不思議なことってあるものだなぁ、と思いつつ、幸せな未来への道を模索し続けます!

四季

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後編

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 ◆


 魔族の彼ウィットにイエスかノーかを答える日が近づいてきた。
 その日私は彼と共にちょっとした買い出しに行っていたのだが、そこで偶然女連れのヴェットランに出会ってしまう。

「うわ、もう男連れてやがる」

 ヴェットランは私に汚らわしいものを見るような視線を向けてきた。

「お似合いだな、だっさくて汚い男」

 彼はさらりとウィットのことを悪く言った。

 何か言い返そうとした。このまま黙っていては駄目だと思って。私が馬鹿にされるのはまだ良いけれどウィットまで馬鹿にされるのは耐えられないし、彼の名誉のためにもここで黙っているわけにはいかないと思って。

 しかしウィットは「言わせておけばいい」と言って私を止めた。

「行こう」
「あ、そうですね」

 ウィットは器用に切り抜けた。

「あの男は?」
「元婚約者です」

 ヴェットランにあれ以上絡まれなかったのは幸運だった。

「なんと! 婚約者がいたのか!」
「はい。けどもう彼は私を愛してなどいません。すべてはもう終わってしまったことなのです」
「そんな、どうして……」
「彼は私より良い人を見つけたのでしょう」

 溜め息混じりに言えば、彼はふっと笑みを浮かべる。

「幸運だな、こちらとしては」

 そんなことを言われるなんてちっとも思わなかったので驚いたけれど。

「なかなか言いますね……」

 意外なことに、自然な言葉を発することができた。

 彼の前では自然体でいられている。
 今になってそう気づいた。

 段々ウィットに惹かれていく私がいる。


 ◆


 結論から言おう、私はウィットの妻になった。

 彼と出会った時は何も考えていなかったけれど、一緒に過ごすうちに情が芽生えて、それで彼と共に生きる道を選んだ。

 出会ってから比較的短い期間での結婚。
 しかも異種族でのもの。
 それはまだまだ珍しいことであり、中には「大丈夫?」とか「やっていけるの?」とか言ってくる人もいた。

 でも私は彼との道を選んだことを後悔してはいない。

 彼とならきっと乗り越えてゆける。

 ちなみにヴェットランはというと、婚約した女性に浮気されたうえ子まで作られてしまい、精神が崩壊したそうだ。

 ……ま、知ったこっちゃないが。


◆終わり◆
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