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3話
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あれから十年。
「もうお見送りは終わったのかい?」
「ええ、今帰ってきたところよ」
「いつも見送り任せてしまってごめんね、感謝しているよ」
「いいのよ。子の世話は私の仕事だもの」
私は今、有力貴族の出の男性と夫婦となり、裕福に生活できている。
「でも任せっきりは申し訳ないよ、二人の子なんだし」
「あなたってちょっと気遣いが過剰なところがあるわよね」
「ごめん……」
「あっ、ごめんなさい、言い方が悪かったわ。何も責めているわけじゃないの。むしろ感謝してる、いつも色々気にかけてくれて」
アドレフスクには捨てられてしまったけれど、あの時遊んで面倒をみていた子の親に当たる親戚の人が彼を紹介してくれてこの縁を得ることができた。
「なら良かったよ。面倒臭かったらごめんね、こんな質で」
「いいの」
「じゃあ僕は今からちょっと書類の整理をしてくるから、君はゆっくりしていてね」
「え。料理は」
「今日は僕が作るよ。整理が終わってから」
「……いいの?」
「もちろん! 家事全部を押し付けるような真似はしないよ」
彼と初めて顔を合わせた日、この出会いはきっと未来へ繋がると感じた。
それは彼も同じだったようで。
後に判明したことだが、初日から私と彼は共に行く未来を予感していたようだった。
そう、二人の心はその時既に重なっていたのである。
「ありがとう。あなたの料理好きなの、とっても美味しいから」
そして今も、私たちは仲良しのままだ。
第一子の世話は忙しいけれど。
それでもなお夫婦として前向きな関係を築けている。
そうそう、そういえば。
アドレフスクはあの後酒場で知り合った女性に惚れ込み資産のほとんどを費やして貢ぎ続けていたようだが、ある時その女性に本命の男性がいることが判明し、それによって彼は壊れてしまったらしく――情緒不安定になっていた彼は、酒場に入ろうとした女性を背後から襲って何度も殴り死亡させてしまったそうだ。
その女性というのが、実は裏社会のボスの娘だった。
そのためアドレフスクはボスから復讐されることとなってしまった。
彼は一部の内臓を裏取引用に抜かれたうえ戦場の一番前へと送られて――そのまま死へと突き進むこととなったそうだ。
つまり、彼はもうこの世にはいないのである。
手を出した相手が悪かった、の典型的な事例だ。
◆終わり◆
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