どうしてそんなに海を嫌うのですか? とても美しいではないですか。ですがまぁ、理解してもらえないならそれでも構いません。

四季

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前編

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 この町では海は恐ろしいものとされている。
 だが私は海が好きだ。
 親が珍しく海好きだったために私は幼い頃から海の近くでよく遊んでいてそのため気づけば海に慣れ親しんでいたのだ。

 だが、それが足を引っ張るような時もあるもので。

「お前! また海に出ていたそうだな!」
「はい」

 婚約者アズール、彼もまた海を嫌う人の一人だ。

 己が近づかないだけなら良いとは思う。個人の考えだから。でも彼は他人にまであれこれ言ってくる。そういうところは少々不愉快だ。他者の行動にまで口を挟まないでほしい。

「二度と海に近づくなと言っただろう!」
「無理ですと言ったはずです」
「はぁ!?」
「海に近づくことをやめることはできない、そう申し上げましたよね」
「ぐっ……ふ、ふざけるな! あんなの! 本気じゃないと思うに決まっているだろう!」

 きちんと聞いていなかったのかもしれない……。

「まぁいい! よって、婚約は破棄とする!!」
「ええっ」
「海は邪悪なところだ。そんなところに近づく女なんぞ、家に入れることはできない。そのようなことをすれば、我が家にまで海の呪いがかかってしまう」

 海の呪い、なんて、あるわけがない。
 だってあんなに綺麗なのに。
 地上以上に美しいあそこに呪いがあるとしたら、美し過ぎて心を奪う呪い、だろうか?
 でもそんなものはない。
 海の近くで育ったけれど呪いがかかったこともないし。

「ではな。消えてくれ、海の魔女」
「魔女っ!? 何ですかそれ!?」
「海が好きな女なんぞ魔女だろうが。真っ当な乙女ならそのようなことはしないんだよ」
「確かに珍しいかもしれませんけど……」
「うるさい! もう何も言うな! 消えてくれ!」

 アズールは両手でそれぞれ耳を塞ぎながら叫ぶ。

 きっと何も言っても無駄だろう。
 彼の耳には私の言葉なんて届かない。

「分かりました。では、さようなら」
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