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9話「休憩」(1)
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雑貨屋を思う存分見て回った後、私とトウロウは店から出て散策を再開する。
面白い品がたくさんあるところへ行ったから、思わず色々見てしまった。そして、予想外に時間を消費してしまった。だが、まだ夕方にはなっていない。実際の時間は体感している時間より進んでいないのかもしれない。
周りの人たちは通り過ぎる時さりげなく私のことを見る。
気づかれないように見ているつもりなのだろうが、見られる側の私からすれば丸分かり。いちいち因縁をつけることはないので、気づかないふりをしている。だが、気づかないなんてことはない。
人間はそんなに珍しいのだろうか。
こんな平凡な女が、道行く人にいちいち見られるような存在なのだろうか。
「マコトさん?」
「……えっ。あ、はい。ごめんなさい。何でしょう」
急に名を呼ばれて戸惑う。
「何ぼーっとしてるんですか」
いきなりそんな言い方する!? と思ったが、それを口にはしなかった。
「ごめんなさい。その……見られてるなぁって思って」
私がぼんやりしていたことは事実だ。だからそのことを純粋に述べた。他の理由を言っても良かったのだが、それらしい理由を考えることはできなかったので、そのままのことを述べることにしたのだ。
「……見られている?」
トウロウは首を傾げる。
「やっぱり……私が人間だからですかね」
「それはまぁ、そうかもしれないですねー。人の子は珍しいですから」
分かっているのだ、私だって。人間が珍しいこの世界で人間である私が見られるのは当然のことだと。それは何もおかしなことではない。こちらが変に意識してしまっているだけで、見る方に罪があるわけではないのだ。
「で、次はどこに行きますー? まぁ、僕はこのまま帰ってもいいですけど」
「そうですね。じゃあ帰りましょうか」
「え。帰るんですか。ちょっと意外でした」
私が「帰らない」と言うことを前提にそんなことを言っていたのか……。
「歩くのに少し疲れたので……」
「あぁ、なるほど。そういうことでしたかー。じゃ、帰りに団子屋にでも寄ります?」
「……アカリさんのところの隣の?」
「そうですそうです」
「それは良いですね! 行ってみたいです!」
アカリ夫婦が営業する宿の隣に団子屋がある。そこが、アカリが言っていたヤギの男性がいた店。つまり、私の祖父がかつていた場所、ということ。そう思って行くと、何となく行くのとは気分が大きく違ってくる。
「いらっしゃーい」
その日、団子屋は空いていた。
入っていった私とトウロウを迎えてくれたのは、白ヤギの女性。
「ま! 可愛らしいお客様!」
白ヤギの頭部を持つ団子屋の店員は、なぜか頬を赤く染めつつ迎えてくれる。
「どうもー。休憩したいんですけど」
私が入ってすぐのところで戸惑っていると、トウロウが先に店の奥へと歩いていった。彼はこの店に来ることに慣れているらしい。店内に入っていくことに躊躇いなんてないようだった。
面白い品がたくさんあるところへ行ったから、思わず色々見てしまった。そして、予想外に時間を消費してしまった。だが、まだ夕方にはなっていない。実際の時間は体感している時間より進んでいないのかもしれない。
周りの人たちは通り過ぎる時さりげなく私のことを見る。
気づかれないように見ているつもりなのだろうが、見られる側の私からすれば丸分かり。いちいち因縁をつけることはないので、気づかないふりをしている。だが、気づかないなんてことはない。
人間はそんなに珍しいのだろうか。
こんな平凡な女が、道行く人にいちいち見られるような存在なのだろうか。
「マコトさん?」
「……えっ。あ、はい。ごめんなさい。何でしょう」
急に名を呼ばれて戸惑う。
「何ぼーっとしてるんですか」
いきなりそんな言い方する!? と思ったが、それを口にはしなかった。
「ごめんなさい。その……見られてるなぁって思って」
私がぼんやりしていたことは事実だ。だからそのことを純粋に述べた。他の理由を言っても良かったのだが、それらしい理由を考えることはできなかったので、そのままのことを述べることにしたのだ。
「……見られている?」
トウロウは首を傾げる。
「やっぱり……私が人間だからですかね」
「それはまぁ、そうかもしれないですねー。人の子は珍しいですから」
分かっているのだ、私だって。人間が珍しいこの世界で人間である私が見られるのは当然のことだと。それは何もおかしなことではない。こちらが変に意識してしまっているだけで、見る方に罪があるわけではないのだ。
「で、次はどこに行きますー? まぁ、僕はこのまま帰ってもいいですけど」
「そうですね。じゃあ帰りましょうか」
「え。帰るんですか。ちょっと意外でした」
私が「帰らない」と言うことを前提にそんなことを言っていたのか……。
「歩くのに少し疲れたので……」
「あぁ、なるほど。そういうことでしたかー。じゃ、帰りに団子屋にでも寄ります?」
「……アカリさんのところの隣の?」
「そうですそうです」
「それは良いですね! 行ってみたいです!」
アカリ夫婦が営業する宿の隣に団子屋がある。そこが、アカリが言っていたヤギの男性がいた店。つまり、私の祖父がかつていた場所、ということ。そう思って行くと、何となく行くのとは気分が大きく違ってくる。
「いらっしゃーい」
その日、団子屋は空いていた。
入っていった私とトウロウを迎えてくれたのは、白ヤギの女性。
「ま! 可愛らしいお客様!」
白ヤギの頭部を持つ団子屋の店員は、なぜか頬を赤く染めつつ迎えてくれる。
「どうもー。休憩したいんですけど」
私が入ってすぐのところで戸惑っていると、トウロウが先に店の奥へと歩いていった。彼はこの店に来ることに慣れているらしい。店内に入っていくことに躊躇いなんてないようだった。
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