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9話「休憩」(2)
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「トウロウさんもご一緒でしたのね! そちらのお嬢さんはどなた?」
「マコトさんです」
「マコト……さん……?」
白ヤギの女性は可愛らしい雰囲気を醸し出している。胸のところが合わせになった桜色の服を着ているのだが、その服は完全な和服ではなく、和服みたいなワンピースといった感じ。頭に生えているツノの根元に桜の髪飾りがついているところも、女の子らしい。
「知り合いです。アカリさんが紹介してくれた、人の子で」
「ま! やっぱりそうでしたのね! 人の子!」
「お茶飲みたいんですけどー。頼めます?」
「もっちろん! 好きな席に座っていて下さるかしら!」
「分かりました」
私はトウロウに導かれて店の奥へと進んでいく。そして、一段上がって座れるようになっているところに座った。その席は座るところが畳になっているので、靴は脱がなくてはならない。でも、落ち着ける雰囲気の席だから、靴を脱ぐ手間なんて気にならない。
「お待たせですわー! お茶どうぞ」
着席から数十秒、白ヤギの女性が緑色のお茶が入った湯呑みを持ってきてくれた。そして、彼女はそれを、流れるような手つきで黒に近い茶色のテーブルに置いてくれる。
「トウロウさん、何をお食べになるんですの?」
「団子でー」
「マコトさんは何がお好きかしら?」
「えっと……では、トウロウさんと同じもので」
メニューも何もないので選べない。そこで私はトウロウと同じものを注文しておくことにした。トウロウが気に入っているものなら不味くて食べられないということはないだろう、という考えもあっての選択だ。
だが、そこで想定外のことが起こった。
「ま! 素敵! 二人同じものを食べるなんて、青春ですわーっ!」
白ヤギの女性が急にハイテンションになったのだ。
手を頬に当てて、興奮している。
「サクラさん、あのー、面倒臭いので騒がないでもらえますか?」
「そうでしたわ! ごめんなさい! 団子お持ちしますわね!」
そして私とトウロウは二人になる。
「あの人、サクラさんは、男女を見るとすぐに盛り上がるんですー。なんか、そういうのが好きみたいで。悪い人じゃないんですけどね……」
ヤギに見えたが、恋に恋する乙女なのだろうか。
「で、疲れは大丈夫ですか」
トウロウが湯呑みを傾けつつ尋ねてくる。
さりげなく気遣ってくれていることに気がついて、私はかなり驚いた。
モテる男は相手への気遣いが凄い、と聞いたことがある。とはいえ、それが事実かどうか確かめたことはなかった。だが今それを経験して、改めて確信した。気を遣ってもらって嫌な感じはしない、と。むしろ嬉しさを感じるぐらいだ。
「あ、はい。お気遣いありがとうございます」
「いえいえ。じゃ、早速、お茶でも飲んでゆっくりしましょうー」
たまには良いところもあるじゃないか、トウロウ。
ふとそんなことを思ったり。
「サクラさんでしたっけ……あのヤギの方、可愛らしい方ですね」
「そうですねー。ま、僕の好みとは違いますけど」
「大人っぽい方が好きなんでしたっけ?」
「あーはい。西洋のお人形さんみたいな人が好みなんですー」
お人形さんて。言い方が。
「何か理由があるんですか?」
「小さい頃持ってたんですよー。金髪美人の人形を」
「へぇー。だからですか」
穏やかな時が流れる。
平和としか言い様がない。
「マコトさんです」
「マコト……さん……?」
白ヤギの女性は可愛らしい雰囲気を醸し出している。胸のところが合わせになった桜色の服を着ているのだが、その服は完全な和服ではなく、和服みたいなワンピースといった感じ。頭に生えているツノの根元に桜の髪飾りがついているところも、女の子らしい。
「知り合いです。アカリさんが紹介してくれた、人の子で」
「ま! やっぱりそうでしたのね! 人の子!」
「お茶飲みたいんですけどー。頼めます?」
「もっちろん! 好きな席に座っていて下さるかしら!」
「分かりました」
私はトウロウに導かれて店の奥へと進んでいく。そして、一段上がって座れるようになっているところに座った。その席は座るところが畳になっているので、靴は脱がなくてはならない。でも、落ち着ける雰囲気の席だから、靴を脱ぐ手間なんて気にならない。
「お待たせですわー! お茶どうぞ」
着席から数十秒、白ヤギの女性が緑色のお茶が入った湯呑みを持ってきてくれた。そして、彼女はそれを、流れるような手つきで黒に近い茶色のテーブルに置いてくれる。
「トウロウさん、何をお食べになるんですの?」
「団子でー」
「マコトさんは何がお好きかしら?」
「えっと……では、トウロウさんと同じもので」
メニューも何もないので選べない。そこで私はトウロウと同じものを注文しておくことにした。トウロウが気に入っているものなら不味くて食べられないということはないだろう、という考えもあっての選択だ。
だが、そこで想定外のことが起こった。
「ま! 素敵! 二人同じものを食べるなんて、青春ですわーっ!」
白ヤギの女性が急にハイテンションになったのだ。
手を頬に当てて、興奮している。
「サクラさん、あのー、面倒臭いので騒がないでもらえますか?」
「そうでしたわ! ごめんなさい! 団子お持ちしますわね!」
そして私とトウロウは二人になる。
「あの人、サクラさんは、男女を見るとすぐに盛り上がるんですー。なんか、そういうのが好きみたいで。悪い人じゃないんですけどね……」
ヤギに見えたが、恋に恋する乙女なのだろうか。
「で、疲れは大丈夫ですか」
トウロウが湯呑みを傾けつつ尋ねてくる。
さりげなく気遣ってくれていることに気がついて、私はかなり驚いた。
モテる男は相手への気遣いが凄い、と聞いたことがある。とはいえ、それが事実かどうか確かめたことはなかった。だが今それを経験して、改めて確信した。気を遣ってもらって嫌な感じはしない、と。むしろ嬉しさを感じるぐらいだ。
「あ、はい。お気遣いありがとうございます」
「いえいえ。じゃ、早速、お茶でも飲んでゆっくりしましょうー」
たまには良いところもあるじゃないか、トウロウ。
ふとそんなことを思ったり。
「サクラさんでしたっけ……あのヤギの方、可愛らしい方ですね」
「そうですねー。ま、僕の好みとは違いますけど」
「大人っぽい方が好きなんでしたっけ?」
「あーはい。西洋のお人形さんみたいな人が好みなんですー」
お人形さんて。言い方が。
「何か理由があるんですか?」
「小さい頃持ってたんですよー。金髪美人の人形を」
「へぇー。だからですか」
穏やかな時が流れる。
平和としか言い様がない。
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