婚約破棄されました……。が、挫けず自分なりに生きます!

四季

文字の大きさ
10 / 11

10話「そんな良い未来を信じながら」

しおりを挟む
 それからも私はローテと共に浜辺で過ごした。

 美しい風景、楽しい時間、何もかもが輝いているように感じた。
 だが、永遠に終わらないでほしい時間にも、いつかは終わりが訪れる。残酷なことだが、それはこの世において変わらぬ事実。そんな理は人間一人が簡単に変えられるものではない。

「そろそろ帰ろうか。送るよ」
「……残念だわ」
「子どもみたいなことを言わないでよ。まったく」
「そうね。ごめんなさい、帰るわ」

 できるならいつまでもここで楽しく暮らしたい。

 でもそれは叶わぬ願いだと知っている。

 私も幼児ではない。そんなことすら分からぬほど未熟な存在ではないつもりだ。

「さ、乗って」

 いつの間にやらドラゴンの姿になっていたローテが、背に乗るように促してくる。私は指示に従い彼の背に乗った。もしここで指示に従わなかったら、と考えもしたが、怖いことになりそうなので従っておくことに決めたのである。

「何度もになって悪いけど、落ちないでね」
「高いものね。気をつけるわ」
「しっかり掴まっていてよ。落ちないように、頼むよ」
「ええ、気をつける」

 ローテの身体はふわりと宙に浮き上がる。一度上へ向かい出すともう止まらない。高度は上がってゆくばかりだ。そして、彼に乗っている私の身体も、みるみるうちに高い場所へ向かってゆく。

 きっとまた楽しく過ごせる。
 いつかはこうしてまた遊べる日が来る。

 そんな良い未来を信じながら、私はローテの背に乗って空を駆けた。


 やがて、最初に出会った場所へとたどり着く。

 ここを出発する時には雨が降っていた。それもそこそこな激しさの雨。しかし、今はすっかり止んで、静かな夜を迎えている。雨の名残は、土が微かに湿っているところくらいにしかない。

「ここで大丈夫かな?」
「えぇ、助かったわ」

 ローテの背中から降り、湿った地面に立つ。
 私を降ろすや否や彼は人間の方の姿に変身した。
 恐らく、驚かれないようにするためだろう。人の世にドラゴンのままの姿で近寄っていては、危険な目に遭わされかねない。だからこそ彼は、人の世に近いところでは、こうして人のような姿になるのだろう。

「ねぇローテ、少し聞いてもいい?」

 私はふと思い立ったことを口にした。

 こんなことを始めた目的は自分でもいまいちよく分からない。なぜ今でなくてはならなかったのか、なんて、聞かれても答えられそうにない。

 理由や目的なんてない、口が自然に動いただけのことだ。

「うん、いいよ」
「ローテが人の姿になるのはどうして? ドラゴンのままだったら駄目なの?」

 その問いに、ローテは目をぱちぱちさせた。
 しかし答えてはくれる。

「この姿の方が便利なこともあるからね」
「便利なこと……」
「説明するほどのことではないけど。でも、ドラゴンのままよりは、人みたいになれた方が暮らしやすいよ。いろんな意味で、ね」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

魔力ゼロと捨てられた私を、王子がなぜか離してくれません ――無自覚聖女の王宮生活――

ムラサメ
恋愛
伯爵家で使用人同然に扱われてきた少女、エリナ。 魔力も才能もないとされ、義妹アリシアの影で静かに生きていた。 ある日、王国第一王子カイルの視察で運命が動き出す。 誰も気づかなかった“違和感”に、彼だけが目を留めて――。

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

ブスすぎて嫁の貰い手がないから閨勤侍女になれと言われたので縁を切ります、完全に!完全縁切りの先にあったのは孤独ではなくて…

ハートリオ
恋愛
ルフスは結婚が決まった従姉の閨勤侍女になるよう父親に命令されたのをきっかけに父に無視され冷遇されて来た日々を終わらせようとブラコン父と完全に縁を切る決意する。 一方、従姉の結婚相手はアルゲンテウス辺境伯とのことだが、実は手違いがあって辺境伯が結婚したいのはルフス。 そんなこんなの異世界ファンタジーラブです。 読んでいただけると嬉しいです。

