十回婚約破棄されると神になれる、という伝説は本当なのか!? 試してみることにしました。

後編

　婚約して一ヶ月くらいしか経たないタイミングでのお別れだった。

　――そうして迫ってくる、十度目の婚約破棄。

　運命の十度目だ。

「貴様とはこれ以上はやっていけん！」

　もしかしてこれは婚約破棄では!?　――もう分かってしまう、定番の流れだから。

「どういうところがですか？」
「パッとしないところ！」

　即答されて、落ち込みそうになる。
　でも今はそれどころでない。
　たとえ私というものを否定されても、夢のために、それは仕方のないことだ。

　十度目の婚約破棄、それが一番欲しいもの。

「ああ……そうですか、まぁ、確かにそうですよね。私、結構地味ですし……すみません」
「分かっているのだな。なら話は早い。婚約は破棄とする!!　……そういうことだ、分かったな」
「……はい」
「何をしている？」
「え」
「さっさと去れ。もう関係は終わったのだから」

　私は一礼して彼の前から去った。

　――その日の晩、私は、本当に神となった。

　巨大な翼が生えて空へ飛び立っていくことができた。

　……あの地上にはもう戻らない。

　でも、婚約破棄してくれた人たちには感謝している。だって彼らのおかげでこうして神になれたのだから。ある意味、彼らが私の夢を叶えてくれたとも言えるのだ。

　これからは神として生きてゆく。


◆終わり◆