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9話「この浜の個性」
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「そういえばこの浜、面白いものが色々あるよ」
「面白いもの?」
「そう。たとえばーー」
ローテはそこで言葉を一旦止め、砂浜を手で探り始める。
何だろう、と思いつつ見つめていると、やがて彼が「あ、あった」と発した。
「こんなのとかね」
彼がつまんでいたのは、透明な欠片。
向こう側まで見通してしまえるような透明度。欠片の中には混じっているものがまったくない。粒子一つさえ入っていないその欠片は、透き通っていて、とても美しい。
「綺麗ね。これは何?」
「この浜によく流れ着くものだよ。ガラスだとか何とか聞いたけど、本当のところは分からない」
「へぇ……! 何だかとっても素敵」
「君にあげるよ」
ローテは透明な欠片をつまんだ手をこちらへ差し出してくる。それに対し、私は、恐る恐る右手の手のひらを出した。そこへ、彼は欠片をそっと置いてくれる。欠片は予想外にひんやりしていた。また、表面は意外に滑らかだ。
「貰っていいの……?」
「うん。あげる」
「えっと……その、ありがとう。嬉しいわ」
綺麗なものは嫌いじゃない。
ただ、島民でもない私が浜に落ちていたものを貰って良いものかどうか。
「あと美味しいものもあるよ」
「食べ物?」
「うん。木の実みたいな感じかな、大きめの」
ローテはそう説明してから、ドラゴンの姿になり、高度を上げていく。目標としているのは背の高い木のようだ。あの木の上に実がなっているのかもしれない。ただ、ここからでははっきりとは見えない。
数秒後、ドラゴンの姿のローテが浜に降り立った。
その手には茶色く丸い物体。
表面ががさがさしていそうな見た目だが、これが木の実なのだろうか。
「食べられるの?」
「うん。割ればね」
そう言って、ローテは茶色い部分を叩き割る。
すると、宝石のような赤紫色の中身が露わになった。色鮮やかなそこが果肉の部分だろうか、艶がある。色はまったく違っているが、みかんの中身のような雰囲気だ。
「ここを千切って食べるんだよ。はい」
「ありがとう……あ! 美味しい!」
ほんの少し貰った果肉を口に含んだ瞬間、脳に強い衝撃を受けた。
もちろん、悪い意味での衝撃ではない。良い意味で、頭をガツンと殴られたみたいだったのだ。つまり、それほどに果肉が美味であったということである。
舌触りはつるりとしているのに、噛むと汁が大量に溢れてくる。その汁は酸味が強めだが、それ以外の部分にはほんのりと甘みがあって、しかももちもち感もある。それらの要素が複雑に絡み合うことで、非常に美味しいと感じることができるのだ。
こんな時間が永遠に続けば良いのに。
そう思わずにはいられない。
きっと永遠に続く時間なんてありはしないのだろう。時は刻むもの、いずれこの幸福な時間も終わりを迎えるに違いない。でも、それでも、できる限り幸福の海を泳いでいたい。満たされた心を抱いたまま、ずっとこうしてのんびりしていたいのだ。
「面白いもの?」
「そう。たとえばーー」
ローテはそこで言葉を一旦止め、砂浜を手で探り始める。
何だろう、と思いつつ見つめていると、やがて彼が「あ、あった」と発した。
「こんなのとかね」
彼がつまんでいたのは、透明な欠片。
向こう側まで見通してしまえるような透明度。欠片の中には混じっているものがまったくない。粒子一つさえ入っていないその欠片は、透き通っていて、とても美しい。
「綺麗ね。これは何?」
「この浜によく流れ着くものだよ。ガラスだとか何とか聞いたけど、本当のところは分からない」
「へぇ……! 何だかとっても素敵」
「君にあげるよ」
ローテは透明な欠片をつまんだ手をこちらへ差し出してくる。それに対し、私は、恐る恐る右手の手のひらを出した。そこへ、彼は欠片をそっと置いてくれる。欠片は予想外にひんやりしていた。また、表面は意外に滑らかだ。
「貰っていいの……?」
「うん。あげる」
「えっと……その、ありがとう。嬉しいわ」
綺麗なものは嫌いじゃない。
ただ、島民でもない私が浜に落ちていたものを貰って良いものかどうか。
「あと美味しいものもあるよ」
「食べ物?」
「うん。木の実みたいな感じかな、大きめの」
ローテはそう説明してから、ドラゴンの姿になり、高度を上げていく。目標としているのは背の高い木のようだ。あの木の上に実がなっているのかもしれない。ただ、ここからでははっきりとは見えない。
数秒後、ドラゴンの姿のローテが浜に降り立った。
その手には茶色く丸い物体。
表面ががさがさしていそうな見た目だが、これが木の実なのだろうか。
「食べられるの?」
「うん。割ればね」
そう言って、ローテは茶色い部分を叩き割る。
すると、宝石のような赤紫色の中身が露わになった。色鮮やかなそこが果肉の部分だろうか、艶がある。色はまったく違っているが、みかんの中身のような雰囲気だ。
「ここを千切って食べるんだよ。はい」
「ありがとう……あ! 美味しい!」
ほんの少し貰った果肉を口に含んだ瞬間、脳に強い衝撃を受けた。
もちろん、悪い意味での衝撃ではない。良い意味で、頭をガツンと殴られたみたいだったのだ。つまり、それほどに果肉が美味であったということである。
舌触りはつるりとしているのに、噛むと汁が大量に溢れてくる。その汁は酸味が強めだが、それ以外の部分にはほんのりと甘みがあって、しかももちもち感もある。それらの要素が複雑に絡み合うことで、非常に美味しいと感じることができるのだ。
こんな時間が永遠に続けば良いのに。
そう思わずにはいられない。
きっと永遠に続く時間なんてありはしないのだろう。時は刻むもの、いずれこの幸福な時間も終わりを迎えるに違いない。でも、それでも、できる限り幸福の海を泳いでいたい。満たされた心を抱いたまま、ずっとこうしてのんびりしていたいのだ。
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