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9話「こんなに幸せな時間って」
しおりを挟む遅刻したにも関わらず、ルクセーは私を一切責めなかった。
それどころかそこから普通にお出掛けを始めてくれて。
何度も謝ったけれど、そのたびに「気にしなくていい」と伝えてくれた。
それがどんなに心強かったか。
喫茶店の後は、商店街へ行っていろんなものを見ながらたまに商品を買ったり喋ったりして楽しんだ。で、その後、彼が予約してくれていた小船に乗ることになった。予約時間は少しだけ変更しなくてはならないことになったけれど、運良く空きがあったために船乗れたのだった。
運と彼の優しさに恵まれていたおかげで、遅刻してしまってもなお、愛おしい時間を楽しむことができたのだ。
「夕陽! 綺麗!」
小船では夕陽に染まる海と空を眺めることができた。
「こんな綺麗な海、実際に見るのは初めてです!」
美しいものは好きだ。
物体も、風景も、何もかも。
だって美しいものは心を癒やしてくれるではないか。
「実際じゃないところでは見たことあったんだ?」
「はい、家の絵画とかですね」
こんな素晴らしい光景を、一番愛おしい人と見られる。
これほどの幸福は滅多にない。
よほど恵まれていなければ、こんな状況を楽しむことなどできないだろう。
「ああそういうことね~」
「す、すみません、ちょっとテンションおかしいですよね」
どんな時間もいつかは終わるもの。
だからこそ一瞬一瞬が愛おしくなるものなのだろう。
でも、できるなら、一生こうしていられれば良いのにと思ってしまう。
そんなことはできない。
この世に永遠などない。
――そう分かってはいるけれど。
「いやいや、そんなつもりじゃ。僕はアメイリアさんのこともっと色々知りたいですよ~?」
「ありがとうございます、嬉しいです」
「海は好きですか?」
「そうですね……はい、好きです。とても綺麗で癒やされます」
潮の匂いも、風の心地よさも、ルクセーとこうしてここへ来たことで初めて知った。
この時を忘れたくない。
幸福な時を。
いつまでも。
「そうだ、今度は家に行っても?」
自分だけの世界で無限の思考にはまっていたところ、急にルクセーからそんなことを言われた。
「え……」
視線を彼の顔へと持っていく。
目と目が合った。
恥ずかしさはある。
でも心地よさもないわけではない。
「あ、まずいですかね?」
「い、いえ、でも……どうしてですか」
「ご両親にも早めに一度くらいお話しておきたいな、と思いまして」
「ええっ」
「駄目でしょうか」
「い、いえ! そんなことはありません!」
無理しなくても、また次の約束ができてゆく。
それってとても嬉しいこと。
「あ、でも、豪華なもてなしはできませんよ……?」
「いやいや気遣いはいいんですよ~、ちょっとお話とかをしてみたいだけですので~」
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