異世界恋愛短編集 ~婚約破棄されても幸せになることはできます~

四季

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あのね、私、美しいものが好き。~裏切り者など要らないわ~

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 あのね、私、美しいものが好き。

 だから彼との関係はおしまいにしたの。

 ……だって美しくなかったから。

 この世界には美しいものがたくさんある。自然だってそうだし、芸術だってそう。この星の生命の煌めきはいつだって癒しを与えてくれるし、誰かが魂を込めて生み出した作品は心に潤いを与えてくれる。そこには確かに真っ直ぐな想いがあって、だからこそ、目にした者も多くのものを得ることができる。

 だからかな、綺麗なものは好きなの。

 美しいものを見ていたい。
 美しいものに触れていたい。

 それは私の唯一の願い。

 ……でも、婚約していた彼は、私を裏切ったわ。

 恋も、愛も、絆も。彼はすべてを投げ捨てた。そうして暗闇へと突き進むことを選んだ。穢れに満ちた世界へと足を進めることを躊躇わなかった。

 ……だから要らなくなったの。

 私は美しいものだけと隣り合っていたい。

 裏切り者など要らないわ。

 彼はもうすぐ地獄へ堕ちるでしょう。そしてその時ようやく気づくの。己の罪に、己の穢れに、ね。その時になって後悔してももう遅い。泣いて謝っても、土下座しても、地獄を統べる者は許してなんてくれないの。


◆終わり◆
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