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前編
しおりを挟む私エリシアは生まれ育った地域のリーダー的存在である家の息子である青年アイウアーと婚約していたのだが。
「お前との婚約、破棄とすることにした」
ある日突然そんなことを宣言されてしまった。
「それは一体どういう……?」
「俺はお前との関係を終わらせる。で、他の女性と結ばれるんだ」
「ほ、他の……? つまり乗り換えるということですか……?」
「ああ、まぁ、そんな感じだな。ははっ。結婚するならより良い女を相手にしたいからな」
アイウアーは軽いノリでそんなことを言っていた。
婚約の意味分かってる?
婚約の重み理解してる?
そんな風に問いたい気持ちではあったが。
「ちなみに、乗り換え先はお前の妹さんだよ」
続けて出てきた言葉に、発してみたかった問いはすべて消えてしまった。
「乗り換え先が妹……? 妹って……私の、ということですか?」
「そうさ」
「では、ミリー?」
「ああ。彼女はお前と違って雌としてとても魅力的だからな」
「そうですか……」
実妹ミリーは私のものを奪うことが大好きな人物だった。
それゆえアイウアーを盗んだとしてもそれほど驚きはしない。
「分かりました。では、さようなら」
でも、アイウアーはきっと、将来ミリーを選んだことを後悔するだろう。
なんせミリーは扱いづらい娘だから。
「ああ、じゃあな」
いつか後悔すればいい。
彼女の表に出していない顔を知ってから。
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