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1話
しおりを挟む穏やかな風が吹く、快晴の春の日。
今日私は婚約者であった彼ミードレッドと結婚式を挙げる。
――幸せへと突き進むものと思っていた、のだが。
「アリーナ、お前との婚約は破棄とする」
式の直前、ミードレッドからそんなことを告げられた。
「え」
しかもそれだけでは終わらず。
「そして、妹さんであるエミリーと結婚する」
そんなことまで言われてしまって。
脳が追いつかない。
何がどうなっているのか理解できない。
そんな状態でいたら、扉が開いて。
白いドレスをまとった私のよく知る女性――我が妹エミリーが、勝ち誇ったような笑みをこちらへ向けながら入室してきた。
「ごめんね、お姉さま」
「エミリー!」
「こんなことになってしまって」
「ど、どういうことなの? 結婚って……貴女、本当に、ミードレッドさんと結婚するの?」
すると彼女はふふと笑みをこぼした。
「そうなの。ミードレッドさんに愛されてしまって。奪うみたいになってしまってごめんなさい、でも、わたしが意図して奪ったわけではないのよ。わたしが魅力的だったから彼を魅了してしまっただけで」
エミリーは慎ましそうに振る舞っているけれど、そんなのは嘘だ。
だって普通は姉の婚約者から迫られても相手にしないだろう。それを、真剣に相手にして、さらには結婚まですると言っているのだから。どう考えてもまともではない。たとえ自分から迫ったのではないとしても、それはもう奪ったも同然。盗ったようなものではないか。
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