ある日突然嫁にされました。

四季

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10.草集めと交換所行き

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 ジルカスによる、この世界の野草の解説は、アベコベソウだけでは終わらなかった。

「これは『アカクサソウ』という野草の一種だ!」
「垢臭そう、が由来ですか?」
「何を言い出す!? そんなこと、あるわけないだろう!」
「違ったのですね。すみません」

 うぐいす色の茎は、私の片手の握力だけでも折れそうなほどに細い。細くても硬い茎というのもあるものだが、アカクサソウに限ってはそれはない。実際、親指と人差し指でつまんでみたら、私でも折れそうな感触だった。

「まぁいいが……少し驚いたぞ」
「失礼しました」

 華奢な茎から続く葉は、アベコベソウと同じような網状の葉脈を持つ葉だ。しかし、色が他の草とは全然似通っていない。というのも、赤紫色をしているのだ。そして、葉の表面には小さな毛のようなものが多く生えていた。それゆえ、葉を指で触ると、ふさふさしているのが分かる。

「ちなみに、レア度は低めだ!」
「アベコベソウくらいの珍しさですか」
「いや! それよりかは珍しいかもしれないな!」

 アベコベソウの方が多いことは確かなようだ。
 ……といっても、どちらも珍しくはないのだろうが。

「いうなればE程度のレア度だ!」
「Fのアベコベソウよりかは珍しい、ということですね」
「イエス! その通り!」

 ジルカスはいちいちテンションが高い。それは一体なぜなのだろう。単にそういう性格だからというだけのことなのだろうか。

 いきなり「どうしてテンションが高いの?」なんて尋ねることはできない。それゆえ、今すぐ答えを知ることはできない。それは仕方のないことだけれど。でも、いつかは知ってみたいことの一つだったりする。

 その後、ジルカスが付け加えた話によれば、アカクサソウは葉を舐めると舌に痺れを感じることがあるらしい。派手な色みであることもあいまって、昔は毒草扱いを受けていたそうだ。しかし、ある時、痺れが痛みを感じなくさせるということが判明した。それ以来、毒草ではなく役に立つ野草として使われるようになったそうだ。

「では、今日はその二つを集めることにしよう!」
「アベコベソウとアカクサソウですね」
「見た目は覚えたな!?」
「はい。大体分かった気がします。野草集め、頑張ります」

 こうして、私たち二人は野草を集めることを始めた。


 ◆


 採取開始から数十分。
 集めた草でカゴがいっぱいになった。

「ははは! そちらもだいぶ集まったようだな!」
「はい。一応集めてみました」

 答えてから、ジルカスの大きなカゴを見る。そして驚いた。大きなカゴなのに、既に埋まっていたからだ。私は小さめのカゴをやっといっぱいにできたところなのに。

 野草を一定量集め終えた私とジルカスは、交換所へ向かうことにした。
 何か良い物があれば嬉しいのだが。


 ◆


 ジルカスに案内されるままに歩き、やがてたどり着いた交換所。
 そこは、賑わいに満ちたところだった。
 品物をいくつかのカゴに詰めて、皆、誰かと物を交換できる時を待っている。

「賑わっていますね」
「ははは! それは当然のことだな!」

 シートを敷き、カゴを置き、座っている者。カゴを背負って歩き回っている者。色々な者がいる。また、容姿も、人間に近い者から獣人のような者まで色々。人も動物も関係なく動き回っているその様は、まるで、絵本の中の世界のようだ。

 私は不思議な世界に見惚れながら、ジルカスの隣を歩く。

 そんな私に、誰かが声をかけてきた。

「ねぇねぇ! そこのお姉さん!」

 いきなり声をかけられるとは考えていなかったため、一瞬ドキリとした。
 だが、声をかけてきた相手が可愛らしい少女であることが分かり、安堵する。

「果物あるよ! 交換しない?」

 十二、三歳くらいの女の子。大きく丸い黒の瞳が愛らしい。

「ははは! 果物か!」
「果物、お兄さんも交換しない?」

 茜色の二本の三つ編みが特徴的な彼女は、背負っていたカゴを差し出してくる。

 カゴには色々な種類の果実が詰め込まれていた。
 単なる球体状のものもあれば、星型のものまである。表面は、滑らかなものもあればざらついているものもあるようだ。そして色も、赤、朱、橙、黄……と、様々だ。
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