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前編

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 私の妹は気がきつい。

 彼女、リリエナには、年上の婚約者がいる。だが、彼は穏やかかつ優しい人のため、いつも私の妹から強い物言いをされている。それでも怒らない彼のことを私は密かに尊敬しているが、さすがに気の毒だなぁと思うこともある。

「貴方みたいな人、だいっきらい!!」

 リリエナは怒っていた。

 婚約者からの贈り物が気に食わなかったらしい。

「ええ……ちょっと待って、落ち着いてよ……」
「婚約は破棄よ!!」
「うそぉ……」
「いいから、とっとと消えて! あぁそうだ、余り物のお姉さまとでもくっつけば? お姉さまとならぼんやりしている者同士でぴったりよ!」

 なぜ私に話が!?
 巻き込まないでほしいのだが……。

「じゃあね!」

 そう吐き捨てて、リリエナは去っていた。

 私はリリエナの婚約者と二人になってしまう。
 非常に気まずい。

「あ……すみません、妹さんを怒らせてしまって……」

 彼はこちらへ視線を向けると謝ってきた。

 リリエナの姉である私が言うのは何だが、彼は悪くない。本来謝らなくてはならないのは、リリエナの家族であるこちらだ。非は理不尽な怒り方をしたリリエナ側にある。

「いえ、こちらこそ……妹があんな感じで、申し訳ないです」
「リリエナさんをいつも怒らせてしまって……しかも、お姉さんの前でまで……すみません」
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