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前編
しおりを挟む私は既に数回婚約破棄された。
でも……この国には『十回婚約破棄されると神になれる』という伝説があるので、私は今それに挑戦してみているところだ。
――そして八回目の婚約破棄の日が来る。
「お前には飽きた、よって婚約は破棄とする」
「あ、はい。そうですよね。そんな気がしていました」
「な……」
「でも大丈夫です! そういうことなら、私はそれで構いません」
「何だと!? 婚約破棄をすんなり受け入れるだと!?」
「はい。だって貴方、他に仲良しな女性がいますよね? だから私は消えます」
「何ッ!? 知っていただと!?」
あてずっぽう言っただけなのだが。
「い、慰謝料なら払う! だから大事にしないでくれ!」
「しませんよ」
「な、何だ、って……そ、そうか、なら助かる」
こうして私は婚約破棄された。
これで八回目だ。
――そして九回目は。
「俺さ、好きな人できたから、あんたとは終わりにするわ」
案外すぐに訪れた。
「え。先月ですよね、婚約したの」
「でももうそういう気分じゃないんだ」
「そう……」
「分かってくれた? じゃ、そういうことで。さよなら」
「はい、さようなら」
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