした様子が伝わってくる。
この日を境に、リュウと姫菜さんの交流は、手紙から主に電話がメインとなった。やがて「会いましょう」ということになった。
リュウの下宿風アパートは、最寄り駅からは少し内陸部に歩かねばならないが、最寄駅自体はわりと海岸に近い。海岸には夏は中々の賑わいを見せる海水浴場もある。
海水浴場には、砂浜から離れた道路に近い側に、木製のいい感じの、長~いベンチが段々状に設置されている。そこから海を見て、それからアパートに遊びに来ませんか、という流れになった。
「じゃあ、私お弁当を作っていきますね。」姫菜さんが優しい事を言ってくれた。
「お料理は好きなんです。あんまり上手ではありませんが。」
「ふふっ、あんまり期待しちゃダメですよ。」電話の向こうの姫菜さんは、楽しそうだ。
「じゃあ、楽しみにしていますね。雨が降らないといいんですけど。」そう言って姫菜さんは電話を切った。
デート当日は土曜日であった。約束の時間にきちんと合わせてリュウは駅に行き、駅建物を出たところにある、大きな周辺案内図板の前で待った。今朝打ち合わせた通りの場所である。お互いに写真交換して顔はわかっているつもりだが、一応目印ということで、白いTシャツを着ている。
電車が駅に入って来て停まり、加速して駅を出て行った。ほどなくして、駅建物からわらわらと乗客が歩き出てきた。リュウはドキドキしながら待った。
駅から出てくる人々は皆そのまま真っ直ぐ歩いて駅前から去っていくのだが、中にカーブを描くようにして人の流れから抜け出しこちらに向かって来る女子がいる。
「あの人なのか?あの人なのかなぁ?」心の中で呟き、心臓の鼓動を速める。
あまり見ないようにしつつ待っていると、思った通りその女子は自分の前で立ち止まった。
「こんにちは。」彼女はバスケットを両手で持ち、体を少し傾げるようにして言った。
「リュウさん、ですよね?」
「雲城院姫菜です。初めまして。」
「って、お電話ではたくさん話していて、私たちもうとっくにお友達なんですけど。」
「ふふっ、何だか変ですよね。お友達なのに、初めまして、なんて。」
姫菜さんは、バスケットを持っていない方の手を口の近くに添えて、笑った。
「イメージ通りの方ですね。」姫菜さんは、リュウを見て言った。少なくともリュウの風貌にガッカリはしていないように見える。
一方のリュウはというと。
「あれ、なんかちょっと変な女の人来たな…。」というのが第一印象であった。「写真は可愛かったのになぁ。」
なんというか微妙にダサいのである。まず髪型である。前髪も容赦無く全部まとめ上げて、頭のてっぺんで団子状にしている。耳の前あたりだけ横髪を長く垂らしている…ということもない。全部団子にしている。男が最も萎えてしまう髪型の一つではなかろうか。
ちなみにこの当時は猿っぽいベリーショートにしている女子が結構いたが、これもリュウが戦意喪失してしまう髪型の一つであった。
リュウは男なのでメイクのことはよくわからないが、顔もダサいなと思った。
そして履いているものである。キュロットである。リュウがもっとも可愛くないと思う女子のファッションの一つである。長さも膝くらいまであっていわゆる「絶対領域」は全く見えない。
「まぁ、姫菜さんをがっかりさせないようにしなきゃな。」リュウは姫菜さんのバスケットを持ってあげ、一緒に海へと歩き出した。がっかり感を気取られないよう、努めて明るく、あれこれ話をした。
がっかり感はいい方向に働いてくれ、緊張を感じず気軽に会話をすることができた。会話を弾ませていると、海岸にはあっというまに着いた。
お互いの趣味や近況などを楽しく書き合い、3往復目くらいの手紙で、リュウは自分の電話番号を書き、姫菜さんの声を聞いてみたいと書き添えた。
姫菜さんから、すぐに電話がかかってきた。
「もしもし?リュウさんですか?」姫菜さんはなかなか可愛いらしい声の持ち主であった。
「姫菜です。初めまして。」ほわ~っとした喋り方でゆっくりと話す姫菜さんであった。
