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私が嫉妬深いのか。いや違う。きっと誰だって気にする。たとえあまり気にしないと思っている人がいたとしたって、いざこの状況になれば不快感を覚えるはず。目の前で婚約者が別の女と身を寄せ合っていたら、誰だって、良い気はしないはずだ。
そんなことを考えていると、リシリアがフルベルから離れた。感情が読めない顔つきを保ったまま、流れるような足取りでこちらへ向かってくる。そして、私の目の前で足を止めた。
「あたしとフルベル様が幼馴染みというのは事実ですわ」
彼女は厚みのある唇を動かして告げてくる。
「……貴女は幼馴染みとこんな風にいちゃつくのですか?」
「えぇ、これがあたしたちのスキンシップなんですの。でも、周囲への配慮として、他人がいるタイミングではいちゃつかないようにしていますの。偉いでしょう」
自分で「偉いでしょう」と言ってしまうというのは、ある意味凄い。
「今回はそちらが勝手に入ってきたから悪かったんですのよ」
「私のせいだと言うのですか」
「えぇ! そういうことですわ。分かったなら、さっさと帰ってくださるかしら」
赤毛の長い髪を下ろしているリシリアは、僅かに顎を上げ、見下すように視線を向けてくる。
リシリアは多分私より自分の方が有利な立場にあると気づいているのだろう。もっとも、それは事実かもしれない。だってフルベルは、私にはあんな風に触ってこないから。彼女はそれを察していて、こんな風に見下してきているのだろう。
けれども、彼の婚約者なのは私だ。
私にだって発言権はある。
「いいえ、帰りません」
私ははっきりと言い放つ。
「私は彼の婚約者です、口を挟む権利があります」
少し食事をしただとか時折会っているだとか、その程度なら私もこんなに口を挟みはしなかったかもしれない。幼馴染みだしたまには仕方ないな、と捉えた可能性もある。
けれども、寝室で二人でいちゃいちゃしていたとなると話は別。
それは何も言わず見逃せることではない。
そんなことを考えていると、リシリアがフルベルから離れた。感情が読めない顔つきを保ったまま、流れるような足取りでこちらへ向かってくる。そして、私の目の前で足を止めた。
「あたしとフルベル様が幼馴染みというのは事実ですわ」
彼女は厚みのある唇を動かして告げてくる。
「……貴女は幼馴染みとこんな風にいちゃつくのですか?」
「えぇ、これがあたしたちのスキンシップなんですの。でも、周囲への配慮として、他人がいるタイミングではいちゃつかないようにしていますの。偉いでしょう」
自分で「偉いでしょう」と言ってしまうというのは、ある意味凄い。
「今回はそちらが勝手に入ってきたから悪かったんですのよ」
「私のせいだと言うのですか」
「えぇ! そういうことですわ。分かったなら、さっさと帰ってくださるかしら」
赤毛の長い髪を下ろしているリシリアは、僅かに顎を上げ、見下すように視線を向けてくる。
リシリアは多分私より自分の方が有利な立場にあると気づいているのだろう。もっとも、それは事実かもしれない。だってフルベルは、私にはあんな風に触ってこないから。彼女はそれを察していて、こんな風に見下してきているのだろう。
けれども、彼の婚約者なのは私だ。
私にだって発言権はある。
「いいえ、帰りません」
私ははっきりと言い放つ。
「私は彼の婚約者です、口を挟む権利があります」
少し食事をしただとか時折会っているだとか、その程度なら私もこんなに口を挟みはしなかったかもしれない。幼馴染みだしたまには仕方ないな、と捉えた可能性もある。
けれども、寝室で二人でいちゃいちゃしていたとなると話は別。
それは何も言わず見逃せることではない。
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