婚約破棄されました……。が、挫けず自分なりに生きます!

四季

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2話「悪人だとか善人だとかは、こういう時には関係ない」

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「私はリラ・コバルティナ。ただの通行人……です」

 問いかけから十数秒ほどが経った後に、私はようやく名乗ることができた。

 名乗ったと言うには簡素過ぎたかもしれない。ほぼ名前だけしか言っていないのだから。ただ、見知らぬ人にいきなり色々なことを言われても困るだろう。まず必要なのは名前と身分といったところだろうと個人的には思う。

「……何か悲しいことがあったみたいだね」

 美青年は何の前触れもなくそんなことを口にした。

 心を読まれた!? という驚きが脳を激しく揺らす。

 それでも私は平静を保つように努める。万が一落ち込んでいる心を悪く利用されたら大変だからだ。目の前の彼が善人か悪人かまだ判断しきれていない以上、事情を明かすわけにはいかない。

「貴方はどうしてこんなところに?」
「僕は、ええと、確か……っ!」

 突然腹をくの字に折る美青年。

「大丈夫ですか!?」

 直前は何かを思い出そうとしているようだったが、今はそれどころではなさそうだ。

「た、大変! よく見たら腹部を怪我してるじゃないですか!」
「そうだ……思い出した……僕は……」
「待って下さい! すぐに手当てしますから!」

 美青年の正体は不明だが、負傷しているとなれば話は別。
 まずは手当てをしなくては。

 悪人だとか善人だとかは、こういう時には関係ない。そういうのは全部終わってからの話だ。


 幸い近くに水が湧いている小さい泉のような場所があったので、素早く手当てを終わらせることができた。

「お待たせしました。こちらで手当て完了です」
「……ありがとう」

 美青年の腹部の傷はそれほど深いものではなかった。が、出血はあったため、早めに手当てできて良かったと思う。

 家で習っていた負傷時の対応の知識が、まさかこんな形で役に立つとは。

「じゃあ改めて。僕はローテ」
「ローテさん、ですね」
「普通にローテでいいよ。その方がしっくりくるし」

 出会ったばかりの人を呼び捨てになんてできない。
 たとえ本人が許していたとしても。

「いきなり呼び捨てなんて変ですよ」
「それは……人の世界では、だよね。僕には関係ないよ」

 人の世界? 何その言い方。そんな言い方するなんて、貴方は人間ではないの? もしかして、自分が人間でないということを暗に言っている? さりげなく伝えようとしている、という可能性も、無いことはないか。でもそれなら普通に本当のことを言えば良いのでは?

「ローテさんは人でないのですか?」
「だからさん付けしないでってば。おかしいよ」

 そっちがおかしいよ!
 何もかもに違和感しかないよ!

「まぁ、人間でないっていうのは……間違ってないけど」

 やはりそういうことか。
 納得できた。
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