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16話「明ける」(2)
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「あ、それと。ネズミはマッチャのやつが警備隊に突き出しといたからね」
「そうだったんですか……!」
マッチャ、さりげなく頼もしい! なんて思ったり。
「マコト、そろそろ起きられるかい?」
言われて、私は気づいた。
いつまでも布団に入って寛いでいるわけにはいかないのだということを。
「は、はい! すぐ起きます!」
慌てつつ布団の中から飛び出す――が、次の瞬間転倒してしまった。
足下に何かがあったというわけではないのだけれど。
「あぁいや、べつに急ぎではないんだけどね……」
「大丈夫ですっ!」
何もないところで転ぶなんて最悪! かっこ悪すぎ! 目撃者がアカリだけだとしても……さすがにこれは情けない。慌てて立ち上がろうとしてその場で転倒なんて、なかったことにしたい!
もちろん、過ぎたことをなかったことになんてできないことは知っている。一度起きてしまったことは後から消すことなんてできないと理解している。
でも!
それでも!
……どうか、この恥ずかしい出来事を消し去ってほしい。
「マコト、無理しちゃ駄目だよ。立てないならそこで座って……」
「大丈夫です! 大丈夫ですから!」
「……あのねぇ、まずは落ち着いて」
せっかくの雰囲気が台無し。
ドタバタコントみたいになってしまった。
「布団を片付けるから、取り敢えず少しだけでも移動できるかい?」
「あっ……は、はい。そうですよね。こっちに行ったら良いですか」
「その辺りでいいよ」
「は、はい。分かりました」
直撃したわけではないけれど、軽く打った腰がまだじんじんと痛む。
そんな状態のまま、私はアカリの片付け作業を見ていた。
アカリは畳の床に敷かれていた布団を慣れた手つきで片付けていく。一人でなのに、まったく苦労していない。指先の動き、体の使い方、重心の位置。すべてが自然。自然な状態で保てているからこそ、スムーズに片付けられるのだろう。
その日の午前中、私は通りにある病院へと向かうことになった。搬送されて以来会えていないトウロウに会うために、である。そして、病院へはアカリが同行してくれることになった。それは、私が一人で道を歩くことにならないようにという、彼女なりの配慮があっての選択であった。
私自身も、アカリが同行してくれることになって良かった、と思っている。
もしアカリが同行を提案してくれなかったとしても、こちらから同行してほしいと頼んでいたかもしれない。
この世界とて悪魔のテーマパークではあるまい。アカリやマッチャ、トウロウのように、人の子である私に対しても穏やかに接してくれる者も多い。彼ら彼女らは、決して悪い存在ではない。ただ、中には人の子を悪用しようとする悪い輩もいる。それもまた事実である。それらに対して抱いた恐怖というのは、さすがに一晩では消えない。実際に刺された者を目にしたから、なおさら。
「アカリさん、一緒に来て下さって……ありがとうございました」
道を歩く時、他人からの視線が気になって仕方がない。が、今は隣にアカリがいるから、他者への恐怖を感じることはなかった。
「気にすることはないよ! 悪い輩に絡まれないようにするための対策だからね」
「それでも……ありがたいです。お礼を言わせて下さい」
「あぁもう、アンタは本当にいい子だねぇ」
「そうだったんですか……!」
マッチャ、さりげなく頼もしい! なんて思ったり。
「マコト、そろそろ起きられるかい?」
言われて、私は気づいた。
いつまでも布団に入って寛いでいるわけにはいかないのだということを。
「は、はい! すぐ起きます!」
慌てつつ布団の中から飛び出す――が、次の瞬間転倒してしまった。
足下に何かがあったというわけではないのだけれど。
「あぁいや、べつに急ぎではないんだけどね……」
「大丈夫ですっ!」
何もないところで転ぶなんて最悪! かっこ悪すぎ! 目撃者がアカリだけだとしても……さすがにこれは情けない。慌てて立ち上がろうとしてその場で転倒なんて、なかったことにしたい!
もちろん、過ぎたことをなかったことになんてできないことは知っている。一度起きてしまったことは後から消すことなんてできないと理解している。
でも!
それでも!
……どうか、この恥ずかしい出来事を消し去ってほしい。
「マコト、無理しちゃ駄目だよ。立てないならそこで座って……」
「大丈夫です! 大丈夫ですから!」
「……あのねぇ、まずは落ち着いて」
せっかくの雰囲気が台無し。
ドタバタコントみたいになってしまった。
「布団を片付けるから、取り敢えず少しだけでも移動できるかい?」
「あっ……は、はい。そうですよね。こっちに行ったら良いですか」
「その辺りでいいよ」
「は、はい。分かりました」
直撃したわけではないけれど、軽く打った腰がまだじんじんと痛む。
そんな状態のまま、私はアカリの片付け作業を見ていた。
アカリは畳の床に敷かれていた布団を慣れた手つきで片付けていく。一人でなのに、まったく苦労していない。指先の動き、体の使い方、重心の位置。すべてが自然。自然な状態で保てているからこそ、スムーズに片付けられるのだろう。
その日の午前中、私は通りにある病院へと向かうことになった。搬送されて以来会えていないトウロウに会うために、である。そして、病院へはアカリが同行してくれることになった。それは、私が一人で道を歩くことにならないようにという、彼女なりの配慮があっての選択であった。
私自身も、アカリが同行してくれることになって良かった、と思っている。
もしアカリが同行を提案してくれなかったとしても、こちらから同行してほしいと頼んでいたかもしれない。
この世界とて悪魔のテーマパークではあるまい。アカリやマッチャ、トウロウのように、人の子である私に対しても穏やかに接してくれる者も多い。彼ら彼女らは、決して悪い存在ではない。ただ、中には人の子を悪用しようとする悪い輩もいる。それもまた事実である。それらに対して抱いた恐怖というのは、さすがに一晩では消えない。実際に刺された者を目にしたから、なおさら。
「アカリさん、一緒に来て下さって……ありがとうございました」
道を歩く時、他人からの視線が気になって仕方がない。が、今は隣にアカリがいるから、他者への恐怖を感じることはなかった。
「気にすることはないよ! 悪い輩に絡まれないようにするための対策だからね」
「それでも……ありがたいです。お礼を言わせて下さい」
「あぁもう、アンタは本当にいい子だねぇ」
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