【完結】悪役令嬢ですが、元官僚スキルで断罪も陰謀も処理します。

かおり
ファンタジー
異世界で悪役令嬢に転生した元官僚。婚約破棄? 断罪? 全部ルールと書類で処理します。 謝罪してないのに謝ったことになる“限定謝罪”で、婚約者も貴族も黙らせる――バリキャリ令嬢の逆転劇! ※読んでいただき、ありがとうございます。ささやかな物語ですが、どこか少しでも楽しんでいただけたら幸いです。

「君は悪役令嬢だ」と離婚されたけど、追放先で伝説の力をゲット!最強の女王になって国を建てたら、後悔した元夫が求婚してきました

黒崎隼人
ファンタジー
「君は悪役令嬢だ」――冷酷な皇太子だった夫から一方的に離婚を告げられ、すべての地位と財産を奪われたアリシア。悪役の汚名を着せられ、魔物がはびこる辺境の地へ追放された彼女が見つけたのは、古代文明の遺跡と自らが「失われた王家の末裔」であるという衝撃の真実だった。 古代魔法の力に覚醒し、心優しき領民たちと共に荒れ地を切り拓くアリシア。 一方、彼女を陥れた偽りの聖女の陰謀に気づき始めた元夫は、後悔と焦燥に駆られていく。 追放された令嬢が運命に抗い、最強の女王へと成り上がる。 愛と裏切り、そして再生の痛快逆転ファンタジー、ここに開幕!

「お前みたいな卑しい闇属性の魔女など側室でもごめんだ」と言われましたが、私も殿下に嫁ぐ気はありません!

野生のイエネコ
恋愛
闇の精霊の加護を受けている私は、闇属性を差別する国で迫害されていた。いつか私を受け入れてくれる人を探そうと夢に見ていたデビュタントの舞踏会で、闇属性を差別する王太子に罵倒されて心が折れてしまう。  私が国を出奔すると、闇精霊の森という場所に住まう、不思議な男性と出会った。なぜかその男性が私の事情を聞くと、国に与えられた闇精霊の加護が消滅して、国は大混乱に。  そんな中、闇精霊の森での生活は穏やかに進んでいく。

「不吉な黒」と捨てられた令嬢、漆黒の竜を「痛いの飛んでいけー!」で完治させてしまう

ムラサメ
恋愛
​漆黒の髪と瞳。ただそれだけの理由で「不吉なゴミ」と虐げられてきた公爵令嬢ミア。 死の森に捨てられた彼女が出会ったのは、呪いに侵され、最期を待つ最強の黒竜と、その相棒である隣国の竜騎士ゼノだった。 しかし、ミアが無邪気に放った「おまじない」は、伝説の浄化魔法となって世界を塗り替える。 向こう見ずな天才騎士に拾われたミアは、隣国で「女神」として崇められ、徹底的に甘やかされることに。 一方、浄化の源を失った王国は、みるみるうちに泥沼へと沈んでいき……?

辺境に追放されたガリガリ令嬢ですが、助けた男が第三王子だったので人生逆転しました。~実家は危機ですが、助ける義理もありません~

香木陽灯
恋愛
 「そんなに気に食わないなら、お前がこの家を出ていけ!」  実の父と義妹に虐げられ、着の身着のままで辺境のボロ家に追放された伯爵令嬢カタリーナ。食べるものもなく、泥水のようなスープですすり、ガリガリに痩せ細った彼女が庭で拾ったのは、金色の瞳を持つ美しい男・ギルだった。  「……見知らぬ人間を招き入れるなんて、馬鹿なのか?」  「一人で食べるのは味気ないわ。手当てのお礼に一緒に食べてくれると嬉しいんだけど」  二人の奇妙な共同生活が始まる。ギルが獲ってくる肉を食べ、共に笑い、カタリーナは本来の瑞々しい美しさを取り戻していく。しかしカタリーナは知らなかった。彼が王位継承争いから身を隠していた最強の第三王子であることを――。 ※ふんわり設定です。 ※他サイトにも掲載中です。

処理中です...