婚約者が妹の嘘を信じて婚約破棄してきました。しかも私は北の国の王に差し出されることとなってしまい――けれどもそれは幸せへの道でした。

四季

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「貴様、我が妹ネールを虐めていたそうじゃないか!」

 婚約者で王子でもある彼アシュットからそんな風に言われたのは、ある平凡な夏の日だった。

 日射しが肌を焼くほどに強まり出した時期のことだ。

「え……」
「事実なのだろう? ネールから聞いたんだ、嘘なわけがない」

 アシュットの妹であるネール王女にはこれまで何度も睨まれたことがある。恐らく私は嫌われているのだろう。だからネールは作り話を兄に吹き込んだのだろう。そういう話であるならば理解はできる。

 ネールにとって私は邪魔者なのだ。
 きっと。
 嘘をついてでも消えてほしい存在なのだ。

「心当たりがありません」

 一応真実を述べておくが。

「はぁ?」
「私、ネールさんを虐めたことなんてありません」
「嘘つけ!」
「嘘ではありません」
「はぁ? じゃあ何だ、ネールが嘘つきだとでも言うのか!? 我が妹が嘘つき女だと言いたいのか!?」

 その可能性はあります――発した瞬間、アシュットに首を強く掴まれる。

「っ!」

 反射的にこぼしてしまう息に近い音。

「貴様、いい加減にしろよ……」
「私は嘘は一切ついていません。どうしてそこまで私を疑うのですか、どうか信じてください」
「妹と貴様どちらを信じるか? 妹に決まっているだろうが!」
「そう、ですか……」

 やがて、彼は首から手を離した。

 だがその後すぐに。
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