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後編
しおりを挟む順調に成長してきていた王子が台無しにされたのだから、近しい人なら誰だってそう思うだろう。
私だって、もし彼らの関係者であったとしたらきっと残念に思っただろう。
誰だって同じように思うはずだ。
……でももう私からすればどうでもいいこと。
だって無関係だから。
もう隣にはいないから。
私はもうアフォガーオには縛られない。
彼が不幸になったとしても気にしない。
◆
「ケーキ買ってきた!」
アフォガーオとの婚約が破棄となってから二年が過ぎた。
私は今、明るい夫と共に暮らしている。
「え、本当に?」
「嘘なわけないじゃん」
「そうよね。いえ、ごめんなさい、ちょっと急だったから驚いてしまって」
「いいよいいよ~、言っただけ」
「じゃあお皿出してくるわね」
「いいの!? 頼むよ!!」
「はーい」
夫は素朴な人だ。
でも純粋に私を愛してくれている。
王子と比べれば地位は低いかもしれない、でも、その心の美しさはかつての彼よりもずっと勝っている。
彼はとても良い人だ。
思いやりがあって。
真っ直ぐな優しさもあって。
だからこそ、私も、彼を深く愛している。
上手く言い表すのが難しいほどの感情がそこにはあるのだ。
「はい、持ってきたわ。出しましょうケーキ」
「うん!」
私はもう振り返らない。
暗い過去へは目をやらない。
今、手にしているもの。
今、抱えられているもの。
それらを大事にしていきたい。
「よし出して――って、あっ! これ! 前に美味しかったやつ!」
「うん、前好きって言ってたなーと思って」
「覚えてくれていたの!?」
「そうだよ」
「えええ!!」
「そ、そんなに、驚く……!?」
「ごめんなさいちょっといきなり大きな声を出してしまって……」
「いいよ気にしないで」
「ああ楽しみだわ。食べるのが。好きなものを買ってきてくれてありがとう、本当に嬉しいわ」
◆終わり◆
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