婚約破棄されました……。が、挫けず自分なりに生きます!

四季

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8話「空を駆け抜けてゆく時、心臓が跳ねる」

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 空を駆け抜けてゆく。

 風を切り速度を上げる時、慣れない心臓が跳ねる。
 浮かんだ汗の粒は宙に散って消えた。

 地上は遥か彼方。恐々見下ろしても建物や人ははっきりとは見えない。まるで点描画。小さな何かが集まって地図を描いているとしか思えなかった。

 やがて見えてくるのは海。

 青く澄んだ水面に、時折散るのは白色。恐らく飛沫だろうが、真上から見ると一種の絵画のようにも思えてくる。青く塗りつぶした紙に白を散りばめたら、きっとこんな感じになるだろう。

 ローテは加速。
 私を乗せたまま雲に突入し、突き抜ける。

「信じられない……これが世界……!」
「落ちないようにね」

 この状況では長文を話すことはできない。が、短文であれば意思疎通が可能だ。もっとも、慣れていない私は会話に意識を向け過ぎると落下しかねないのだが。

「気をつけるわ。でも凄い! とっても!」

 思わず叫んでしまった。

 でもいいの、きっと誰も聞いていないから。

 海を越えるとやがて島が見えてくる。その島の浜には、背の高い木が幾本も生えているようだ。頭の辺りについている櫛みたいな葉が風を受けて揺れている。

 大きな葉が揺れるということは多分かなりの風圧なのだろう。
 厳密な数値は出せないが、ざっくりと想像はできる。

「あの島に一旦降りる?」

 視界の中の島が徐々に大きくなってくる。
 みるみる接近しているのだろう。

「えっ。大丈夫なの」

 ドラゴンとただの娘が急にやって来たりなんかしたら驚かれないだろうか?

「うん、あそこの人たちは無害だから」
「知ってるの? ええと……じゃあ、そうしようかしら」

 そう返した瞬間、ガクンとなった。
 ローテが意図して急激に高度を下げ始めたのだ。

「降りるね」
「こ、怖い! 怖いっ!」
「我慢してね」
「えええっ……」

 あっという間に砂浜が迫る。さらさらしていそうな砂の地表が見えても怖いことに変わりはない。段々下がっていくならそれほど怖くもないだろうが、こうも一気に高度が下がると違和感を感じずにはいられない。

 もちろん、着地しようと高度を下げていってくれていることは理解しているけれど。

 やがてローテは砂浜に着地。恐怖の急降下が終わりを迎えた。やや乱雑な着地だったからか、舞い散る砂埃の量が尋常でない。目を細めておかないと、小さな粒子で眼球を痛めそうだ。

「もう降りていいよ」
「あぁ……怖かったぁ……」
「そんなにかな」
「えぇ。だって初めてだもの。あ、でも、飛んでいる時はとても気持ちよかったわ。ありがとう」

 訪れた休息の時。砂浜に座り、海をぼんやりと眺める。いつの間にやら人間似の姿へ変化していたローテは、特に何も言わず隣に腰を下ろしてくる。広い世界に波の音だけが響く。ほんのり塩気を感じさせるような匂いが漂っている。
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