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前編

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「貴様のような野蛮な娘にはうんざりだ」

 まともに振る舞っていたはずなのに。

「婚約は破棄する!」

 婚約者である彼ヴォリーウォーテテから睨まれたうえそんなことを宣言されてしまった。

 だが私は知っている。
 この婚約破棄は私のせいではないということを。

 というのも、最近彼には定期的に二人で会っている女性がいるのだ。

「ああ、ネールさんを選ぶということですね?」
「は!?」
「知っていますよ、私。貴方がネールさんと過剰に仲良くなっていること……実は証拠物も持っています」
「な、何を言って……」
「とぼけなくていいですよ? 彼女を選ぶのでしょう? どうぞそうしてください。私とて、他の女のことしか見ていない殿方と結婚するのは嫌ですから」


 ◆


 とはいえ、婚約破棄されたのはもやもやするので。

「あちょ! あちょ! あちょちょちょちょ!」

 取り敢えず家の前の大樹の幹に攻撃を繰り返してみる。
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