ある日突然嫁にされました。

四季

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3.どこまでも苦いお茶

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「ちょ、あの……これ、苦くないですか」

 出されたお茶の驚くべき苦さに、私は思わず本当のことを言ってしまった。本来、入れてくれた本人にこんなことを言うべきではなかったのだろうが、さすがに黙っていられなかったのだ。
 もしかしたら、間違えて変なものを混入させてしまったという可能性だってゼロではない。そして、私が苦いと訴えたことによって、それが明らかになるかもしれない。だから、少し失礼ではあるけれど、本当のことを言っておいたのだ。

 しかし、返ってきたのは想定外の言葉。

「だろうな! そういうものだ!」

 両手をそれぞれ腰に当て、堂々と偉そうな立ち方をしながら、ジルカスはきっぱりそう言った。
 普通、苦い飲み物を客に出すだろうか。それも、何の前置きもなしに、だ。あり得ない。論外としか言い様がない。

「そういうものだ、じゃありません! 飲めませんよ、こんな苦いの!」

 この時ばかりはさすがに黙っていられなかった。
 強めの調子で言い返してしまう。

「飲め! 貴様はそれを飲まねばならぬ!」
「……指示しないで下さい。私は貴方の奴隷ではありません」
「奴隷ではない、だと? ははは! 何を言っているんだ、そんなことは知っている!」

 彼とまともな会話をするのは不可能かもしれない。
 そろそろ、そんな風に思えてきた。

「貴様は我が妻! 奴隷とは思っていない!」

 ……もういいか、何でも。

 ジルカスは容姿自体はそんなに悪くない。どことなくミステリアスな部分も、雰囲気が生まれることに繋がっていて、それゆえ、印象を悪くしているということはない。

 だが、口を開けば、とんでもない奇天烈さを発揮する。
 まともな会話など諦めてしまいそうになるくらい、彼の言動は奇妙さに満ちている。

 もし彼の説明書なるものがこの世のどこかにあるならば、どうか、私にそれを授けてほしい。そうでなければ、彼とまっとうなコミュニケーションを取ることは不可能に近い。否、『不可能』だ。

「取り敢えず、そのお茶を飲み干してくれ」
「嫌です。苦いのは嫌いですから」
「いいから飲み干してくれ! そうでなければ、この世界には存在できない!」

 また何やらおかしなことを言い出した。

 ——戸惑っていた、その時。

 ジルカスが自らの手でコップを掴み、その中身を、私の口腔内へと一気に注ぎ込んできた。

「っ……!?」

 舌が痛むほどの苦味と、突如流れ込んできた大量の液体のせいで、私はほとんど何も発せない。息を漏らすような声を放つのが精一杯。
 だが、一度口に入ってしまったお茶を吐き出すのも勿体ない。
 そのため、私は数秒かけて、口腔内の液体を一気にごくんと飲み込んだ。

「にっ……苦すぎ……」
「よし! 完了だな!」
「……え。何の……お話ですか」

 嫌な予感がして尋ねると、彼は笑顔で答える。

「貴様を我が妻とするための試練、終了!」

 脳を拳で直接殴られたような衝撃が駆け巡る。

「え……」
「これで貴様は正式に我が妻となった! よろしくな! ははは!!」

 告げられた言葉に、私はただ呆然とすることしかできなかった。
 お茶を飲み込んだだけで正式に妻にされるなんて。
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