「お話しするのは初めてですね。手紙では、あんなにたくさんお話ししたお友達なのに。」
「くすっ。ちょっと不思議な感じです。なんだか照れくさいですね」姫菜さんのテレッテレッとした様子が伝わってくる。
この日を境に、リュウと姫菜さんの交流は、手紙から主に電話がメインとなった。やがて「会いましょう」ということになった。
リュウの下宿風アパートは、最寄り駅からは少し内陸部に歩かねばならないが、最寄駅自体はわりと海岸に近い。海岸には夏は中々の賑わいを見せる海水浴場もある。
海水浴場には、砂浜から離れた道路に近い側に、木製のいい感じの、長~いベンチが段々状に設置されている。そこから海を見て、それからアパートに遊びに来ませんか、という流れになった。
「じゃあ、私お弁当を作っていきますね。」姫菜さんが優しい事を言ってくれた。
「お料理は好きなんです。あんまり上手ではありませんが。」
「ふふっ、あんまり期待しちゃダメですよ。」電話の向こうの姫菜さんは、楽しそうだ。
「じゃあ、楽しみにしていますね。雨が降らないといいんですけど。」そう言って姫菜さんは電話を切った。
デート当日は土曜日であった。約束の時間にきちんと合わせてリュウは駅に行き、駅建物を出たところにある、大きな周辺案内図板の前で待った。今朝打ち合わせた通りの場所である。お互いに写真交換して顔はわかっているつもりだが、一応目印ということで、白いTシャツを着ている。
電車が駅に入って来て停まり、加速して駅を出て行った。ほどなくして、駅建物からわらわらと乗客が歩き出てきた。リュウはドキドキしながら待った。
駅から出てくる人々は皆そのまま真っ直ぐ歩いて駅前から去っていくのだが、中にカーブを描くようにして人の流れから抜け出しこちらに向かって来る女子がいる。
「あの人なのか?あの人なのかなぁ?」心の中で呟き、心臓の鼓動を速める。
あまり見ないようにしつつ待っていると、思った通りその女子は自分の前で立ち止まった。
「こんにちは。」彼女はバスケットを両手で持ち、体を少し傾げるようにして言った。
「リュウさん、ですよね?」
「雲城院姫菜です。初めまして。」
「って、お電話ではたくさん話していて、私たちもうとっくにお友達なんですけど。」
「ふふっ、何だか変ですよね。お友達なのに、初めまして、なんて。」
姫菜さんは、バスケットを持っていない方の手を口の近くに添えて、笑った。
「イメージ通りの方ですね。」姫菜さんは、リュウを見て言った。少なくともリュウの風貌にガッカリはしていないように見える。
一方のリュウはというと。
「あれ、なんかちょっと変な女の人来たな…。」というのが第一印象であった。「写真は可愛かったのになぁ。」
なんというか微妙にダサいのである。まず髪型である。前髪も容赦無く全部まとめ上げて、頭のてっぺんで団子状にしている。耳の前あたりだけ横髪を長く垂らしている…ということもない。全部団子にしている。男が最も萎えてしまう髪型の一つではなかろうか。
ちなみにこの当時は猿っぽいベリーショートにしている女子が結構いたが、これもリュウが戦意喪失してしまう髪型の一つであった。
リュウは男なのでメイクのことはよくわからないが、顔もダサいなと思った。
そして履いているものである。キュロットである。リュウがもっとも可愛くないと思う女子のファッションの一つである。長さも膝くらいまであっていわゆる「絶対領域」は全く見えない。
「まぁ、姫菜さんをがっかりさせないようにしなきゃな。」リュウは姫菜さんのバスケットを持ってあげ、一緒に海へと歩き出した。がっかり感を気取られないよう、努めて明るく、あれこれ話をした。
がっかり感はいい方向に働いてくれ、緊張を感じず気軽に会話をすることができた。会話を弾ませていると、海岸にはあっというまに着いた。
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