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3話
しおりを挟む「親と喋ってたんだ、お父さんから連絡が来るって何かちょっとおかしいよなって」
「あ……」
「そういうことなら親にも説明するよ、事情」
「でも……迷惑、たくさん……かけてしまって……」
「いいよいいよ大丈夫、そんな泣かなくても大丈夫だから、ね? じゃ、取り敢えずうちに入っていってよ」
オハイイは変わらず優しかった。
「……いいの?」
「うん、いいよ!」
こうして私はしばらくオハイイの家に滞在することとなった。
「貴女がアイリーさんね? 会いたかったわ!」
「しばらくここにいると聞きましたぞ、どうかよろしく」
オハイイの両親も私に対してもとても優しくて。
「お茶、淹れてくるわね!」
「新聞ですがな、これでよければ、ぜひどうぞ」
ここで一生暮らしたい、そんな風に思ったほどであった。
◆
あれから九ヶ月、私はオハイイと結婚した。
厄介な父とは縁を切った。
というのも、途中何度かここの家の前へやって来て夜な夜な「娘を返せ!」とか「人さらい一家め!」とか叫んでくるというような奇行があったのだ。
それで、これはもう駄目だ、と覚悟が決まって。
その事件の後から縁を切る方向で法的にも手続きを進め、色々苦労もあったけれど、私はついに父とほぼ他人といった状態にまでなることができた。
ちなみにその父はというと、今では自宅前にて奇行を繰り返す少々問題行動の多い人として地域で有名になってしまっているのだそう。
恥ずかしいことだが、まぁ、こればかりは仕方ないか。
注意して治るものでもないし。
娘に父を管理する責任はないわけだし。
ただ、恐らく父にはもう二度と穏やかな日々は訪れないだろう。
彼はきっと狂気の中で生きていく。
いつまでもずっと。
これから先、いつか死ぬ日まで、永遠に。
彼は狂気の海に溺れてしまった。
きっともう助かることはない。
◆終わり◆
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