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1話
しおりを挟む上手くいっている婚約者がいたのだが――。
「お前の婚約、破棄しておいたぞ」
「ええっ!?」
行動に時折問題のある父からある日突然そんなことを言われてしまった。
「オハイイといったか? あいつ、くず男だろう? 大人しく頼りない、どうしようもないようなやつだろう」
父が何を言っているのかよく分からない。
だってオハイイは何の問題もない人なのだ。
ただ、嫌な予感だけが、身体の内側を巡る。
「ま、待って、何を……」
「だがお前からだと言いづらいだろうからな、わたしから言っておいたぞ」
「えっ……」
嫌な予感が最大にまで膨らむ。
それはまるで割れる直前の異様なほどぱんぱんになった風船のよう。
「婚約は破棄する、と!」
やはりか、なんて、冷静に思う余裕もなく。
「なんてこと!! それ本当に言ったの!?」
ただ叫んだ。
「当たり前だろう、そんな嘘を敢えてつく理由がどこにあるんだ」
「最低!!」
「はぁ? 何を言っている。良い行いをしてやっただけじゃないか、これは協力だ」
「そんなことを勝手に言うなんて! 最低! 酷すぎるわ父さん!」
感情を抑えきれず、私はそのまま家を飛び出した。
オハイイのところへ行きたい。今はただ、直接彼に会って、本当のことを明かし話をしたい。その思いだけにこの心は満たされていた。だからこそ私は家を飛び出したし必死になって走ったのだ。一刻も早く彼と会わなくては、そういう思いが強かった。
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